【第6節レビュー】FBルーカスが華麗なランでトライ演出。SO中楠はキックで18得点。またも逆転で今季3勝目
HO李がリーグワン初出場。FLギルは日本での公式戦50キャップを達成
タンバイ・マットソンヘッドコーチは相模原DBに対し、「ダイナボアーズ(ダイナミック〈活動的な〉とボアー〈猪〉の造語)という名前のイメージに近いね。ダイレクトでシンプルなラグビーで強みを見せるチーム」と印象を語り、準備を進めた。選手たちは前節のコベルコ神戸スティーラーズ戦での厳しい敗戦からの修正が求められる1週間となったが、ウォーミングアップなどからこれまで以上に大きな声が飛び交い、明るさを感じさせるトレーニングを行っていた。
スターティングメンバーには、前節のゲームで負傷したHO大内真に替わり大西将史が今季初先発。リザーブのHOには李淳弘が名を連ね、こちらは初のメンバー入り。LOはマイケル・アラダイスが開幕戦以来の先発。FL(6番)には日本国籍を取得したマクカランブロディが今季初先発。前節、試合直前で入替となったCTBラズロー・ソードも復帰を果たした。またFLリアム・ギルは、トップリーグとリーグワンの合計で50キャップに到達。メモリアルな一戦となった。
前半はBR東京がPGで先制(前半6分)。しかし、敵陣ラインアウトからのアタックでミスが出て、一気にトライを奪われ逆転されると(前半14分)、WTBメイン平のタックルでのアクシデントが絡んだプレーで突破を許すやや不運なトライで追加点を奪われ、3-12と点差を拡げられた(前半22分)。
前節の大きな課題だったターンオーバーボールをトライに繋げられる歯がゆい立ち上がりとなったが、もうひとつの課題といえるハイボールバトルでは好プレーが続いた。メインに替わりピッチに立っていたWTB伊藤耕太郎、また前節から奮闘を見せるWTB西川大輔らが果敢にキャッチに挑みチャンスをつくっていくと前半28分、FBアイザック・ルーカスが華麗なランでブレイク。22mラインを越えると、このチャンスをFLマクカランが仕留め、1トライを返し10-12とする。
しかし、規律の乱れから自陣侵入を許すと、FWのダイレクトプレーから展開されトライを許し12-19。PGで3点を返したものの、終了直前にPR笹川大五にイエローカードが出てしまい、ビハインドと数の不利を背負って前半を終える。
相模原DBの規律が乱れ2枚のイエローカードが出ると後半23分、ゴール前スクラムをプッシュするとNO8サミュエラ・ワカヴァカが持ち出しトライ。30-19とした。それでも闘志を失わない相模原DBは13人でアグレッシブに挑み、ハイボールの再獲得からチャンスメイク。後半27分にトライを返され、30-24と詰め寄られる。
1トライ1ゴールでひっくり返る6点差のまま試合は終盤へ入ったが、リーグワンデビュー戦となったHO李淳弘らリザーブメンバー、そしてブレイクダウンで圧倒的な存在感を見せるFLリアム・ギルの奮闘でスコアを阻む。
「低い姿勢で相手を止めたい。大学からリーグワンにやってきて、入りたての頃はフィジカルに差を感じてきたけれど、スキルの大切さを知り、それを実行すればうまくタックルできるとわかった。スキルと気持ちが大事だなと」(HO李)
最終盤、そんな思いを語っていた李が相手主将・FL吉田杏に低いタックルを決め転倒を誘う。そこにFLギルの手が伸びスティール成功。ホイッスルが響くと、李は控えめに跳ね喜んだ。このプレーで得たPKを、SO中楠が3点に変えノーサイド。
苦しい前半を乗り越えたBR東京が、必死に試合の流れをたぐり寄せ、接戦をものにした。プレイヤーオブザマッチにはFBアイザック・ルーカスが選出された。
試合経過
コイントスに勝った相模原DBがキックオフを選ぶ。BR東京はメインスタンド向かって右の陣地を選択。風は定まっていなかったが、試合開始時はメインスタンドからバックスタンド方向への横風。
前半6分[BR東京]
スクラムでコラプシングを誘いPKで相模原DB陣内へ。ラインアウトをキープして攻め、相模原DBがショルダーチャージ。相模原DB陣内10m付近、ほぼ正面から、SO中楠一期がPGを成功させ3-0。
前半10分[相模原DB]
BR東京にノットロールアウェイ。25m付近、左中間からSOジェームス・グレイソンがPGを狙うも右にそれる。
前半14分[相模原DB]
BR東京は相模原DB陣内10m付近でラインアウトを得る。前で合わせ、左エッジに走り込んだSH TJ・ペレナラに繋ぐが激しい圧。ボールを残そうとパスしたがNO8マリノ・ミカエリトゥウに入る。22mまでゲインされ、CTBハニテリ・ヴァイレアが中央にトライ。CVも成功し3-7。
前半22分[相模原DB]
相模原DBがカウンターアタックから展開。フェーズを重ね左サイドに数的優位をつくる。低い姿勢でタックルにいったWTBメイン平の頭部が相手が踏み出した側の腰に当たるアクシデント。余った外に繋がれFL吉田杏がトライ。CVは不成功、3-12。
前半23分[BR東京]
WTBメイン平が脳しんとうの確認で一時退出。替わって伊藤耕太郎が入る(35分に正式に交替)。
前半28分[BR東京]
WTB西川大輔がハイボールキャッチ。そのまま前方へ仕掛けオフロードパス。やや乱れたが繋ぐと、BKが右に数的優位をつくる。FBアイザック・ルーカスがギャップを抜け自陣10mから相模原DBの22mまで前進。左中間のポイントから狭いサイドへ。細かいパスを繋ぎ、FLマクカランブロディがエッジを突破しトライ。SO中楠一期が角度のあるCVを成功させ10-12。
前半34分[相模原DB]
自陣脱出を図るBR東京がブレイクダウンでのクリーンアウトで反則。相模原DBは22m付近のラインアウトからアタック。ゴール前のラックでBR東京に反則。すぐにリスタートした相模原DBはFWでダイレクトに攻め展開。ポスト右にCTBハニテリ・ヴァイレアがトライ。CVも成功、10-19。
前半38分[BR東京]
再開後、BR東京はハーフウェイ手前からアタック。相模原DBにラインオフサイド。相模原DB陣内10m付近、ほぼ正面からPG成功。13-19。
前半40分[相模原DB]
相模原DBがBR東京陣内中盤でアタック。BR東京はディフェンスで足がひっかかかり相手を後方に倒すようなかたちになってしまいペナルティ。PR笹川大五にイエローカード。左中間、30m付近からPGを狙ったが不成功。ハーフタイムへ。
後半0分[BR東京]
CTBラズロー・ソードをPJ・ラトゥに入替。風は背中から吹く状況に。
後半3分[BR東京]
ラインアウトでFKを得ると、タップスタートで再開。前に出ていくが、チョークタックルを受けアンプレアブルに。PRを欠くBR東京は、PRパディー・ライアンが入り、NO8サミュエラ・ワカヴァカがピッチを出てスクラムに対応。
後半7分[BR東京]
BR東京は相模原DB陣内10m付近のラインアウトをスティール。アタックに転じCTB PJ・ラトゥがDFを弾きながら右サイドをえぐる。22mラインの手前のラックから左に展開すると相模原DBにオフサイド。右中間、25m付近からPG成功、16-19。
後半10分[BR東京]
SH TJ・ペレナラが上げたハイパントのキャッチはならなかったが、こぼれ球を獲得しアタック。左サイドを突いたCTB PJ・ラトゥに対しハイタックル。PKを獲得するとPR笹川大五の一時退出が終わる。PRパディー・ライアンが正式に入替。NO8サミュエラ・ワカヴァカが復帰。同じタイミングで相模原DBのSOジェームス・グレイソンが退き、チャーリー・ティトコムが入る。
後半13分[BR東京]
相模原DB陣内22m付近のラインアウトからモール。ボールを出しフェーズを重ねていく。CTB PJ・ラトゥがゴールに迫るが、惜しくもノックフォワード。PR谷口祐一郎を西和磨に入替。
後半14分[BR東京]
相模原DBはスクラムからNO8が持ち出し、後ろに下げキック。これをLO山本嶺二郎がチャージ。こぼれ球をFLリアム・ギルがはたき、CTB池田悠希がキャリー。トライライン間近のラックから左へ。走り込んだPR西和磨が寄せるDFを押しのけトライ。CVも成功、23-19と逆転。
後半18分[相模原DB]
キックキャッチから攻めるBR東京。FBアイザック・ルーカスに高いタックル。映像判定を経て、LOエピネリ・ウルイヴァイティの肩が顔に当たっていたとしてイエローカード。
後半22分[BR東京]
ハーフウェイ付近でBR東京のラインアウト。やや乱れたが、SH TJ・ペレナラがボールを確保し、密集を抜けビッグゲイン。ゴール目前で捕まり左タッチラインの外に押し出されたが、肩が顔に当たっていたとしてSOチャーリー・ティトコムにイエローカード。15人対13人に。
後半23分[BR東京]
8人対7人で組んだ左隅の5mスクラムを猛烈に押し込み、アドバンテージが出たところでNO8サミュエラ・ワカヴァカが広い側のスクラムサイドを突きトライ。CVも成功、30-19。
後半27分[相模原DB]
相模原DBはハーフウェイ付近からハイパントを上げ、22mライン手前でCTBハニテリ・ヴァイレアが再獲得。ここから勢いに乗って攻め、SOの位置に入っていたWTBマット・ヴァエガが突破し左隅ゴール前へ。右につくったポイントから戻し、CTBルカニョ・アムが左隅にトライ。ヴァエガが蹴ったCVは不成功。30-24に。
後半28分[BR東京]
HO大西将史を李淳弘に、LOマイケル・アラダイスをフィリックス・カラプに、FLマクカランブロディを山本秀に入替。
後半29分[相模原DB]
一時退出のLOエピネリ・ウルイヴァイティが戻る。
後半32分[相模原DB]
一時退出のSOチャーリー・ティトコムが戻る。
後半35分[BR東京]
相模原DBにハイパントの再獲得を許し、さらにスクラムからのアタックでゴール前まで攻め込まれる。ここでLOフィリックス・カラプがLOエピネリ・ウルイヴァイティを倒し、FLリアム・ギルがボールに仕掛ける。これをはがしにきた相模原DBのFLジャクソン・ヘモポの手が首にかかりペナルティ。
後半42分[BR東京]
ホーンが鳴る中、HO李淳弘が低いタックルでFL吉田杏を倒す。ここもFLリアム・ギルが手を伸ばしスティール。左サイド、30m強のPGをSO中楠一期が成功。33-24と点差を拡げノーサイド。
記者会見
まずは、結果が自分たちにとって大事だったので、ここで勝利を収められたのは本当にハッピーです。本当にタフな勝利でした。前半は相手の方が上回っていましたし、後半もレスリングのような揉み合うような感じになりましたが、イエローカードやペナルティで自分たちに生まれたチャンスを選手たちがしっかり活かしてくれたかなと。80分間、最後まで戦い続けてくれたことも大きかったと思います。セカンドブロックの最後の試合(2度目の休止週の前の試合)の勝利は、(プレーオフ出場という)自分たちの目標に向かっていくために、本当に大事なものでした。
あとは若いスノン(HO李淳弘)がファーストゲーム。新人選手が出るにはタフな試合で、コンディションもタフだったと思うのですが、よかったのではないかと思います。あとは私たちの10番、一期(SO中楠一期)も完璧なキックスコアをしてくれて、最終的なスコアに差をもたらしました。大事な役割を果たしてくれました。
TJ・ペレナラ
この結果を本当に嬉しく思います。全てがプラン通りかと言ったらそうではなく、イメージしていたかたちとは違う勝ち方でしたが、ラグビーはそういうこともあるので。ゲームプランは自分たちの思っていたレベルで実行しきれなかったんですが、それでも勝つ方法を見出せたことはよかったと思います。HO李がファーストゲームできたっていうのもよかったですね。残り10分くらいで出場したんですかね?(「15分だね」とマットソンHC)6点差で、手強いラインアウトをしてくる相手。よくやってくれたと思います。そのエフォートも称えたいなと。
タブス(マットソンHC)からもありましたが、順位表、自分たちが目指すシーズンの目標を考えたときにも、すごく大事な勝利だったと思います。こういうタフなゲームを勝ち切れるかどうかというのはすごく大事。目標を達成できるかどうかの差になってくると思うので。また、ポイントとなる部分をレビューしたりして、あとは数日間休んで、ブロック3に向けて準備していきたいと思います。
——これで3勝目だが、どの試合も後半に逆転して勝っている。後半に逆転できている要因は
TJ・ペレナラ:後半に巻き返せたゲームは、相手が見せてくれた絵に対して、自分たちはどこで攻撃したらダメージを与えられるかっていうのが拾えているのかなと。他の試合でも伝えてきたんですが、コーチからのいい指摘やいいメッセージは大きいです。相手のディフェンスやアタックのかたちについてのアドバイスだったり、それに対してどう実行すべきかを伝えてもらえると、選手としても自信を持ってプレーできるので。もちろん選手がシステムを信じてハードワークをしてひっくり返してきたんですけど、コーチングに助けられた部分も大きいと思ってます。
——劣勢のときにどんな声をかけているか
TJ・ペレナラ:どういう状況かにもよりますけど、他にもいるリーダーたちが声を挙げてくれます。今日も後半に少しプレッシャーを感じているときに、PRのパディー(・ライアン)が「押せるから、スクラムでいかせてくれ」とリーダーシップを見せてくれました。ほかにも、僕が少し追い風を意識して「ロングキックを使っていこうか」と思っていたときに(SO中楠)一期が「空中戦は勝てているから」と意見してくれて、それを採用してコンテストキックを蹴り、少しプレッシャーをかけることができた場面もありました。最後の意思決定はキャプテンの僕がするんですが、そうやって助けてくれるリーダーたちがいるんです。
——ゲームプランとパフォーマンスの間で最も大きなズレはどこにあると考えているのか
マットソンHC:明らかなのは、ラインアウトのエクスキューション(実行)でしょうね。結構、リハーサルもしてるので、ラインアウトからのプレーは。ラインアウトがうまくいくかどうかの要因はいろいろとあると思うんですけど、今はそこまでうまくいってない。そこが一番大きいですかね。ラインアウトからいいアタックが仕掛けられていない。
ただ、ボールを持ったときには、マルチフェーズとか他のアタックソースから相手にプレッシャーをかけられてると思います。今日もボールをワイドに動かそうとしてミスが出た場面はあったんですけど、ヘッドコーチとしてはそういう姿勢はポジティブなものだと思っています。重要なのはコネクションやタイミングをよりよくすること。そういった練習を今後もやっていきたい。
ラインアウトは次の対戦相手、パナソニック(埼玉パナソニックワイルドナイツ/埼玉WK)に対しても重要なポイントになってくると思います。成功率を85%から90%にしたい。数少ないチャンスになってくると思いますが、そこでコネクトしていかなきゃいけない。でも、それは絶対にできる。ブロック1、ブロック2と試合を重ねてきて、成長のタイミングに入ってきていると思います。
——ラインアウトからのアタックが安定したものになれば、得点がもう少し取れるはずだというイメージか
マットソンHC:スコアすることもそうですが、ハーフタイムのときにビハインドになっているのは、アタックをしている場面でターンオーバーされてスコアされてしまうケースが多いから。自分たちのアタックがもっと効果的で効率のよいものになれば、チャンスを相手に渡すことが減り、チャンスでスコアにする力も上がる。トライや得点は増えると思っています。
——イエローカードで1人少ない状況で後半に入り、入りのところで先にスコアできたのは非常に大きかった。どういう意思統一をして臨んだか
TJ・ペレナラ:あまり言いたくないですけど、13人だったり14人だったりっていう状況でプレーすることが今まであったので。もちろん今後は続けたくはないんですが、答えは持ってるのかなと。誰かが一時退出になったとき、BKは余った選手がエッジからエッジにがちゃんと移動して人数を増やす。ラック後のFWも、通常よりも多めに動かないといけない。カバーしなきゃいけない仕事が増えることは、みんなが理解していると思います。時間を進める意識なども当然ありますが、インプレーのときは、みんなそういったことを注意してプレーしていると思います。
次節は今季初の駒沢へ
昨季は埼玉WKとは2度戦い、1月(第3節)は16-39(前半9-17)、4月(第16節)の21-27(前半7-17)と未勝利ながら、第16節は後半40分まで3点差と接戦を演じた。強者である埼玉WKに誰一人臆せず、強気に80分間を戦い抜き、逆転でのプレーオフに望みを繋ぐ勝ち点をもぎとった。前半のSOとして先発した伊藤耕太郎がステップでディフェンスを翻弄して奪ったトライ、後半のSH TJ・ペレナラのFWかのようなゴール前の強烈なキャリーで奪った2つのトライなどは、強く記憶に刻まれるものだった。
新体制のもとでさらに強みを磨いている埼玉WKに対し、マットソンHCはラインアウトの精度をポイントに挙げる。ラインアウトから効果的なアタックをし続けることは、相手の得意とするターンオーバーの機会を潰していくことでもある。矛と盾のぶつかり合いを制し、シーズン中盤の戦いにうねりを起こすような勝利を期待したい。
この日は「ラグビーフェスティバル ~世田谷区×ブラックラムズデー」を同時開催。「駒沢ホスト3連戦3万人」にむけて、ぜひ多くの方にお越しいただきたい。
文:秋山健一郎、ブラックラムズ東京
写真:川本聖哉、ブラックラムズ東京
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