ミラノ・コルティナオリンピック| フィギュアスケート団体戦

note
チーム・協会
【これはnoteに投稿されたにこまるさんによる記事です。】
楽しみにしていたオリンピック。とうとう始まってしまいました!
3日間にわたって行われた団体戦。
にこまるの住むカナダですが、アメリカマネーのおかげか(多分)、
競技スケジュールがかなり見やすい時間帯に組まれている気がします。
3日間、素晴らしい演技が続出。
今回はその中でも、特に印象に残った演技についてお話しします。

その前に

フィギュアスケートの会場は、ミラノ中心部から地下鉄で30分ほどのウニポル・フォルム(Unipol Forum)。
選手の移動はシャトルバスだそうですが、イタリアのバス事情を考えると、少し心配になる距離感です。
この会場は、にこまるのイタリア人スケート友だちのホームクラブで、
2018年に一度、練習したことがあります。
その時の第一印象は……昭和の市民スポーツ会館。
外観は当時からあまり変わっていないようなので、
上手に改修し、サステイナブルに運営されているのでしょう。
案外(失礼)、なんとかしてしまうのがイタリア人。
ボランティア、運営、記者、そして「ただの観客」など、
現地組の友人たちを羨みつつ、少し恨みつつの観戦です。
いつかオリンピックを現地で観戦したい。

カナダの放送

カナダのオリンピック解説は、
世界選手権優勝4回のカート・ブラウニングさん。
細かすぎるジャンプ解説(もはやコーチセミナー)、夏合宿で日本チームを指導した時のエピソード、リアルすぎる選手心理など、関係者以外には興味がなさそうな話が続きます。
それでも成立してしまうのが、さすがカナダ。
観客のスケート・リテラシーは高く、カナダのおばさま方の中には、
マイ・スコアシート持参で観戦される方も少なくありません。
一般滑走で練習していれば、周囲は一斉にコーチと化し、
色々と教えて(説教?)いただけます。

団体戦初日

残念ながら、リアルタイム観戦はできませんでした。
朝が早かったうえ、チャンネル登録などでも少し手こずり……
オリンピックでも反省です。

断片的な観戦ではありましたが、まず気になったのが音響。
ムムム、と思っていたところ、
現地組によると「会場の音はとても良かった」とのこと。
どうやら放送との組み合わせに問題があったようです。
カナダの放送では、翌日から改善されていました。

もう一つ、内輪で盛り上がったのが、画面左下のソフトウェア。
選手の動きを追う表示なのですが、「○○に見える!」と、
いつの間にか大喜利大会になってしまいました。

演技は、トップ選手の演技だけをなんとか後追い。
あくまで、ちょっとした感想です。(やっと本題)

アイスダンス
金・銀メダル争いの接戦が予想されるアイスダンス。
まずは、マディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組が制しました。
僅差ではありますが、
ギヨーム・シゼロン/ロランス・フルニエ=ボードリー組は、
やや慎重な演技だった印象です。
フランスは団体戦でのメダルの可能性が低く、
個人戦に焦点を当てているのかもしれません。

シゼロンさんは、
元パートナーのパパダキスさんの著書による告発、
ボードリー選手は、
元パートナーで現夫による性的暴行疑惑について質問されるなど、
外野が騒がしい状況ですが、
それでも実力をしっかり発揮してほしいと思います。

ペア
1位 三浦璃来/木原龍一組
各国の力が拮抗しており、
日本チームにとっても順位の鍵となる大切な種目です。
一つのミスが順位を左右する緊張感の中、
ベテランらしい落ち着いた演技で、むしろ余裕さえ感じられました。
怪我なく、最終日まで乗り切ってください。
スピンのユニゾン、すごかった。

怪我が心配されていた地元イタリア代表、
サラ・コンティ/ニッコロ・マチー組は3位に入りました。
膝のサポーターや体の絞り込み方から、本調子ではないことが伺えますが、それでも「演技ができる喜び」が溢れていて、
あっという間に終わってしまいました。
練習不足によるつなぎの粗ささえも勢いに見えるあたり、
スケートはプレゼンテーションが本当に大切だなぁと、改めて実感。
イタリアチーム、地元でメダルを獲得できるといいですね。

女子シングル1位坂本花織選手
勢いのある会心の演技、という感じではないかもしれませんが(それは個人戦のお楽しみでしょうか)、落ち着いたスケートでした。
カートさんは、滑らかさやジャンプ後のスピードを絶賛。
左下の謎ソフトウェアも、よく動く動く。
スケート技術だけでなくスポーツマンシップも讃え、
引退を惜しんでいたのが印象的でした。
本当に、最後まで心ゆくまで楽しんで、
思い描いている演技ができますように。

2位 アリサ・リュウ選手
回転不足はあったようですが、彼女もまた、この場にいられることの幸せを噛み締めているような演技。
競技というより、ミュージックビデオを見ているような印象でした。
スケートをする理由は人それぞれ。
世界選手権で優勝しても、「自分がなぜスケートをするのか」
がブレていない、彼女らしい世界を魅せてくれました。

4年前のロシア女子全盛時代をふと思い出し、スケート界も変わったなぁと実感した瞬間でもありました。
機械のように正確で美しい、戦士のようなスケートも素晴らしいけれど、
何度も見たくなるのは、こういう演技かなぁと、にこまるは思いました。
もちろん、どちらも素晴らしいのですが。

1人も転倒しない大会。これはチームワークの力かもしれません。
比較的新しいフォーマットですが、とても良いと思います。

団体戦2日目

今日のハイライトは、なんといっても鍵山優真選手でしょう。
失敗の少ない(転倒はなかったのでは?)、奇跡のような試合で、
宇宙人マリニンを抑えて1位。
自分自身も楽しみ、会場も盛り上げる。
ジャンプ中もスピン中も、そしてその“間”も、
ずっと踊っているような演技でした。
カートさんは、カメラがその素晴らしい足さばきを映しきれていないと、
ご不満の様子。
はい、足だけの映像でも、十分楽しめると思います。

そして、カナダ放送恒例の「カナダ・コネクション」解説。
鍵山選手の振り付けを担当したロリ・ニコルさんにも言及がありました。
ロリさんは、スケーターの心の奥を見抜き、
それをスケートとして開花させる、そんな振付師だそうです。
鍵山選手のコーチ、カロリーナ・コストナーさんの振り付けも担当し、
名プログラムを数多く生み出してきました。

2位はイリヤ・マリニン選手。
金メダル最有力候補ですが、オリンピック初出場で、まだ21歳。
4回転アクセルを入れるかにも注目が集まりましたが、構成は
4回転フリップ、トリプルアクセル、4回転ルッツ―3回転トウループ。
全体的にジャンプの流れは今ひとつでしたが、それでも98点。さすがです。
アクセルの失敗については、
「少し回転しすぎだったのでは」という指摘もありました。
団体戦フリーを滑るかは未定ですが、
個人戦に向けて良い練習になったと思います。
少しずつ、調子が上がっていくといいですね。

アイスダンスは、フランス組不在の中、
マディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組が圧巻の1位。
Netflixから続く「スカート長すぎる問題」には少しヒヤヒヤしましたが、
無事に演技を終えました。

最後に。
結果発表で、カナダの実況がまさかの足し算に苦戦。さすがのカートさんもツッコめませんでした。きっと、長い一日だったのでしょう。

団体戦3日目(最終日)

ペア
解説にサンドラ・ベジックさん(1972年札幌オリンピック ペア代表/振付師)が加わり、その美声で一気に雰囲気が優雅になりました。
各組の強み・弱み、技術解説、振り付けのニュアンスに加え、
パートナーが怪我をしている時の心理状況や観客の反応まで、
まさにフルコース解説。それなのに、まったくうるさくない。
きちんと下調べもしている様子で、69歳であれほど美しくいられるのは、
この向上心のおかげかもしれません。

ペアも転倒のない、ハイレベルな大会。
点数より順位が重要な状況もあり、どの組も失敗を避けるため慎重な印象の演技でした。

カナダは、怪我により団体戦欠場となったディアナ・ステラート/マキシム・デシャン組に代わり、ショート・フリーともにリア・ペレイラ/トレント・ミショー組が健闘。
結果は5位でしたが、3位との差はわずか2.19点。
初めてじっくり見ましたが、リフトやペアスピンのポジションが美しく、
さすがペアの伝統国・カナダの代表だと感じました。

怪我が心配されていた地元イタリア代表、サラ・コンティ/ニッコロ・マチー組は3位。メダルに一歩近づきました。
本調子ではないかもしれませんが、今できるベストの演技を披露。
怪我をしたというスロー・3回転ループを決めた後のガッツポーズには、
グッとくるものがありました。強い。

欧州選手権優勝のアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ組については、男性側のフットワークの不安定さなど、違和感はあるけれど自分では気づかなかった点を指摘され、とても勉強になりました。
演技と直接関係はありませんが、元ロシア代表選手がジョージアに移籍している現状については、少し気になるようです。

最終滑走は、三浦璃来/木原龍一組。
前半のサイド・バイ・サイドジャンプで少し乱れはありましたが、
流れのあるリフト、美しいデス・スパイラルが印象的。
サンドラさんも「ピュアなペアスケーティング」と絶賛していました。
4年間で風格も備わり、個人戦も楽しみです。
フリーの得点はシーズンベストを7点も更新し、
2位に15.85点差をつけての1位。
日本チーム、アメリカとの差が縮まりました。
点数より順位が大切な展開に、にこまるはやや迷子気味です。

余談ですが、5組中2組がグラディエーター。
かつての「オペラ座の怪人」問題を思い出してしまいました。

女子シングルサンドラさんは、優雅なバールにでも行かれたのか、ここからはカートさんの全力解説。
残り2種目となり、各チームが順位を意識し始めたのか、ミスが出始めました。

追い上げる日本チームの前に、アンバー・グレン選手が登場。
大技トリプルアクセルを持つものの、調子に波のある選手です。
前半のジャンプには硬さが見られましたが、大崩れすることなく演技を終えました。
この時点で、ジョージアのアナスタシヤ・グバノワ選手に次ぐ2位。
順位点的に、想定外の展開が待っていました。

そんな緊張感の中、坂本花織選手が登場。
「一つ一つの要素がチームへのギフトです」などと気の利いたことを言っていたカートさんも、言葉を失う貫禄の演技で1位。
少〜しだけミスをして、個人戦を楽しみにさせるあたり、作戦でしょうか?

カートさんは、日本チームを指導した際に触れた坂本選手の人間性にも言及。
フィギュアスケートのアンバサダーとして、これ以上の人はいないと大絶賛でした。
どうしても出したい「カナダ・コネクション」は、パトリック・チャンを彷彿とさせる、流れのあるスケート技術。
可愛いキスクラ演出の中、なんと日本はアメリカと同点、暫定1位に。
でも、泣くのは早いです!

男子シングルいよいよ最終種目。これでメダルが確定します。
ジョージア代表ニカ・エガーゼ選手がプレッシャーに飲み込まれる中、イタリアのマッテオ・リッツォ選手が大事な場面で完璧な演技を披露し、3位。
ヨーロッパ選手権まで代表入りすら危うかったとは思えない、大きな貢献です。

カメラ目線で始まり、ジャッジ席に迫って終わる演出は反則級。
会場は大盛り上がりで、「泣いていない人がいなかった」そうです。
ほとんどただ滑っている時間がない、つなぎの複雑なプログラム。
にこまるだったら、氷上で完全に迷子になっていたでしょう。
ジャンプが勝敗を大きく左右する時代に、
こうした演技が評価されたのも嬉しいです。おめでとうございます。

そして……金メダルを懸けて、まずはアメリカ代表、イリヤ・マリニン様。
4回転アクセルは封印。いくつかランディングの乱れはありましたが、後半のシークエンスでトリプルアクセルを決め、ステップでも魅せました。
精彩を欠いてもすごい、異次元の選手です。200.03点。

団体戦最終滑走者は、一般選手代表・佐藤駿選手。
ご本人にとっては「勘弁してほしい」展開だったでしょう。
観ているこちらも心臓がドキドキするほどの緊張感で、これまであまり経験したことがありません。
そんな中、なんと完璧な演技。
ステップやスピンでレベルを落とした部分はあったようですが、すべて加点のつくクオリティ。
これは、個人戦に向けて良い弾みになったのではないでしょうか。

最後に

接戦の末、銀メダル。
残念に思う方もいるかもしれませんが、これは素晴らしい結果だと思います。
アイスダンスの個人戦出場者がいない中、すべての選手が実力を出し切りました。
アメリカ優勝の鍵は、ペアのエリー・カム/ダニエル・オシェイ組の活躍だったと思います。
トップ選手が落とした数点を取り戻したのは、彼らではないでしょうか。

もしカナダペアが怪我をしていなかったら、もしフランスチームがフリーに進んでいたら――たらればはあります。
でも、日本が団体戦で勝つには、やはりダンスの育成が鍵なのかもしれません。
4年後が楽しみですが、
まずは、個人戦を楽しみたいと思います。

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