【箱根駅伝】 12年ぶりのシード復活、箱根路で見せた“古櫻”の意地 〜日大プレイバック(1) 躍動の往路

日本大学SPORTS
チーム・協会

【共同通信社】

2026年1月2日(金)・3日(土)に行われた第102回東京箱根間往復駅伝競走(箱根駅伝)。3年連続92回目の出場を果たした日本大学陸上競技部特別長距離部門は、チーム一丸の“総合力”で総合10位に入り、12年ぶりとなるシード権をつかみ取った。その流れを作ったのは、間違いなく往路を走った5人の精鋭たち。それぞれの役割を果たし、復路への期待を膨らませた選手たちに、レースを振り返ってもらった。

ハイペースの中で苦しい出だしとなった1区(21.3km)

号砲とともにスタートを切った選手たち 【共同通信社】

午前8時、快晴の大手町を21人のランナーが一斉に箱根に向けて駆け出した。11月の全日本大学駅伝に続いてスターターを託された山口ツインズの兄・山口彰太選手(スポーツ科3・佐野日大)は、序盤からハイペースを刻む先頭集団を追いかける第2集団の中で、必死に喰らいついていた。一度は19人が縦長の集団となったが、11kmを過ぎたあたりから徐々に集団が崩れ始め、後方を走っていた彰太選手もペースについていけなくなり、分裂した第2集団との差も広がってしまう。だが、前後との間隔が空いて単独走になってからは、粘りの走りで懸命に前を追い、そのままトップと1分41秒差の17位で鶴見中継所に飛び込んで、待ち受けるキップケメイ選手にタスキを手渡した。

レース後、「1つ前の集団の中で勝負したかった」と振り返った彰太選手の顔に笑みはなく、「大事なスタートのところで前と離れてしまい、シャドラックには難しい位置でタスキを渡すことになってしまい、悔しかったです」と言葉を絞り出した。
しかし、彰太選手が走り切った1時間2分8秒のタイムは、前回大会の区間2位の記録(1時間2分39秒)を大きく上回っていた。それでも1時間0分28秒の区間新をはじめ0分台が8人もいたことが、今年の1区がいかに高速展開だったかを物語っている。

鶴見中継所で1区・山口彰太選手(左)から2区・キップケメイ選手(右)へのタスキリレー 【写真/月刊陸上競技】

2区(23.1km)でエースが本領発揮、一気に9位に浮上

3年連続で2区を任されたシャドラック キップケメイ選手(文理3・イリギタティ/ケニア)は、タスキを受け取ると彰太選手の肩をポンと叩いて労い、駆け出した。前を走る16位・青山学院大との差は21秒。前回大会は、体調が万全ではない中でも5人抜きでチームを13位へと押し上げたが、区間記録は14位に終わり、悔しさを滲ませていた。今回はこの位置からどこまで押し上げられるのか、その走りにチームの命運が掛かる。
大きなストライドで快調にピッチを刻むキップケメイ選手は、まず5.6km過ぎに青山学院大・大東文化大・東海大の集団を一気に抜き去って14位に浮上。さらに11km過ぎの保土ヶ谷駅手前で後退してきた東洋大を捉えて13位に上がると、2区の難所・権太坂で創価大・ムチーニ選手の前に出た。10位グループの神奈川大と日体大に加えて18km付近で東農大も捉えると、19.4kmでは中央学院大を交わして8位に浮上。この時点で鶴見中継所から学生連合の選手を含めて10人抜きを達成した。
最後は、戸塚中継所まで続く3kmの厳しいアップダウン。一時は並走してきた創価大・東農大とともに前を行く順天堂大を追い抜いたが、ラストスパートで伸びを欠いて僅差の9位でのタスキリレーとなった。

2区・キップケメイ選手は17位からの8人抜きでチームをシード圏内の9位に押し上げた 【写真/月刊陸上競技】

「今回は体調も良く、いい走りができました」と満足そうな表情を見せたキップケメイ選手。過去2回苦しめられてきた“戸塚の壁”も「全然苦しくなかった」と言い、「もうちょっと頑張れば(上位に)いけそうでした」と残念がった。狙っていた区間賞は、区間新記録を出した城西大・キムタイ選手に譲ったが、2区の日大記録を36秒更新する1時間5分42秒のタイムで堂々の区間2位。3度目の箱根路でその実力を存分に見せつけ、チームに勢いをもたらす見事な走りに、応援する誰もが「さぁ、ここから」と思ったに違いない。

2度目の3区(21.4km)で雪辱、自らの力を証明する好走

昨年に続いて当日変更での出走となった冨田悠晟選手(法4・草津東)が、トップ城西大とは1分50秒差で戸塚中継所を飛び出していった。序盤は前を行く7位グループの創価大と順天堂大を単独走で追いかけていたが、藤沢市内に入った7km手前で、戸塚中継所11位から巻き返しを図る青山学院大の宇多川選手が追いつき、冨田選手の前に出た。しかし、ここで離されることなく、宇田川選手にピタリとついて前を目指していった。
「青学の選手と並走するというところで自分の中では緊張がすごくありました」というものの、“日本人エース”としての自負と、体調不良も相まって3区20位に沈んだ前回大会の雪辱を果たしたいという強い思いが、確かな力になったと言えよう。そこから藤沢、茅ヶ崎のポイントを経て海沿いの国道134号線を約10km並走、途中からは追いついてきた東農大と3校で懸命に前を追った。残り4kmほどとなった湘南大橋の上で、8位を走る山梨学院大に追いついたが、そこから一気に加速した宇多川選手の背中は次第に遠のいていった。それでも、最後の力を振り絞って飛び込んだ平塚中継所では、東農大に続いて10位でタスキをつないだ。

1つ順位は落としたが、昨年のタイムを2分半も縮める1時間2分30秒、青山学院大の主力としっかり渡り合っての区間14位という結果に、充実した表情を浮かべレースを振り返った冨田選手。「調子はここ2・3日でググッと上がってきていたんですが」と言いつつも、「実は1週間前に胃腸炎になってしまって…」と、まさかの告白。「正直、走らせてもらえないんじゃないかと思いましたが、監督から『いけるだろうっ』と言ってもらえたし、チームのみんなからも『日大の3区は冨田だろう』とか『これだけ走ってきた選手が、走れないわけがない』って言ってもらって…」と、感無量な様子でその時を語り、「とても不安でしたが、仲間たちに背中を押されて箱根路を走って、しっかり結果につながったことがすごくうれしい。この4年間、自分がやってきたことで、駅伝のエース区間でも戦えることを証明できた」と笑顔を見せた。

3区・冨田選手(左)は10位で平塚中継所に入り、4区・片桐選手(右)へタスキを託した 【写真/月刊陸上競技】

粘りの単独走で4区(20.9km)もシード圏内をキープ

「どこの区間を走ることになっても、チームに勢いをつける走りをしたい」と語っていた片桐禅太選手(法3・中越)の箱根デビューは、往路終盤に向けて重要な4区だった。
9位・東農大とは4秒差でタスキを受け取ると、小刻みなアップダウンを繰り返しながら10の橋を渡るコースで終始単独走を展開。ペースを掴むことが難しいと言われる中でも、「とにかく前をしっかり追おうと思っていました」と、淡々と粘りの走りを見せた。
8.9km地点の二宮のポイントで前との差は26秒。タイム差はあまりわかっていなかったというが、「15 kmの酒匂橋を過ぎてからが勝負だと思っていたので、それまでは余裕を持って行って、橋のところから勝負をかけてペースを上げていくような走りをしました」。その言葉通り、酒匂橋のポイントで32秒あった東農大との差を、残り5kmでペースアップし、「最後の上り坂で近づくことができたので良かった」と小田原中継所では11秒差に詰め寄った。

調子の良さを買われての起用に、1時間2分41秒という4区の日大記録を更新する結果で応えるとともに、シード権争いに踏みとどまる貴重なつなぎ役を見事に果たした片桐選手。「今の段階で自分の持っている力をしっかり出せたと思いますが、タイムは区間14番目ですし、往路で上位と勝負していくにはまだ力が足りないと感じました」と冷静だ。高校の先輩である鈴木選手へのタスキリレーについて訊ねると、「お願いします!と言って渡しました」と笑みを浮かべた。

4区・片桐選手は日大記録を更新する快走で、高校の先輩である鈴木選手にタスキをつないだ 【日本大学】

5区(20.8km)の山登りで9位へ、そして芦ノ湖フィニッシュ

2年連続2度目の山登りを任された鈴木孔士選手(法4・中越)が、先頭から5分33秒差の10番目で小田原中継所を駆け出した時、前を行く東農大との差は11秒。「片桐が本当に頑張ってくれたので、自分も頑張らなきゃなっていう気持ちと、東農大を抜くことだけは心に決めていた」と、僅差でタスキを渡してくれた後輩の期待に応えるため、緑色の背中を追い続けた。
「ずっと見える位置にいたので、ここは勝負に行かないといけないと思った」と3.5km地点の函嶺洞門のポイント手前で追いつくと、そのまま前に出て引き離していった。さらに「勾配が急になる塔ノ沢からの4〜5kmをどう攻略するかがポイント」と、夏合宿時からイメージしていた山登りでもこの1年間の成果を発揮。「夏以降、練習していく中で山の攻略法など変えた部分もありますが、大方のところ考えていたような走りができました」と、大平台(7km地点)のポイントでは前回大会より36秒速いタイムを記録し、追いすがる東農大に25秒の差をつけた。その後も、やや苦しげな顔を見せつつも小涌園前、芦之湯の定点ポイントでは前回大会を上回るラップを記録し、8位を走る創価大を懸命に追いかけた。

「20km余りを走って行く中で、至るところで大学の友だちや高校の監督・コーチ、中学時代の顧問の先生や後輩など、たくさんの方々が沿道から応援してくれて本当にありがたかった。きついところも多かったのですが、皆さんの応援のおかげで頑張れました」と、感謝の言葉を口にした鈴木選手。創価大との差を詰めることはできなかったが、芦ノ湖のフィニッシュ地点では総合9位で堂々ゴールテープを切り、往路を走り終えた仲間たちに迎えられて安堵の表情を浮かべた。
区間15位に終わった前回から1分以上縮め、区間9位のタイム(1時間11分59秒)で自らの日大記録も更新した鈴木選手は、「去年は申し訳ないというような気持ちでゴールしましたが、今年は晴れやかな気持ちでテープを切れました」と、最後の箱根駅伝で味わう達成感に笑顔を輝かせた。

5区・鈴木選手は区間9位の力走を見せ、シード権内で復路にタスキをつないだ 【共同通信社】

チーム史上の往路最高タイム(5時間25分00秒)で、第93回大会以来9年ぶりの一桁順位に入った往路。前回最下位からの大躍進で、今大会の目標である「シード権争いに絡む」には絶好のポジションを得た。そして迎えた復路のレースでも、手に汗握るドラマが待っていた。

※リンク先は外部サイトの場合があります

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

日本大学は「日本大学競技スポーツ宣言」を競技部活動の根幹に据え,競技部に関わる者が行動規範を遵守し,活動を通じた人間形成の場を提供してきました。 今後も引き続き,日本オリンピック委員会を始めとする各中央競技団体と連携を図り,学生アスリートとともに本学の競技スポーツの発展に向けて積極的なコミュニケーションおよび情報共有,指導体制の見直しおよび向上を目的とした研修会の実施,学生の生活・健康・就学面のサポート強化,地域やスポーツ界等の社会への貢献を行っていきます

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント