思うようにいかない今日も、もがき続ける
噛み合わない時間の連続だった。
NTTジャパンラグビーリーグワン2025-26の第9節、ブルーレヴズは三重ホンダヒートとのビジター戦に臨んだ。
鈴鹿での試合は2年ぶり。2年前は62ー13で大勝していた。
リーグワンになってからの対戦成績は3戦3勝。トップリーグ時代は4戦4勝。
過去の対戦成績だけを見れば、ヤマハ発動機ジュビロ~静岡ブルーレヴズはホンダヒートとの「オートバイ・ダービー」で圧倒してきた。
だけど、過去の成績は関係ないのだ。
80分間の試合が終わったとき、スコアボードに残った数字は21ー26。
レヴズはヒートに初めての黒星を喫した。
ヒートは来季から本拠地を栃木県宇都宮市へ移転する。
長年、チームを支えてくれた三重のファン、鈴鹿のファンの前で勝利を見せたいという思いは格別だったはずだ。その思いには、ラグビー仲間として、それも地方都市からリーグワンを戦う仲間として、深いリスペクトを捧げる。
だが、試合の結果は別の話だ。
ヒートの選手たちがファンに感謝しているのと同じように、いや、それ以上にレヴズ戦士たちは熱心なレヴズのファン、レヴニスタたちに深く感謝しているはず。
何しろこの日もレヴニスタたちは鈴鹿まで駆けつけ、MCのリードなしに「GO!GO!REVS!」と自発的に叫び続け、スクラムとなればヤマスタと同じように「レ~~ヴズ!」と大声をあげ、選手たちの背中を押し続けた。
試合開始直後、21フェイズにわたった攻撃で攻めきれず、カウンターアタックを浴びて先制トライを許しても、そこからはほとんどの時間、ボールを支配し続けた。
2季ぶりに背番号10をつけた奥村 翔は司令塔の位置からも思い切ったランを仕掛け、2度目の先発となったLOマイアヴァは194cm116㎏のたくましい体で強気に敵陣を突き進んだ。
28分、相手の反則によるペナルティートライで7-5と逆転すると、相手にイエローカードが出たチャンスを活用。
30分には自陣22m線で大戸 裕矢のタックルで相手落球を誘うとラドラドラがボールを拾い、イラウア-奥村-ヴェティ・トゥポウー北村と細かくパスをつなぎ、左隅でパスを受けたテファレが80mを走り切ってトライ、奥村が難しいコンバージョンを決めた。
レヴズがあっという間に21-5までリードを広げた。
そしてその間も、レヴズのトライが濃厚に思えた場面でパスが乱れ、ボールが後ろを転々とするシーンが散見された。レヴズはトライチャンスを何度も作りながら、取り急いではトライを取り逃しているうちに、相手ゴール前に攻め込む時間も少なくなっていった。
もっと手前で攻め急ぎ、ミスしてしまう悪循環に陥っていた。
リードして迎えた後半はヒートに主導権を握られ、自陣に攻め込まれる時間帯が続いた。大戸、奥村のタックルでピンチを救う場面もあったが大きな流れを変えることはできず、4分、14分とトライを奪われ、30分にはついに21-26と逆転を許してしまう。
尻に火がついたレヴズはここで再びスロットルを開く。
33分、右サイドをテファレが突き進む。
しかしヒートの懸命のディフェンスに遭い、トライラインまでは届かず、逆に切り札テファレは脚をいためて退場してしまう。
それでも、戦いは続く。ピッチにいる15人で戦うしかない。
そして、一度はそれが実りかけた。
36分だった。
右ゴール前15mのラインアウトからモールを押し、右サイドに持ち出したベテラン日野からパスを受けたのは、途中出場でリーグワンデビューを飾っていたルーキーSH細矢 聖樹。
細矢は右隅へダイビングトライ。残り4分、劇的な同点デビュートライを決めた。
あとは、やはり途中交代で入っていたルーキー筒口がコンバージョンを決めれば逆転だ!
ビデオ審判(TMO)から、細矢がボールを持ったときに前にいた味方選手が相手のタックルを邪魔していたという指摘が入り、映像を確認した結果、トライは取り消されてしまう。
それでも、その前に相手に反則があったため、レヴズのチャンスは継続した。
トライラインまであと5mのPK。
落ち着いて攻めれば、決して遠くないはずだった。
だがレヴズの15人は迷っているように見えた。
ラインアウトで行くのか、スクラムで行くのか…そんな迷いが遂行力を鈍らせたのか。
結局、タップキックからトライを狙ったものの、ヒートの分厚いディフェンスを破ることはできず、13フェイズを重ねて再びPK。
そこから再び4フェイズを重ねるがこじあけることはかなわず、最後はSO筒口が思い切ってロングパスを大外のマフーザに送ったが、プレッシャーでパスは乱れ、届かなかった。
21-26。レヴズは敗れた。
「一番最初は良くなかったんですけど、その後は点も入りましたし、前半は本当に自分たちのペースだったと思います。後半になって、ペナルティからリズムを崩した感じで。最後もちょっと取り急いだというか、若い選手だったので『点を早く取りたい』っていう気持ちが先に出たかな」
「負けが続くとどうしてもプレッシャーがかかってくる。そういう意味では、早く(点を)取らないといけないとか、点を取られたときに感じるプレッシャーも違う。勝ち星が先行してると、リラックスしていろんな判断できると思うんですけど、やっぱり負けるとこういうプレッシャーがどうしてもかかってきます。今日はなおさら、若い選手も出てたりで。でもそれは一つずつ自分たちの学びになっていくかなと思います」
リーグ戦はこれで9試合が終了。
全18試合のちょうど半分を戦い終えた。
ここまで3勝6敗。
開幕前に思い描いた景色とはまったく違うシーズンになっている。
だが、シーズンはまだ半分だ。
プレーオフ進出枠「6」のボーダーラインは、昨季でいえば8勝8敗2分の勝ち点40。
レヴズはまだ何も掴んでいないけれど、何かを失ったわけでもない。
6位より、もっと上の順位でプレーオフへ進む可能性だってまだ十分に残っている。
藤井監督は言った。
「負けが続いてますけど、しっかり上を向いて、残りの試合でしっかり修正して、全部勝つ気でいきたいと思います」
次戦は3月1日、月が変わる。ツキが変わる。
サンゴリアスを迎える一戦で、レヴズはこれまでとは違う姿を見せてくれるはず――それを信じて、ヤマスタへ駆けつけよう。
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。
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