"キャップ"という名の経験値

静岡ブルーレヴズ
チーム・協会
気象庁のデータでは、25日の磐田市の最高気温は7.7度。最大風速は10.3m。

風速1mにつき体感温度は1℃下がるから、この日のヤマハスタジアムは氷点下の寒さだったことになる。

ゴールポストは強風を受けてゆらゆら揺れていた。
バックスタンド最上部に掲げられたリーグとチームのフラッグは絶えず風を受け、ちぎれそうなほど、バタバタと音を立て続けた。

そのコンディションでも、スタジアムには大勢のファンが集結してくれた。

もちろん、グリーンのウェアを着込んだヴェルブリッツのサポーターも大勢来てくれた。それはもちろん嬉しい。

そしてそれに数倍する、青いウェアを着込んだレヴニスタがスタンドに詰めかけてくれた。

観客数は前節の7,513人を大きく上回る8,368人。
1年で一番寒い季節に、それだけのファンがレヴズの試合を応援に来てくれる。

100th capの男

その喜びを、レヴズ戦士たちはトライラッシュで示した。

前節に続き7トライを奪い、43-19の大勝。

開幕戦以来のボーナス点込み「勝ち点5」を獲得し、プレーオフ圏のリーグ6位に浮上だ。

トライショーの幕をあげたのは開幕戦以来5試合ぶりの出場、この試合でトップリーグ&リーグワン通算100キャップとなった伊藤平一郎だ。

自らの節目にメモリアルトライで花を添えた伊藤平一郎 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

開始6分、ゴール前ラインアウトからの二次攻撃、外側に走り込んで、FLマルジーン・イラウアからのパスを受けてゴールポストの真下に飛び込んだ。100キャップを自ら祝うメモリアルトライ。

「ジーン(イラウア)のおかげですが、自分でもびっくりしました。ヤマハ時代から、(トップリーグ・リーグ戦以外も含めれば)100何試合出ていますが、トライはこれで3つめですから。先制トライは初めてです」
伊藤はこの日の試合後、プレーヤー・オブ・ザ・マッチとして表彰された。

選出の決め手はこのトライだけではない。

レヴズの看板であり最大の武器であるスクラムは、この日、PR陣最年長35歳のベテラン伊藤がタイトヘッドの3番に加わったことでさらに破壊力を高めた。

前半22分、ヴェルブリッツが反撃に出ようとするスクラムで逆にコラプシングを奪取。
ショーン・ヴェーテー、稲場巧という若い3番が台頭する中、ベテラン健在を見せつけた。

「3番だけでなく1番の山下、河田、茂原、HOの作田…1列のみんなでスクラムを作っているところです。若手が育ってきて、良い競争ができていますね。僕自身もプレーで示していかないといけない。気が付いたことはアドバイスもしますが、基本はやってみせること。スクラムを体現することですね」

作田、ヴェーテーら若手フロントローも経験値を積み上げている 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

1st capの男

競争が激化しているのはFW第1列だけではない。

この日、LO4で先発、レヴズデビューを飾ったダニエル・マイアヴァは今季新加入した22歳。

先発予定だったジャスティン・サングスターが体調を崩し、初先発のチャンスを得ると、11分には見事なキャリーからのオフロードパスでLOマリー・ダグラスのトライをアシスト。ディフェンスでは自陣ゴール前で相手のトライチャンスを防ぐ爆弾タックルを連発してみせた。

「レヴズでプレー出来て光栄です。コーチ陣が自分を信じて試合に起用してくれたことが嬉しいし、勝てたことが嬉しい。今日はアタックのキャリーよりもタックルで自分の力を証明しようと思って試合に臨んで、それができて良かった」

藤井雄一郎監督はマイアヴァについて「スピードがあってラインアウトも上手。パスのスキルもあるし、低いタックルができる。ラインアウトのサインも完璧に覚えている。どこかで(試合に)出したいと思っていたんです。若い選手をコーチングして育てるのは自分たちの財産にもなる」と、評価と起用理由を説明した。

1st capで実力を見せたダニエル・マイアヴァ 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

マイアヴァは10月に草薙で行われたリーグワンライジング初戦のシャトルズ戦でも先発。

そのときの活躍ぶりからすればもっと早くデビューしてもおかしくなかったようにも思えるが、熾烈なチーム内競争が、デビューへのハードルを高くしている。

この日No8で先発したリッチモンド・トンガタマは2022年の入団以来HOでプレーしてきたが、今季は大学(帝京大)時代の古巣・No8と兼任。

この日はリザーブから出場したベテラン大戸裕矢、この日は欠場したジャスティン・サングスターはLOとFL、主将のクワッガ・スミスとマルジーン・イラウアはFLとNo8を兼任して出番に備える。

競争がチーム力の総和を大きくする

藤井雄一郎監督の采配も競争をあおっている。

6節を終えて、ここまでレヴズの公式戦に出場した選手は38人。

これは、昨季の全19試合で起用した選手の37人を上回っている。

今季のリーグワンを見渡すと、6節まで唯一全勝のワイルドナイツは33人、1敗で続くスピアーズは32人、スティーラーズは32人、そしてブレイブルーパスは30人。

ブルーレヴズの多さは際立つ。

チームのタクトを振る藤井雄一郎監督 【Photo by SHIZUOKA Bluerevs/Yuuri Tanimoto】

リーグワンは半年がかりの長期戦だ。
開幕時点の戦力そのままでシーズンを戦い抜くわけではない。

シーズンを通してどれだけ多くの選手がどれだけ大きく成長し、チーム力の総和を大きくするかが最後の勝負を決める。

それは昨季初めて足を踏み入れたプレーオフの場で学んだことだ。

そして多くの選手が試合に出ていることは、そのまま伸びしろを意味するはずだ。

リーグワンは三分の一が終わったところ。

まだ出番を掴めていない選手もいる。
アーリーエントリーの選手も加わってくる。

春を越え、夏のファイナルを迎えるころ、レヴズはどんなチームになっているか考えただけでワクワクしてくる――次のバイウィークは、そんな想像をめぐらして過ごすとしようか。

(大友信彦|静岡ブルーレヴズ公式ライター)

【(C)SHIZUOKA BlueRevs】

大友 信彦(おおとも のぶひこ)
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。
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著者プロフィール

JAPAN RUGBY LEAGUE ONEに参戦している静岡ブルーレヴズ(旧:ヤマハ発動機ジュビロ)の公式アカウントです。 「静岡ブルーレヴズ/SHIZUOKA BlueRevs 」というチーム名には、変わらない為に変わり続ける、伝統を受け継ぎ、なお「革新」を恐れない精神を象徴する “Blue” と、困難な目標にワクワクして挑み、高ぶる「情熱」を象徴する “Revs”が、一体として込められています。また、ホストエリアとなる「静岡」に貢献し、愛されるチームとなるべくその名を冠しています。 いままでヤマハ発動機ジュビロとして築き上げてきた伝統や技を活かしながらも、新たな挑戦とともに静岡から、心躍る最高の感動を世界へと届けていきます。 静岡ブルーレヴズの活躍にぜひご注目ください。

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