【スキー・モーグル】“遊びの延長”で世界のトップへ―平山将大、初W杯で掴んだ確かな手応え

びわこ成蹊スポーツ大学
チーム・協会

初めてのW杯シーズンで初の表彰台を獲得 【本人提供】

日本人選手が連日メダルを獲得し、注目を集めるミラノ・コルティナ五輪。堀島選手が予選をトップ通過した男子・モーグルの世界で、あと一歩で代表を逃した平山将大。26歳で迎えた今シーズン、W杯初参戦ながら、表彰台へ一気に駆け上がった苦労人だ。
1月16日・米国ニューハンプシャー州ウォータービルバレー大会。スーパーファイナルに進み、3位―自身初のW杯表彰台。 あと1段上の表彰台に立てば、五輪代表の可能性も見える状況での大躍進だった。

「めちゃくちゃうれしいけど、感情がぐちゃぐちゃだった」そう語る表情はどこか淡々としていた。だがその裏には、確かな手応えがあった。

「トップの選手はもちろん上手い。でも“自分も普通に戦える”と感じた。整えればもっと上に行ける」

五輪代表には届かなかったものの、この“手応え”こそが、平山が今シーズン大きく飛躍した理由と言える。

初W杯で掴んだ“世界との距離”

平山にとって、初めてのW杯シーズン。世界中から約60名のトップ選手が集まる中で戦うのは、簡単なことではない。

「W杯って世界のトップレベルの選手でも、もっとすごい戦いだと思ってたんです。60人全員が“怪物”みたいな。でも、意外と予選落ちすることも多いし、決勝までは普通に狙える、トップ10はサクッといける感覚があった」

海外勢の滑りを映像で見て「すごい」と思っていた空想と、実際に彼らと同じスタートに立つ現実。その状況に気負うことなく、いつも通りのメンタルで挑めたことが、初の表彰台を引き寄せた。

【本人提供】

国内・アジアで示した安定感、世界で掴んだ“感覚”

これまで国内大会で着実に結果を積み重ねてきた。全日本選手権優勝、アジアカップでの複数の表彰台―。結果は確実に“実力者”としての成長を示している。そして今季W杯では、結果以上に『世界で勝つための感覚』を手に入れた。

「攻めるポイント、リスクをどこまで許容するか、世界のトップがどんなテンションで滑っているか…。実際に同じコースに立つと、映像ではわからないことが全部わかる」

特にスーパーファイナルでの経験は大きい。結果を恐れずに攻める姿勢、目まぐるしく変わる順位争いなど、“世界の基準”を肌で感じ取った。

「予選・決勝までは普通に戦える。あとは技を整えればトップにも届く」

国内で積み上げた安定感に、世界の“リアルな距離感”が重なった。この手応えが、4年後に五輪へ初出場するための大きな活力となっている。

「楽しくないならやらない」――独自の“遊びの哲学”

平山の競技観を象徴する言葉がある。

「楽しくないなら、やらない」

世界で戦うアスリートらしくないように聞こえるが、この言葉は平山の生き方そのものだと言える。2歳からスキーを始め、冬は家族とともにゲレンデで遊ぶのが日常。その“遊びの感覚”が、今も競技の中心にある。
シーズン中でもオフになれば、モーグル板を履かず、ただ広い山を自由に滑り、仲間たちと遊び、ただ純粋にスキーを楽しむ。結果に追われるほど、遊びの密度を上げる―そんな逆説的なアプローチが、彼の競技力を確実に高めている。

「モーグルのことをずっと考えすぎると、逆に良くない。遊びで気持ちを満たしているから、競技に向き合う時に余裕が生まれる」

自然の中で培った“感覚”を、彼は誰よりも信じている。

専属コーチをつけない理由―“自分で決める力”

平山はチームに所属しながらも、専属コーチをつけない世界でも珍しいアスリートの一人だ。世界を転戦する中で、多くのコーチや仲間たちから助言を受ける。だが、最終判断は常に自分だ。

「人から言われたことも、一度自分の中で噛み砕く。納得したものだけ採用する」

遊びの中で育てた“自分の感覚”を信じる姿勢と、コーチに頼らず決断していく“自立”を融合する。26歳になった今、平山の中で「自分らしい競技スタイル」として定着し、結果につながっている。

大学時代で得た“野性”と能動性

びわこ成蹊スポーツ大学への進学は、縛られずにスキーを続けるためだった。大学には、モーグル強化の環境が整っていたわけではなかった。だからこそ、“無いなら自分で整えに行く”姿勢が磨かれた。野外・レクリエーションスポーツコースでは、山・雪・湖など自然環境に深く入り込む実習を経験。
平山は「知識が増えたというより、人(動物)として強くなる感覚があった」と語る。雄大な自然の前では自分がどれだけ無力かを思い知る場面も多く、その経験が、アスリートとして必要な耐性と判断力が鍛えてくれたのだ。“必要なことは自分で動いて掴みにいく”―この能動性は、今の平山のスタイルそのものだ。

目標は五輪のメダル――力まず、自然体で

アスリートとしての最終目標を問うと、平山は迷わず「五輪でメダル」と答える。ただ、そこに過剰な執着はない。「やりたいことをやって、その結果として届けばいい」その自然体の姿勢が、彼の強さを支えている。

引退後も“指導者”の道は考えていない。「人が上手くなるかどうかはその人の問題。自分は滑り手でいたい」と、スキーと関わり続ける未来を柔軟に描いている。

後輩たちへ――「強くあれ。弱さは捨てていい」

最後に、母校・びわスポ大の後輩や何かに打ち込む人たちへメッセージを聞いた。

「どんな方向でもいいから強くなること。自分の強みを知って、弱さは捨てる。必要なら取り込む」

強さは競技でも社会でもプラスしかない―その実感が込められていた。
世界で戦える手応え、自然体で積み重ねた強さ、そして遊びのようにスキーを楽しむ柔らかさ。平山将大という選手の存在感は、確実に大きくなりつつある。次の一本がどんな景色を見せてくれるのか、期待は高まる。
【プロフィール】
平山 将大(ひらやま しょうた)
1999年3月27日生まれ。
兵庫県朝来市出身。
びわこ成蹊スポーツ大学を卒業後、PAPASU SKI CLUBに所属し、競技活動を行っている。

【本人提供】

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著者プロフィール

2003年に開学した我が国初で唯一の「スポーツ」を大学名に冠したパイオニアが、その役割を全うすべく、「スポーツに本気の大学」を目指し「新たな日本のスポーツ文化を創造する大学」として進化します。スポーツを「する」「みる」「ささえる」ことを、あらゆる方向から捉え、スポーツで人生を豊かに。そんなワクワクするようなスポーツの未来を創造していきます。

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