スポーツが“熱い街”長崎市でのBリーグオールスター開催…1年に一度の祭典が地域にもたらした影響
2026年1月、長崎市内はシティドレッシングで彩られ、グッズやユニフォームを身につけたファンで溢れ返った。1年に一度の祭典「りそなグループ B.LEAGUE ALL-STAR GAME WEEKEND 2026 IN NAGASAKI」はコート内外において大盛況で終了。「地域創生」、「革新性」という2つの言葉を掲げ、地域からバスケで日本を元気に、笑顔にしていくというオールスターのコンセプトを体現した。長崎市役所職員の立場として携わった林田聖大氏(官民連携推進室)、濱裕介氏(スポーツ振興課)へインタビューを実施。大会を振り返り、地域にもたらした影響や今後についても語った。
インタビュー・文=酒井伸
構成=バスケットボールキング
林田 オールスターというビッグイベントに対し、その賑わいを長崎全体としてどのように享受できるのかを意識しました。まずは実行委員会を立ち上げ、シティドレッシングとオールスター関連イベントの大きく2つに分け、どのようなことをできるのか検討しました。市内の企業をはじめ、商工会議所、公共交通機関、スポーツ団体などと一体になり、オールスターの効果を街中に広げられるように取り組みました。
濱 私はBリーグさんに開催いただいたクリニックなどのイベントに携わり、主にバスケットボール協会やスポーツ関係者の皆さんと調整をおこなう役割でした。私から事前に説明して、よりスムーズに進めるような体制作りを担いました。
——開催に至るまで様々な苦労があったと思います。
林田 前例がなく、ゼロベースでのスタートでしたので、なかなか難しかったのが本音です。例えば、「浜の町アーケードでこういうことをやろう」と決めたあとは、業者に発注をかけていったのですが、仕様書をどうしようかといった事務的な部分にも苦労しました。なんとか実現に漕ぎ着いたのかなと。加えて、多くの関係者の方が携わるイベントでしたので、人の数だけ調整が必要でした。
濱 官民連携推進室と異なり、Bリーグさんの取り組みに対して動く仕事だったので、分刻みのスケジュールが調整されていたり、会場内の動線が決まっていたりと、市主催のイベントではあまり経験することができないような規模感でした。実際、「B.LEAGUE ALL-STAR PEACE GAME 2026」に参加する長崎市と広島県のバスケットボール協会との調整を担当したのですが、限られた時間の中でのBリーグさんと協会との細かい調整は大変でした。
林田 直近に開催された沖縄、船橋のオールスターは現地へ視察し、どのようなことに取り組まれたのか把握するため、それぞれ地元の市役所へお尋ねしました。我々市役所の職員がまず一番気になるのは予算の確保。まずは担当の方に連絡し、予算の内訳をうかがいました。ただ、令和7年度の予算を確保するためには、令和6年の10月にはそれを要求しなければいけないスケジュールでした。船橋のオールスターが開催されるタイミングでは予算を固めなければいけない状況でしたので、沖縄のオールスターから情報を収集していきました。これまでの事例を参考にしつつ、我々の規模を考慮し、難しいところは難しいと判断して決めていきました。
濱 長崎開催での強みといえば、やはり平和という部分が大きかったと思います。2025年に被爆80周年を迎え、先ほども話したピースゲームはBリーグさんともコミュニケーションを取り合いながら開催させていただいたイベントです。「平和だからスポーツができる」をコンセプトにしたもので、中学生はとても緊張していましたが、試合が始まったらスポーツマンシップに則ったバチバチの戦いでした。会場も徐々に盛り上がり、最後は拍手が鳴り止みませんでした。スポーツを通じて、平和の発信をできたのはすごく良かったと思っています。
林田 中学生にとってはすごく貴重な経験になったと思っています。今回のためのオリジナルユニフォームを作っていただき、ハピネスアリーナという素晴らしい環境で、演出もオールスター本戦と同じようなものでしたからね。
——B.Hope ACTIONなど選手と子どもがともにする活動は多くありました。
林田 スター選手が各会場にいる姿を見て、長崎でオールスターが開催されない限りこんなことは起こり得ないのかなと。本当に大きなイベントを開催していただいたとひしひしと実感しました。
濱 私は自分が関わった小学生のクリニックを見に行きました。コーチがすごく面白い方で、選手と子どもたちが触れ合っている姿を見ました。先生に話を聞くと、「いつもよりすごく楽しそうにしている」と。子どもたちは巨人のように大きい選手たちとバスケットボール以外でも触れ合うことができた。そういった機会は滅多にないので、本当にいい経験になったと思います。実際に保護者の方もすごく喜んでいましたからね。バスケットボールをプレーしたいと思ったり、保護者の方がプレーさせてあげたいと思ったりと、この活動がスポーツ振興につながっていけばうれしいです。
濱 正直、準備はすごく大変でした。ただ、“オールスターロス”で、今はほかの仕事に手が回らないような状況です(笑)。市職員の立場でこのような大きなイベントに携われる機会はほとんどありませんし、その一員になれたのはすごく良い経験をさせていただいたと感じています。SNSでは県外から来た方が「長崎はすごく良かった」と、観光地を巡る写真をアップしているのを拝見しました。そういった方がリピーターになり、オールスターゲームがなくても長崎を再び訪れ、長崎の盛り上がりにつながってほしいです。
——お2人とも長崎は幼少期から馴染みのある場所です。オールスターを通じて盛り上がる街の様子を見て、どのように感じましたか?
林田 県外の方を含めいろいろな方とお話しさせていただいて、「長崎はいい場所だよね」とか「美味しい食べ物が多いよね」と言っていただくことが多かったです。育ってきた身としては当然の環境だと思っていたのですが、そういった声をいただいて、改めて素晴らしい街で暮らしてきたのだと実感しました。地元への愛がより一層高まりました。
濱 2024年10月の長崎スタジアムシティさん開業以降、スポーツでの盛り上がりをひしひしと感じていましたが、オールスター期間中はより多くの人が行き交い、街中の活気が溢れていたと感じました。林田が話したように、長崎に住んでいる身として「長崎の魅力は何だろう?」と考えることがありました。ただ、オールスターを通じてBリーグさんをはじめ、多くの関係者の方に来ていただき、長崎を知っていただくことで、逆に魅力を教えてもらったのかなと。当たり前ではなく、長崎の素晴らしい部分を改めて認識させてもらいました。
——商店街を含め市民の方の反応はいかがでしょうか?
林田 私もLINEスタンプラリーに参加させていただき、これまで足を運んだことがない場所にも行ってみました。「スタンプを取りに来るファンの方はいらっしゃいますか?」と聞くと、「反響は大きいですよ」と教えてくれました。担当者の方にLINEスタンプラリーの実績を見させていただくと、ファンの方が多くの場所を回っていたのを確認できました。LINEスタンプラリーは取り組んで良かったことの一つですね。
濱 路地裏にあって、観光客の方はなかなか入りづらいようなお店でも賑わっていたと聞き、常連のお客さんが入れないほどだったようです。そういった意味でもやはり効果は絶大だったと思っています。
濱 LINEスタンプラリーは参加者、参加店舗含め過去最高の数字になったと聞き、すごくうれしかったです。自分は前回のオールスターを視察するために船橋へ行ったのですが、多くの方がLINEスタンプラリーで街を散策していた印象を受けました。実際に回った地図を見せていただき、すごいなと思っていたなかで、それを超えることができた。やはり反響が大きかったと感じました。
——アリーナや出島メッセの来場者は想定どおりでしたか?
林田 チケットが完売したアリーナは(定員もあるので)ある程度の来場者数を見込めていましたが、出島メッセや街中のイベントは来場者数を全く読めなかったので、終わって数字を確認したらこんなにも多かったのかと。都心からのアクセスがいい船橋に対し、長崎はどうなるのか不安な気持ちもありましたが、多くの方に来ていただいてビックリしました。
濱 自分がメインとして携わったピースゲームです。中学生の試合ということで、どこまで会場が盛り上がってくれるのか不安もありました。普段はプレーできない場所で本戦さながらの演出をつけていただき、特別なユニフォームも用意させていただきました。中学生が緊張でガチガチになっている時はドキドキしながら見ていましたけど、試合が始まってしまえば自分たちのプレーを最大限に発揮していました。会場もすごく盛り上がり、平和の発信につながったのはとても意義のあることでした。日頃の生活の中で、平和について考える機会は限られていると思いますけど、国内外の多くの人が見ているところで発信でき、これが平和について考えるきっかけになればうれしいです。
林田 ピースゲームに関してはスポーツ振興課とともに「こういったことをできませんか?」とBリーグさんにお願いしたのがきっかけです。ただ、プログラム内で開催するのは想定していなくて、別の会場で長崎と広島の子が一緒になって何かできたらいいかなくらいに思っていました。プログラムに入れ込んで、アリーナで開催すると聞いた時はすごくビックリしました。
私個人的な話で言えば、実行委員会の皆さんと一緒に盛り上げていこうと決めて、各所へ発注することから始まりました。実際に等身大パネルやフラッグ、サイン入りのユニフォームなどが浜の町アーケードにズラッと並んでいるのを見た時、そしてファンやブースターの方がその写真を撮影する様子を見た時、Bリーグさんをはじめ多くの方の尽力で本当に実現できたんだと感じました。
林田 オールスターで学び、蓄積されたノウハウは私たちに残っています。また、盛り上がりを感じた街の皆さんも「こういう取り組みをしたら人が来てくれるんだ」という感覚を持っていただけているのであれば、次の展開にも結びついていくと思います。長崎ヴェルカやV・ファーレン長崎の試合という切り口は続いていくので、オールスターで学んだことを活かして、私たちの官民連携推進室は長崎スタジアムシティさんと連携しながら街の賑わいを創出していきたいです。
濱 子どもがクリニックなどを楽しむ様子を見て、バスケットボールやBリーグに興味を持った親御さんもいるはずです。今後はオールスターによるスポーツ振興をどれだけ上積みしていけるのか。そこは施策を考えなければいけません。今はBリーグさんをはじめ多くの関係者の方々と作り上げた実績がありますので、長崎ヴェルカやV・ファーレン長崎といった地元のプロスポーツクラブと手を取り合い、スポーツ振興につなげていきたいです。
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