刻まれた記録と焼き付けた記憶…そして勝利
チームの思いは、会見の藤井 雄一郎監督の言葉に集約されるだろう。
「たくさんの人に応援してもらいながらホームで2回敗けてしまって、申し訳ない思いでいっぱいだったんで、今日は1点差でも良いから勝ちたかった」
今季はホームでBL東京に22-36、浦安DRに21-34と敗れていた。
望んだ結果はなかなか得られていない。
だがそんなときでも、スタジアムを埋めたレヴニスタたちは必死に声を枯らし、青いジャージーに勇気を与え続けてくれた。その思いに応えたい。
しかもチームは開幕戦勝利の後、3連敗を喫していた。
プレーオフ進出そしてリーグワン初タイトルを目指すチームが、昨季よりも後退するわけにはいかない。
そんなチーム状況にあっても、レヴズはチャレンジャーであり続けた。
SOには公式戦初先発となるルーキー筒口 允之(まこと)を抜擢。
ハーフバックのペアを組むSHには昨季の第3節以来の背番号9となる岡﨑 航大が入った。
右WTBには昨季第10節以来となる矢富 洋則が入り、前節はリザーブに回ったCTBシルビアン・マフーザも先発に戻った。
チームが結果を出せていないときには何か変化が求められるが、変えすぎてしまうとそこまでの積み重ねの否定に見えかねない。
試合に出ていたメンバーとノンメンバー、どちらについてもそれまでの歩みを否定せず、チームの活性化を求める。
絶妙なメンバリングだ。
今季初先発のピッチに立った3人
初めてブルーの背番号10を背負った筒口は、遠州名物の強風の中で強く長いキックを繰り出してチームを前に出した。
長崎ラグビースクールの先輩にあたる岡﨑 航大は久々の先発ながら落ち着いたパスさばきでルーキーをアシストした。
同じく久々先発の矢富 洋則は思い切ったカウンターアタックで意欲的にゲインを狙った。
それぞれが、チームに加えたいと思っていたことを自身のパフォーマンスで表現した。
開始10分、自陣ゴール前に攻め込まれた場面で、苦しい体勢で相手SHウェバーを止めようとしたマフーザがヘッドコンタクトの反則、イエローカードを課され、さらにレッドカードにアップグレード。
合計20分間にわたって1人少ない14人での戦いを強いられた。
強い風は試合中も向きを変え、前半も後半も風下基調での戦いとなった。
それでも、不安要素や未確定要素を吹き飛ばす勢いがこの日の青ジャージーにはあった。
それを生み出していたのはバックスに並んだ二人の重量級ランナー、いわば2台の大型スーパーバイクだ。
相変わらずの強烈なインパクトの2人
開始4分、相手ゴール前のスクラムから出たボールを持つ。
相手タックルが飛んできても、190cm110kgのスーパーバイクは止まらない。
強烈なトルクで足を動かし、強引にかつ柔らかい独特のボディコントロールとステップワークで前へ前へと突き進み、トライラインにボールをたたきつけた。
磐田市の全市応援企画で訪れた中学生たちが見守る南側バックスタンド目の前で見せたスリリングでパワフルな先制スーパートライ。
WTBのヴァレンス・テファレだ。
20ー22で折り返した後半10分、自陣ゴール前のターンオーバーからラドラドラが仕掛けたカウンターアタックにすぐさま反応して左エッジでボールを受けると、豪快にタッチライン沿いを突破。相手タックラーを引き寄せて内をサポートした筒口に鮮やかなパスを送って、ルーキーにリーグワン初トライをプレゼント。
だけど人にトライさせるだけじゃ収まらないのがこのスーパーバイクだ。
20分にはハーフウェー付近のターンオーバーからラドラドラのラストパスを受け、トライラインまで約30mを爆走。
ラストプレーの41分には相手落球を拾ったチャールズ・ピウタウのオフロードパスを受けると、182cm112㎏の巨体を一瞬でトップスピードに乗せて45mを走り抜け、スタンドに向かって両手を掲げ、オートバイのスロットルを回すパフォーマンスで盛り上げてみせた。
節目を刻んだベテランと新鋭の2人
8人で固めるスクラムはこの日も強く頼もしかったし、レヴズ50キャップの節目を祝って先頭で入場したLOマリー・ダグラスはこの日も献身的なハードワークを重ねた。
前半36分には相手キックオフを直接捕ったLOジャスティン・サングスターからラドラドラー日野 剛志-奥村翔とつないだキックオフリターンを超速サポートしてゴールポスト真下にメモリアルトライまで決めてみせた。
ブルーレヴズでは歴代最年少、リーグワンD1全体でも歴代6位の年少デビュー記録であり、フロントローでは最年少記録だ。
ベテランと新鋭がそれぞれの持ち味を発揮し合った。
14人での戦いとなった20分間も粘り強く、コミュニケーションを密にとり、反則をせずに守り抜いた。
シーズンはまだ序盤だが、これでカンファレンスAの総当たり1巡目は終了だ。
プレーオフ圏の6位まで勝ち点は2差。
追撃態勢は整った。
次節からはカンファレンスBの6チームとの交流戦だ。
第8節では首位を走るスピアーズを初めてヤマスタに迎え、今季好調のスティーラーズとは、第7節に神戸ユニバーで、第13節にはIAIスタジアム日本平で戦う。ヴェルブリッツとの東海ダービーも第6節のヤマスタ、第12節の瑞穂と2度のバトルが待つ
――そんな正念場の戦いを前に、昨季の躍進の主役が復調し、今季加入の新戦力が躍動した。
役者が出そろった。
2026年版レヴズの真価発揮はここからだ。
(大友信彦|静岡ブルーレヴズ公式ライター)
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。
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