「ゼロ」にこだわり、目指すは頂点 #FC今治の2026年がはじまる 倉石圭二監督

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いよいよ始まる明治安田J2・J3百年構想リーグ。チームを率いて2年目の倉石圭二監督が、チャンピオンを目指して全力を尽くすことを誓うのは、その先にJ1昇格を見据えているから。昨年、初めて挑んだJ2での善戦に甘んじることなく、チームは心揺さぶるハードワークとハントワークで、いっそう躍動していきます!

【©FC.IMABARI】

行きたかったところへ行くために

2026年のテーマ、キーワードとして「ゼロ」を挙げられました。そこに込めた思いを聞かせてください。

昨シーズンを振り返ったとき、クリーンシート、失点ゼロに終わっていれば、だいたい勝点16プラスできていました。11位だった自分たちの勝点は53。J1に自動昇格した1位の水戸ホーリーホック、2位、V・ファーレン長崎の勝点が70で、その差は17です。

われわれの総得点、総失点ともに46だったのですが、そのうち失点数に目を向けると、ディフェンシブサードでの振る舞いが良くなくて喫した失点が約20でした。ビルドアップ中のミスだったり、いらないPK、それからCKやFKの2次攻撃、3次攻撃で食らった失点ですね。それを46失点から引くと、リーグ最少失点だったヴォルティス徳島の24に近づくことができます。「たられば」になりますが。今年は失点を減らす、クリーンシートを増やしていくことにこだわっていきたいですね。

そして、マルクス ヴィニシウスという強力な個の質を持った選手が抜けました(名古屋グランパスに移籍)。当然、去年とは攻撃が変わってきますが、今年のチームは新たな可能性を秘めていると感じます。エジガル ジュニオをはじめ、味方を生かすことに長けた選手が新たに加わり、関係的な優位性のところで面白くなっていきそうだな、と。

ゼロからの積み上げにはなりますが、甘さゼロで、無失点を求めながら、点を取っていければ。ゼロの美学ではないですが、そういう文化を作っていきたいですね。

監督が、「ゼロ」というキーワードを意識したのは、どういうタイミングだったのですか?

昨シーズンが終わって、自分たちが行きたかったところに行けなかった原因を分析したときです。空から降りてきました(笑)。2026年のプレーにつなげる数字として、しっくりくるのがゼロでした。

今年の出発点としてクリアすべきポイントの一つが、去年の最終節ではないでしょうか。結果的にプレーオフの末、J1に昇格したジェフユナイテッド千葉戦に、アウェイで0-5で敗れました。

なかなか難しいモチベーション、シチュエーションでの試合でした。自分たちはプレーオフ圏内に入る可能性が消滅し、千葉は自動昇格、J2優勝の可能性もあった。そういう中で試合をやらせていただいて、いろいろなものを感じることができましたね。私自身がそうでしたし、クラブ、チームとしてもそうだったと思います。

最後の最後まで昇格が懸かっているチームが、どのような振る舞いをするのか。スタジアム全体の雰囲気はどうか。あるべき姿を見せられた試合でした。終わったとき、本当に悔しかったですが、『来年、自分たちがこの立場にいたい』と感じたし、いさせなきゃいけない責任を感じました。

シンプルに0-5という点差が悔しいです。何もできなかったとまでは言いませんが、完敗に近かった。負けるべくして負けた試合で、そちらにチームを向かわせてしまった後悔があります。もっとやれることがあったんじゃないか、という思いですね。選手たちを躍動させて、絶対に“次”につなげなきゃいけない戦いだったはずなのに。

小さな想定外がいくつも重なっての、あの試合だったのでしょうか?

モチベーションに違いがあるし、警告の累積でヴィニ(マルクス ヴィニシウス)が出場停止であることも、もちろん分かっていたんですけど、ヴィニが出られないながらも自分たちにできることを見いだして、選手に提示したつもりでした。ですが、なかなか表現し切れなかったですね。

千葉の気迫、気概を、もっと想定に入れるべきでした。メンタル面、ゲームコントロールのところで、『相手はこういう気持ち、気概で来るよ。だったらわれわれは、こう振る舞わなきゃいけないよね』という。

あのシチュエーションで、今治としてどのようにゲームをコントロールし、主導権を握りたかったのですか?

試合が始まる時点で3位の千葉としては、逆転で自動昇格、優勝するために、ただ勝つだけではなく、大量得点が必須でした。だから、絶対に前からアグレッシブに来る。その圧を、どう剝がしていくのか。剥がしきれなくても、どのように配球し、ピッチ上のどの位置でフットボールをするのか。そこでゲームコントロールしたかったんです。でも結局は押し込まれて、ずっと後ろでプレーすることになりました。ボールを奪ってもすぐに奪い返され、カウンターを浴びる様相で。メンタル面を含め、『千葉がこう来るのであれば、俺たちはこうしよう』という私から選手たちへの提示が弱かったです。

【©FC.IMABARI】

攻守で楽しみな「エジガル効果」

去年最後の悔しい完敗を乗り越え、2026年のチャレンジが始まります。チーム編成を見ると、前線、最終ラインが大幅に変わってのスタート。監督が掲げるひたむきなハードワーク、ボールを奪うハントワーク、感動を呼ぶハートワークのうち、特にハントワークに大きく影響を与えかねない変化ではないでしょうか。

前から相手に噛みつきに行って、ボールを奪おうとする。ハントワークに関しては、今治の文化として根付いていると感じます。そしてまだ開幕前ですが、ハントワークは去年より良くなるんじゃないかと思っています。

というのも、補強もあって嚙みつきに行く感覚を持った選手が増えましたから。相手にプレッシャーを掛けつつ、背中でパスコースを切って、一人で相手2人を見ることができる。自分で噛みつきに行くスイッチを入れられるし、仲間の誰かが入れたとき、そのタイミングを共有できる。そういう選手が増えて、攻撃の関係的優位のように、守備でも優位性を見せられるのかなと感じます。

たとえば新加入の一人、エジガルは、おととし長崎で一緒にやっていて、背中で消しながらボールを奪いに行くのが本当に抜群だと思いました。賢い選手です。今治に来ても相変わらずタイミングよく、背中で消しながら奪いに行くスイッチを入れてくれます。パスを出されても足を止めずに付いて行って後ろからボールを突(つつ)けるし、しっかりプレスバックもしてくれます。当時の長崎は4-4-2のゾーンでやっていたので、2トップの規制とコンパクトさがなおさら重要になってくるんですね。対戦相手のボランチからすれば、『え、そこから足が出てくるの?』という感覚だと思います。思いがけない間合いでボールを突かれるし、パスコースを消されているので。

今年の今治の守備が、めちゃめちゃ楽しみになってきました!

エジガルは攻撃面でも賢くて、周りを使うのがとてもうまいんです。ヴィニの力強さ、推進力はスペシャルでしたが、エジガルのボールを奪われないスキルもすばらしいものがあります。関係的優位性というのは、彼がなかなかボールを失わないから、周りも信頼してサポートに行けることによって生まれてくるんじゃないかとイメージしています。

今治の文化として根付いているというハントワークは、去年、監督に就任した時点で感じたのですか?

J3のときからボールを奪いに行っていたと聞いていましたし、昇格して引き続き今治でプレーする選手が多かったこともあります。だったら、チームがより躍動するやり方をやろうと、コーチ陣と話し合いました。

ただコーチ陣いわく、やっぱりJ2ではJ3のときほどボールを奪えない、と。それはそうですよね。ボールを奪い切れなかったときの振る舞いも、しっかり持っておこうという話になっています。どこに、どういうふうに戻るか、というところですね。

明治安田J2・J3百年構想リーグを戦うチームのキャプテンが、横浜FCから期限付き移籍で加入した駒井善成選手に、副キャプテンが去年から引き続き梶浦勇輝選手、長崎から完全移籍で加入したエジガル ジュニオ選手、そしてヴァンフォーレ甲府から完全移籍で加入した孫大河選手に決まりました。梶浦選手もFC東京からの育成型期限付き移籍中で、契約を今年6月まで延長しています。チームの在籍年数に必ずしもこだわった人選ではないところが特徴的です。

1月4日にチームが始動して、17日から25日までは高知県香南市でキャンプも行い、毎日のトレーニング、ピッチ内はもちろんピッチ外、イベントも含めての言動を見て、コーチ陣と話し合って、最終的に私が決めました。

J2・J3百年構想リーグでチャンピオンになるための人選です。話し合いの中で在籍年数の長い選手の名前も挙がったんですけど、彼らはそういう役職に就かなくても、率先してキャプテンシーを発揮してくれますからね。となると、駒井も梶浦も6月までの期限付き移籍ですが、百年構想リーグを取りに行くチームのキャプテン、副キャプテンを選ぶとき、契約期間を気にする必要はないのかな、と。

駒井は浦和レッズやコンサドーレ札幌などで、本当にいろいろな経験をしているので、ぜひそれを今治に還元してほしいです。エジガルには外国籍選手をまとめてほしいし、長崎時代に若いアタッカーがいろいろ聞きに行く光景を見ているんですね。『どうやってボールをキープするんだ?』『体は、どう使えばいいんだ?』と。それに対してエジガルも、とても丁寧に指導するんですよ。自分の経験、考えを基にして。今治でもそういうことをやってほしいし、こちらから本人に伝えてもいます。

大河に関しては、一番はやっぱり後ろからのコーチングです。おとなしい選手が多いので、最終ラインの中央から鼓舞するコーチング、チームをコントロールするコーチング、ボールを奪いに行くためのコーチングを任せたい。今年で27歳になるので、中堅をまとめつつ、若手とベテランをつなぐ潤滑油になることも期待しています。

梶浦は去年のやり方を知っているし、メンバーの特徴も知っているので、キャプテンの駒井を助けてほしいのはもちろん、彼自身、けがが治ってからの去年後半はチームの中心としてしっかりやってくれた上で、今治に残ってくれました。22歳と年齢的には若手ですが、センターラインの選手でもありますし、志を高く、より責任感を持って、チームの柱になってほしいということで選びました。

【©FC.IMABARI】

噛みつき、粘り強く、しぶといチームへ

新たなチーム作りが着々と進んでいます。実は、一つ疑問がありまして。始動日に監督が失点ゼロについてお話しされたとき、「ボールを奪うだけではなく、守り切る力も必要になる」とおっしゃいました。こちらの勝手な受け取り方なのですが、それを聞いて『あれ? 場合によっては引いて守りを固めて、リードを守ろうとする戦いも出てくるのかな?』と思ったんです。『だけど、そうするとボールを奪いに行く鋭さ、迫力が鈍りかねないのでは……』と。

守り切るというのは、そういう意味ではないです。去年、攻め込まれたとき、ペナルティエリアの中であるにも関わらず、ボールを無理に奪いに行ってしまって、PKを与えて失点することがたびたびありました。足を出さなくていいのに、出してしまって。

でも、ボックス内ですからね。状況をしっかり把握した上で守らないと。そういったところを反省しましょう、ということです。最初からズルズル引いて守るということではなくて。ボールを奪いに行ったけれど、奪えず、剥がされて押し込まれてしまった。そこでしっかり守るフェーズを作って、相手を押し返し、もう一度、奪いに行く状態を作る。そういう意味です。

あとはこちらがリードしている試合の終盤になると、当然、相手はパワーをかけて反撃してきます。それで押し込まれても、いかに失点せずに試合を終わらせるのか。クローズの仕方もしっかりできないと、なかなか上に行けないというのは、去年、感じたところです。

気持ちだけでは守り切れないですし、相手を押し返すためには技術、判断力が必要です。チームのクオリティを、どう上げていきますか?

もちろん個の能力、スキルは、もちろん磨かなきゃいけないんですけど、守備って一人が勝手なことをしてしまうと、途端にほころびが出て立ち行かなくなるんですね。そうならないためにも、近くの選手とつながって守る。われわれはローピングと言っています。

たとえば5-3-2のブロックを組んで守るとなったとき、2のローピングの間を破られない。3、5のローピングの間も破られない。破られたとしても、プレスバックとチャレンジ&カバーで守る。個のスキルを上げつつ、近くの選手との関係性でもしっかり守るということです。

ボールを奪うチャンスを逃すわけにはいかないので、ローピングで守りつつ、相手にバックパスをさせて、その瞬間、われわれのコンパクトな陣形そのままに押し返していく。そのためにピッチのブロックの位置を細かく設定して、選手たちには伝えています。

ただローピングを強調しすぎると、そういう守備のトレーニングをした後のゲーム形式で、今度は誰もボールに行けなくなっちゃうんです。“サッカーあるある”なんですけど。ちょっと時間がかかるとは思いますが、つながったロープを切られないチェイシングに取り組んでいきたいですね。

そこがきめ細やかにできればできるほど、戦いは強固になっていきますね。

コーチングスタッフの中でも、たとえば修行(智仁)GKコーチは失点しないこと、守備へのこだわりがやはり強い。そういうGK陣の力も借りつつですね。

それから新たに着任した藤田(聖吾)アナリストは、『守備は芸術だ』と言うんです。そういうことを考えると、われわれコーチングスタッフが守備に面白さを見いだして、それが選手に伝われば、今治に新しくもう一つ違う文化が生まれるんじゃないかと思うんです。ただがむしゃらにボールを奪いに行くだけじゃなく、粘り強く、しぶとく、やられない今治。そういう文化も作っていきたいですね。

しぶとい今治。いいですね!

どちらかというと、僕自身は攻撃が好きなんですよ。久保山(由清)ヘッドコーチも。だからこそ、今年は守備のところを突き詰めていきたい、というのはありますね。

コーチ陣の力を借りる、スタッフワークというところは、去年、今治の監督に就任した当初からおっしゃっていました。今年のコーチ陣を見ると、新任でスペイン人のギジェルモ ウリオール ヒル・アシスタントコーチの存在も新鮮です。ギジェルモ・コーチには、どのような形でチームの力になってほしいとお考えですか?

スペインのサッカーを熟知していることもあって、自分たちの立ち位置や相手のフォーメーションとの噛み合わせ、そこでどういう優位性が生まれるのか、どうすればもっと効果的に守備をはめていけるのか、といったところのタスクを担ってもらおうと考えています。それからギジェさんも攻撃が好きなので、そういうトレーニングのセッションを任せたり。選手たちに新しい刺激が入ることを期待しています。

いよいよJ2・J3百年構想リーグが始まります。今、監督が楽しみにしていることは何でしょうか?

限られた期間、限られた試合数の大会ではありますが、その中でシンプルに1位から40位まで順位が決まるというところですね。J2、J3の40チームの中での自分たちの現在地がはっきりするじゃないですか。レギュレーション的に対戦しないチームはあれど、斬新ですし、2026ー2027シーズンの指標にもなるんじゃないかと思います。毎試合、しっかり勝ちに行って、他のグループの上位チームとプレーオフで戦いたいですね。

チャンピオンを目指しながら強いチームと戦うこと、相手の力を知ることが経験値となって、26/27シーズンに必ず生きてくると思います。チームからこれまでのエースが抜けて、新しいエースが生まれてくることになりますが、みんなが主役になれるんじゃないかと感じています。毎試合、点を取る選手が違ってくる、といったように。だから、サポーターのみなさんは新たな推しの候補がたくさんで、絞れなくなるかもしれません(笑)。そこは楽しみにしていただきたいですね。

みなさんに喜んでいただけるのは、やっぱりわれわれがボールを奪って、たくさん走って、点を取るところだと思うんです。シンプルにボールを奪い、ゴールを奪いに行く。ハントワークとハードワークでやっていきます。

(取材・構成/大中祐二)

【©FC.IMABARI】

【プロフィール】
くらいし・けいじ/1982年6月26日生まれ、宮崎県出身。
国見中学校、国見高校、専修大学を経て、2005年にJFLに昇格したホンダロックSC(現ミネベアミツミFC)に加入。
アグレッシブにボールを奪いに行く“噛みつく”ボランチ、サイドバックで、元日本代表の大久保嘉人も同級だった国見高3年時にはインターハイ、国体、選手権の三冠を達成している。2009年、現役を引退すると、宮崎日本大学高校のコーチとなり、指導者のキャリアをスタート。2017年、テゲバジャーロのヘッドコーチ、翌年、監督に。クラブがJ3に参入する2021年、当時はS級コーチライセンスを持っていなかったために、ヘッドコーチに異動。2022-23年、横浜FCコーチ、2024年、V・ファーレン長崎ヘッドコーチを経て、2025年からFC今治の監督を務める。
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著者プロフィール

2020年シーズンよりJリーグクラブとなったFC今治。ホームタウンはしまなみ海道の玄関口、愛媛県今治市です。わたしたちは「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会づくりに貢献する。」を企業理念に掲げる(株)今治.夢スポーツという法人です。今治.夢スポーツは、FC今治の運営を核に、教育事業や地域貢献活動などさまざまな事業にチャレンジしています。当アカウントでは、イベントや試合情報、選手に関する情報など、クラブの最新情報をお届けします。

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