新十両・一意関へ化粧まわし贈呈 “染まらない”を胸に、自分らしく強くなる

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【日本大学】

大学4年時の国民体育大会優勝など、学生時代に6つのタイトルを獲得した大相撲・木瀬部屋所属の一意(本名・川渕一意、2024年・文理学部卒)が、昨年11月場所で幕下全勝優勝を飾り、番付編成会議を経て新十両への昇進が決まった。その栄誉を讃え、本学から一意関へ十両以上の関取が着用を許される化粧まわしを贈ることになり、1月場所を2日後に控えた1月9日(金)、日本大学本部で贈呈式が行われた。
式後に、大学時代の思い出や入門後の日々、そして今場所に臨む心境などを聞いた。
(2026年1月取材)
贈呈式の冒頭、林真理子理事長が「新十両昇進おめでとうございます。相撲は世界でも大変な人気を博しているスポーツ。日本大学文理学部で培った教養をもって、世界に羽ばたいてください」と挨拶。大貫進一郎学長からは「本学で学ばれたことを生かして、後輩たち、また日本の国民の皆様に勇気を与えていただけるようなご活躍をお祈りしています」とエールが贈られ、一意関は大きく頷いた。
続いて、純白の前垂れに校章の刺繍をあしらった化粧まわしが贈られ、一意関は「素晴らしい化粧まわしをいただいて感無量です。これからも日本大学で培ったことを忘れずに精一杯努力して頑張ります」と感謝を述べた。その後は大学関係者との記念撮影などが行われて贈呈式は終了した。

教え子の晴れ姿を見守っていた木﨑孝之助相撲部監督は、「力は十分にあるので、ケガさえしなければすぐに(番付の)上の方に上がっていくと思う。2度大ケガを経験しているので、とにかくケガだけはしないように体と相談しながらやってもらいたい」と言い、「体は大きいけれど、結構フットワークがいい。話も面白いからファンが増えると思いますよ」と、今後の成長を楽しみにしていた。

林理事長、大貫学長に謝辞を述べる一意関。贈呈式後には「緊張して、考えてきた謝辞の言葉が飛んでしまいました」と苦笑いを浮かべていた。 【日本大学】

「プロになって一段と成長していると思うので、しっかり活躍してほしい」と、木﨑監督(右)も一意関の躍進に期待を寄せる 【日本大学】

関取になって初めて見えてくるものがあった

金沢学院高時代に全国高校選抜や世界ジュニア選手権など6冠に輝いた一意関は、日本大学相撲部で同期の草野直哉選手(現・義ノ富士関、伊勢ヶ濱部屋所属)とともに1年生の時からレギュラーとして活躍。2021年のインカレ団体戦では1年生ながら大将を務めて優勝、さらに2年時に負った左膝の大ケガを克服して臨んだ3年時のインカレでも、中堅として勝利を重ねて2年ぶり31回目の団体優勝に貢献した。
卒業後は、日大出身力士が多く所属する木瀬部屋に入門し、「一意虎風」の四股名で令和6年7月場所に幕下最下位格付けで初土俵を踏んだ。しかし、その場所の取り組みで今度は右膝の十字靭帯断裂を断裂。その後4場所連続での全休を余儀なくされ、番付は序の口まで落ちた。
それでも、苦しいリハビリの日々を乗り越えて土俵に復帰すると、昨年の5月場所は7戦全勝で序の口優勝を飾る。序二段に上がった7月の名古屋場所は6勝1敗、秋場所は三段目で全勝優勝(7-0)と本来の実力を発揮。西幕下15枚目に上がった11月の九州場所でも7戦全勝で優勝を飾り、場所後の番付編成会議で2026年1月場所での新十両昇進が決まった。
−関取となり、気持ちの面で変化はありましたか?
やることはこれまでと変わらないのですが、上がったからには部屋でも責任感を持ってやりたいですし、もっと強くならないといけない。さらに磨いていかないといけないところがいっぱいありますし、発見が多いですね。若い衆の時は分からなかったけれど、上に上がって初めて気づくことが多くあります。

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−例えばどんなところが?
部屋の掃除にしても、ただこなしているだけだと、そのきれいさとか、細かいところが汚れていたり何かが落ちているというのが見えていませんでした。客観的に見ることで汚れているところが見えてきたり、落ちているものを拾ったりするようになりましたが、自分が若い衆の時はそこに気づけなかったし見えなかったですね。
相撲の稽古でもメニューをこなすというだけで、自分がやりたいと思っていることができなかったんですが、今は自分の時間が増えたので、体作りのところなどは自分の思う通りにできる。そういうところが変わりましたし、そこに気づけたのは良かったなと思います。
あとは稽古場の雰囲気を作ったり、これまでは胸を借りる側でしたが、今では自分が若い衆に胸を出したりしています。

−場所も7日間から15日間に増えますが体力的には?
体が持つのかなって思いますが、不安はそのぐらい。対応の仕方など他の関取衆にも話を聞いたりしますけど、結局は自分次第なので、自分が続けてやれることをやっていくしかないと思っています。

−周囲からの期待も大きくなると思いますが、プレッシャーに感じたりしていますか?
そういうのを自分の力に変えるために稽古しているので、あまり悪い方には気にせずに、良い方に捉えて稽古に精進し、本場所でいい相撲を取れるようにしていきたいと思っています。

−木瀬部屋に在籍するは日大の先輩から学ぶことは?
金峰山関(バルタグル・イェルシン、2021年スポーツ科学部卒)は1年の時の4年の先輩で、9月場所では1場所だけですが付き人をしていたので、そこで関取としての1日の流れなどを経験させてもらいました。今は同じ関取衆として胸を借りてガンガン相撲を取っているので、2人でもっと強くなっていければいいなと思います。美ノ海関や英乃海関、紫雷関からも、日大の後輩ということで可愛がってもらっています。

日大での人間的成長が 今の相撲の土台になっている

− 日大への進学を決めた理由は?
高校3年の時に、大阪で行われたインカレを見に行った時、日大が優勝するのを見て「かっこいいな」「自分もこの場に立って優勝してみたい」と思ったんです。大相撲からの誘いもあったので、親はプロに行かせたかったと思いますが、僕はもう「大学に行きます」ってずっと言ってきて押し切りました。ただ、大学の相撲部がどういう環境で、どういう生活をするのかわかっていない状態で不安もあったのですが、木﨑先生からお声掛けいただいていろいろ話を聞く中で、日大でお世話になろうと決めました。

−実際に入ってみての感想は?
入学してすぐに、レギュラーの選手しかつけられない黒まわしをいただきうれしかったのと、最初の日に稽古場で、木﨑先生から仕切りの際の手のつき方や足の位置など、すべて変えられたことを覚えています。その時は「やりづらいなぁ」とか、「何でこうなるんだろう」っていう気持ちもありましたが、今ではそれがとてもありがたいことでしたし、やっぱり深いなって思います。

−印象に残っている言葉などはありますか?
「毎日稽古をやりなさい」ってずっと言われていたので、その言葉が僕の中で一番残っています(笑)。4年間毎日、鉄砲をやりましたし、稽古場ではいつも木﨑先生の目の前で立ち合い稽古をしていました。

−日大での4年間はどんな思いで過ごしていましたか?
同期の草野(直哉)といっしょに、1年生の時から2人でチームを引っ張っていくという気持ちでやっていました。木﨑先生からも「2人で1点1点取っていこう」とずっと言われていましたし、上級生の方々からもレギュラーとして気遣いをしていただきました。当時の主将が、僕のことを中学時代から知っている中学・高校の先輩だった方なので支えてもらいましたし、僕らが相撲に集中しやすい環境をつくっていただいたので、感謝しています。

−そういう先輩の姿が、上級生になった時に参考になった?
なりましたね。チームのみんなが強くなる環境というのが一番大事だと思いました。その土台を作っていただいたのは木崎先生で、それがなければ成長できる環境にはなっていなかった。日大での4年間があったからこそ今の僕の相撲が完成しているし、人間としても成長させていただいたので良かったと思っています。

−大学時代の一番の思い出は?
やっぱり3年生の時のインカレ団体戦優勝ですね。2年生の時のケガでまるまる1年間休んでいたので、当初は出ないつもりだったんですけど、木﨑先生に「お前がいないと勝てない」って言われて出場しました。ぶっつけ本番でしたが、「やるしかない」っていう気持ちで、闘志を持って試合に臨みました。優勝が決まって花道を戻る際、木﨑先生に握手をしに行ったんですけど、その時に「頑張ったな」って頭をポンポンされたのが、とてもうれしかった(笑)。あまりそういうことをされない方なので、その時の喜んでいる顔を見て、出て良かったと思いました。

自分らしさを大事にして、一番一番力を出し切りたい

−プロ入りの際、四股名を自分でつけるのも珍しいと思いますが?
部屋の中では、「木瀬」とか「肥後」とかをつけるのが普通ですが、僕は名前でいきたかった。ただ、当時は兄(元幕下・川渕一誠・錣山部屋所属)が「川渕」を使っていたので、ならば下の名前でいこうと思って「一意」にしました。僕は相撲でも他のことでも、「染まらない自分」というのを持っていたいと思っているんです。何か良い方に染まればいいんですが、悪い方に染まってしまうと自分自身が悪くなってしまうので、「自分は自分」という気持ちを常に忘れないようにしています。

−好きな言葉は「一意専心」とのことですが?
僕の名前が入っているっていうこともありますが、プロ入りする時に改めて意味を調べたら、すごいいい意味(1つのことにひたすら心を集中すること)だったし、自分の考えにもあっていたので、これを座右の銘にしようと決めました。

「応援してくださるファンの方の数も急に増えました」と笑顔を見せる一意関 【日本大学】

−一昨年、プロとして最初の場所での大ケガはショックでしたか?
その時は「あぁ、やってしまったな」という感じでした。それからは今後どうしようかなとか、もう無理かなと考えたりもしました。ただ、今回の右膝は靭帯断裂だけで、学生の時にやった左膝は靭帯断裂と半月板損傷だったので、そちらの方がきつかった。2度目の治療ということでどうすれば痛みが引くとか、何をすればいいかとかわかることは自分で対処していました。

−4場所全休というのは肉体的にも精神的にも相当きついと思いますが?
膝は手術の中でも一番痛いし、まず痛みで2・3日はまったく眠れなかった。ようやく眠れるようになっても1時間毎に目が覚めてしまうし、痛み止めの注射や薬もあまり効かないので尋常じゃないですよ。少し動かしても足を地面につけても痛い。痛みが収まるまで1ヶ月くらい、痛みと戦う生活が続きました。が、ふつうの生活に戻るのは簡単ではなかったですね。

−現在の状態は?
まだ完全ではないですが、だいぶ小回りがきくようになって、1場所ごとにできることが増えていっています。食生活も大きく変えて、自分で考えながら毎日同じものを食べています。

−ケガから復帰後は4場所で優勝も3回ですが、場所後はどんな気持ちですか?
毎回、「やっと場所が終わったな」とホッとしていました。ただ、安心するのはその日だけで、次の日からはまた次の場所に向けて稽古に励んでいます。

−番付が上がれば、対戦相手が強くなっていきますが?
そういう不安もあるにはありますが、それよりも今までテレビで見てきた人たちと対戦できることにワクワクしています。自分もその場所に立って戦えるんだっていう気持ちになって高揚しますね。

−日大の先輩や学生時代に対戦経験のある力士とあたることも増えてきますね?
相手が誰であれ、特に意識することはないです。自分と勝負して、一番一番、目の前の相手に集中して倒すだけです。

−仲の良い義ノ富士関(草野)との対戦は?
彼は学生の時から強かったですし、見習わなきゃいけないところもありますが、相撲を含めてお互いタイプが違います。意識せずに思い切りいけるというか、何も考えないでぶつかっていくと思います。

−関取として初めての1月場所、目標は?
初めて15日間、相撲を取ることになるので、精神面も体調面もしっかり整えて臨みたい。今回は勉強だと思って場所に挑みたいと思いますし、勝ち星の数などは気にせず、目の前の1勝のために一番一番集中して力を出し切って頑張るだけです。

−今後どんな力士になっていきたいですか?
そうですね…、あまり憧れとかを持たれなくてもいいのですが、見ている人に「他とは違うな」って感じてもらえたらいいですね。相撲の面だけでなく、すべてにおいて型にはまらないというか、「何か違うな」って思われるような力士になりたい。学生時代も“他とは違う”というような気持ちは大事にしていましたし、その点でも「染まる・染まらない」で言えば「染まらない」っていう気持ちでやってきたので、これからもそうでありたいと思っています。

−ご活躍と出世を期待しています。
ありがとうございます。頑張ります。

一意 虎風[かずま・とらかぜ] 本名・川渕一意。2001年生まれ。大阪府出身。金沢学院大高卒。2024年文理学部卒。小学校4年時に全国大会で優勝、中学校から石川県に相撲留学。高校2年時に全国選抜大会で優勝、3年時は世界ジュニア選手権重量級の優勝など4つのタイトルを獲得し、高校通算5冠。日大では1年次からレギュラーとして活躍し、1・3年次にインカレ団体戦優勝に貢献。卒業後、大相撲・木瀬部屋に入門して’24年7月場所で初土俵。その場所の5戦目で右膝前十字靱帯を断裂して休場し、以後4場所も全休。’25年5月場所で復帰すると、以降は序の口、三段目で全勝優勝。11月場所でも幕下15枚目で全勝優勝を飾り、’26年1月場所から新十両(西14枚目)に昇進した。得意技は突き、押し、左四つ、寄り。 【日本大学】

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著者プロフィール

日本大学は「日本大学競技スポーツ宣言」を競技部活動の根幹に据え,競技部に関わる者が行動規範を遵守し,活動を通じた人間形成の場を提供してきました。 今後も引き続き,日本オリンピック委員会を始めとする各中央競技団体と連携を図り,学生アスリートとともに本学の競技スポーツの発展に向けて積極的なコミュニケーションおよび情報共有,指導体制の見直しおよび向上を目的とした研修会の実施,学生の生活・健康・就学面のサポート強化,地域やスポーツ界等の社会への貢献を行っていきます

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