【神戸S/Beyond the Spotlight】 リクルート 松井 祥寛
自分がかかわった選手がフィールドに立って日本一に貢献してほしい
大阪市出身。大阪桐蔭高校から近畿大学へ。神戸製鋼コベルコスティーラーズ(当時)で8年間プレーし、退団後は大阪桐蔭高校でコーチを務め、2012年から2シーズン、コベルコスティーラーズでアナリストとしてチームを支えた。2014年からは近畿大学でコーチやヘッドコーチとして指導に携わり、2021-2022シーズン、コベルコ神戸スティーラーズのリクルートに就任。以来、神戸Sの未来を担う選手を見つけ出すべく全国を飛び回る。そんな松井スタッフに2026年度新加入選手の魅力やリクルートとしてのモットーなどを聞いた。(取材日:12月17日)
即戦力として期待大!2026年度新加入選手
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――BKはどうでしょうか。
「CTB大町 佳生(長崎北陽台高校→帝京大学)は、スキルが高くて、ゲームコントロールがうまい選手です。試合を見ていても常に良いところにポジショニングし、チャンスを作っています。体は決して大きくないですが、リーダーシップがあり、ラグビーに取り組む姿勢も素晴らしいですし、今後が楽しみな選手です。FB/SO上ノ坊 駿介(石見智翠館高校→天理大学)は、2025年度入団の植田 和磨同様に多くのチームからオファーを受けていた逸材です。兄(上ノ坊 悠馬)がクボタスピアーズ船橋・東京ベイに所属しているのですが、兵庫県三田市出身ということもあり、彼自身は地元のチームということで入団を決めてくれて嬉しかったですね。彼はパス、ラン、キックができるオールラウンダーです。そういう選手はディフェンスが得意でないことが多いのですが、上ノ坊はタックルもガツガツいきます。すべてを兼ね備えた選手で即戦力として活躍が期待されています。どの選手も魅力的なので、スティールメイツにぜひ応援してほしいですね」
――昨シーズンは多くのアーリーエントリーの選手が活躍しました。今シーズンも楽しみですね。ところで、松井スタッフが2021-22シーズンからリクルートに就任することになった経緯とは。
「近畿大学での契約が終了し、これまでお世話になった方々に挨拶をしていた時に、当時神戸Sのリクルートだった平田(貴博)さんに連絡しました。すると『リクルートに興味がないか?』と声をかけられて。平田さんはリーグワン発足を機にラグビーセンターの営業マーケティンググループ(現・事業運営グループ)のグループ長を務めることになっており、後任を探されていた時期でした。リクルートは初めての経験でしたが、大学のコーチをしていて、各チームのリクルーターと話をする機会がありましたし、仕事の流れはだいたい掴んでいました。好きなラグビーに携われることもあり喜んで引き受けることにしました」
――藤 高之チームマネージャーはリクルートも兼任されています。どのように役割を分担されているのでしょうか。
「関西、関東で試合が同日に開催される場合はそれぞれ分かれて視察に行くなど、お互いに補完しながら対応しています。藤さんにはリクルートとして活動するにあたり、いろいろなサポートをしていただいて感謝しています。また、選手が会社見学に来社した際の社内案内や説明については、平田さん、橋本(大輝)くんがサポートしてくださっており、大変助かっています」
コーチの経験を活かしながら、リクルートとして活動
「チームの将来的な戦力・人材構成を見据えて、どのポジション・タイプの選手が必要かを分析することからはじまります。その後、各大学の視察を行い、選手のプレーや身体能力などを観察、また映像・データ分析を活用し、候補選手の評価を蓄積、指導者・関係者とのネットワークを通じて情報を収集していきます。その上で、選手とコンタクトを取り、チームの魅力・方針・育成環境などを丁寧に伝え、本人のキャリアビジョンに寄り添った提案を行い、関係を構築していきます。そして選手の選考、選手を受け入れるスケジュールおよび練習参加の調整などを行っています」
――仕事内容と重複するとは思いますが、選手採用までの流れとは。
「流れとしては、まず全国の大学、高校を対象に試合や練習を視察し、プレーはもちろん、人間性・チーム内での立ち振る舞い・リーダーシップなどを総合的にチェックします。この段階ではチームに合う選手は誰かという視点を大切にしています。その後、有望な選手に対して接点を持つことになります。大学の監督、コーチを通じて、または直接学生本人と面談し、神戸Sというチームの特徴や方針を説明します。チームで候補選手の映像、試合内容、人物面を共有し、各ポジションの強化方針やチーム構成とのバランスを踏まえて検討。候補選手に神戸Sの練習に参加してもらって、実際の環境との相性を確認します。その時にはプレーだけでなく、チームのメンバーとのコミュニケーション、練習に取り組む姿勢などを現場で見極めます。最終的にすべての情報をもとに採用候補を絞り込んで、チーム方針、将来性、人格、そして本人の意志を総合的に判断し、内定を決定します。採用が決まってからも定期的に選手と連絡を取り合い、チームでの様子を聞くなど、生活面のサポートを行っています」
――プレーだけでなく、人間性やチーム内での立ち振る舞い、リーダーシップなどを総合的にチェックするとのことでしたが、プレー面で特に重視されているのは。
「試合や練習を見ていたら、良い選手というのはすぐにわかります。良い選手というのは、タックルやパス、ランなど、その選手が得意なプレーで試合の流れを変えることができます。あと、ひたむきに動き続けているかどうか。コーチをしていた時もそういう選手を起用したいと思いましたから、そこは重視します」
――大学でのコーチの経験をリクルートに活かすことはできるのでしょうか。
「学生の立場や気持ちを理解できることは大きいですね。彼らがどんなことに悩み、どんなタイミングで将来を考え始めるのかを現場で間近に見てきた経験があるので、アプローチするときの“距離感”や“伝え方”を意識できるようになりました。もう一つは、指導者の方々との信頼関係です。大学の現場で同じ立場として指導していたことで、各大学の監督やコーチとも率直に話ができる関係を築けています」
――それに大学の指導者には、神戸SのOBも多いですね。
「そうですね。知っている顔が多いことも強みではあります」
リクルートから見た神戸Sの魅力とは
「近年、学生がチームに求めているものは、単なる『強さ』や『ブランド』だけではなくなっているように思います。実際に多くの学生と接して感じるのは、『自分が成長できる環境かどうか』を一番大切にしているということです。それに日本代表を目指している選手も多い。入団したチームで活躍して日本代表に招集されることを目標として設定し、志の高さを感じます。植田 和磨も常に『将来は15人制の日本代表で活躍したいので、自分が成長できるチームに入団したいです』と言っていました。あとはチームの雰囲気を重視する傾向にあります。ファミリー感を求める選手も多いですね」
――ご自身が学生だった頃とは求めているものは違うのでしょうか。
「私の頃はチームの『強さ』や『ブランド』に魅力を感じ、入団したいチームがあり、声がかからなかった場合は自分からアプローチすることもありました。よく選手に『入団したいチームはないの?』と質問することがあるのですが、『特にない』という答えがほとんどです。リーグワンのチームであればどこでも構わないというスタンスで、オファーがあったチームの中から選ぶ傾向にあります」
――ちなみにリクルートから見た神戸Sの魅力というのは。
「選手に伝えているのは『人の温かさと、環境の良さが両立しているチーム』だということです。まず、選手・スタッフの距離が近く、雰囲気が非常に明るい。プロフェッショナルな環境でありながら、チーム全体に“ファミリー感”があるのが神戸の大きな特徴です。練習場やクラブハウスの環境も整っていて、選手が本気でラグビーに打ち込める条件がそろっています。また、『勝つこと』と『人として成長すること』の両方を大切にしているチームです。2023-24シーズンからのレニーHC体制以降は特に“どうすればチーム全体が一体となって戦えるか”という文化づくりが進んでおり、若手が遠慮せず意見を言える雰囲気も生まれています」
選手に対して誠実に向き合うことがモットー
「『謙虚でいなさい』。それは藤さんから言われていることですので、常に意識しています。それに加えて、私は選手と誠実に向き合うことを一番大切にしています。リクルートの仕事は、彼らの人生において大きな選択に関わる仕事です。だからこそ、言葉ひとつ、伝え方ひとつにも責任があると感じています。どんな時もチームの都合ではなく、選手にとって本当に良い選択は何かを一緒に考える、その姿勢を何よりも大事にしています。だから、選手が求めていることに対して、神戸Sはこうだよと包み隠さずに言いますし、別のチームから誘われているとしたら、神戸Sはこういうところが良いけれど、こういうところは、あっちのチームの方がいいよねと説明します。選手が求めているチームに進んでほしいという思いがあるので常に誠実に接するようにしています」
――先ほど採用までの流れを教えていただきましたが、1年のスケジュールというのは。
「大学は2月下旬から3月上旬にかけて新チームがスタートしますので、そのタイミングで各学校への挨拶回りを開始します。4月から大学の春シーズンがはじまりますから、オープン戦や新人リーグを視察し、8月に夏合宿、9月から関西・関東を中心にリーグ戦の視察をしながら、候補選手に対してアプローチをし、神戸Sの練習への参加を調整したりアテンドしたりしています」
――1年中ずっと動き続けているんですね。大変なことというのは。
「東京のホテル代が高騰していて、予約が取りづらいことでしょうか。特に週末は本当に高くて」
――現実的な悩みですね(笑)。
「大変だと思うことがなくて、もともとラグビーが好きですし、昔からプライベートでもずっと試合の映像を見ています。リクルートは非常にやりがいのある仕事ですし、あえて言うなら、大変というのではないですが、1年以上かけて選手との信頼関係を築いてきて、入団してくれると期待していた中で断られると精神的にかなり堪えます」
――藤チームマネージャーは失恋したような感覚だと言われていました。
「まさにそんな感じですね。最終的に電話で連絡が来るのですが、LINEに『今、お電話よろしいでしょうか?』とメッセージが来た時にはドキっとします」
“採る”だけでなく、育てるリクルートを目指す!
「やりがいは、自分が声をかけ、何度も対話を重ねてきた選手が『神戸Sでプレーしたい』と決めてくれた瞬間ですね。たくさんのチームから声がかかる中で、最後の最後で『神戸Sで』と言ってもらえた時は嬉しいですし、『この仕事をやっていて良かった』と心から思います」
――2021-22シーズンからリクルートとして活動してきて特に印象に残っていることというのはあるのでしょうか。
「昨シーズンの3位決定戦です。アーリーエントリーとして登録された7名のうち、5名が試合メンバーに名を連ねました。その姿を見た時は、本当に感動しました。彼らが一歩ずつ成長して、チームの力になっている姿を見られるのは、リクルートとして何よりの喜びです」
――2027年度はどんな選手が入団するのか、楽しみにしていますね。では最後に今後の目標をお願いします。
「選手が最初に出会うチーム関係者は、リクルートを担う私や藤さんです。その出会いの瞬間から、神戸Sというチームの魅力や温かさ、そして本気で強くなろうとしている姿勢を感じてもらえるように、一人ひとりに誠実に向き合いながら、丁寧に伝えていくことを大切にしていき、入団後も選手がチームで輝けるよう、“採る”だけでなく、育てるリクルートを目指したいと思っています。神戸Sを選んでくれた選手が、ここで人としても選手としても大きく成長し、将来の神戸Sを支える存在になっていく、そんな循環をつくることが目標です。自分がかかわった選手がフィールドに立って日本一に貢献してほしいですし、そういう選手を1人でも多く輩出できるよう頑張ります!」
取材・文/山本 暁子(チームライター)
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