直せなかったボタンの掛け違い
数字に、負ける要素は見当たらなかった。
Jスポーツのスタッツを見ると、ポゼッション(ボール支配率)は53%、テリトリー(地域獲得率)は60%に達した。ゲインメーターは相手の459mに対して701mと大きく上回った。
ラインアウトは10度のマイボールをすべて獲得し、相手ボールは3度失敗させた。ミスタックルは26と多かったが、相手は34。
試合を構成するベースはほぼ、事前のプラン通りに組み立てることができていたはずだ。
12月28日、快晴に恵まれたヤマハスタジアムに駆けつけたレヴニスタは何度「トライだ!」と叫んだだろう。
そしてため息をついただろう。
チャンスは何度も何度も作った。
グラウンド幅いっぱいを使ってボールを動かした。
だけど、トライラインを超えてボールを押さえることだけができなかった。
開始4分、左エッジでフリーになったWTBマロ・ツイタマに合わせようとしたCTBチャールズ・ピウタウのキックの弾み方がほんの少し違っていたら、そこで先制トライが生まれていたら、試合はレヴズのワンサイドになっていたかもしれない。
それくらい、試合の最初の時間帯、レヴズの動きは相手を圧していた。
ブレイブルーパスをヤマスタに迎えた一戦は、ブレイブルーパスが試合の最初の20分ですべてのエネルギーを使い切ってしまおうとするかのような猛攻をみせた。
その勢いを前に「接点で引いてしまったのが悔しい」と家村健太は唇をかんだ。
家村個人のことではない。チーム全体が、受けに回ってしまった。
後半は立て直したけれど、試合の最初の遅れは取り戻せず、4点差で敗れた。
それを考えれば、最初からフル回転で攻めたのは、レヴズ戦士たちの誇りであり、前節の冷たい雨の中で応援してくれたファンに対する自分たちの感謝、言い換えれば存在証明(アイデンティティ)だったのだと思う。
だが、最初はほんのボールの弾み方程度だったボタンの掛け違えは、試合が続くほどに大きくなってしまった。
ホームゲームでの連敗
藤井雄一郎監督は試合後の会見で口を開いた。
「チームとしては取れそうなところで全く取れず、ミスから自分たちで首を絞めていったかなという感じで。どっかに『勝てるだろう』みたいなところがチームの中にあったのかなと思うんで、そこは私の責任かなと思ってます」
ブルーレヴズは真摯な姿勢で臨み、それが(途中までは)うまくいっているという手応えもあったはずだ。
プラン通りに進んでいたわけではなくても優位性は作れていた。
悪い内容じゃない。焦る必要はない、落ち着いてじっくり攻めればトライは取れる
――だがそう思っているうちにじわじわと時間は過ぎる。
そして相手は元気づく。
浦安D-Rocksは昨季のリーグ戦では3勝15敗でリーグ最下位だったとはいえ、メンバーには元オーストラリア代表のCTBサム・ケレビ、WTBイズラエル・フォラウ、現役南アフリカ代表のNo8ヤスパー・ヴィーゼとワールドクラスの猛者が揃っている。
そもそも、リーグワンD1に、簡単に勝てる相手は存在しない。
戦いの中で生まれたわずかなアドバンテージやラッキーバウンドをスコアに結び付け、相手に焦らせることができれば意外な大差がついてしまうこともあるが、どこのチームも良い選手が揃い、タフなトレーニングを重ね、分析も含めた準備にも専門スタッフを揃えてシーズンに備えている。
実際、D-Rocksとは昨季の2度目の対戦では62-52という壮絶なトライの取り合いを演じていた。
レヴズに油断がなくとも、そもそも力がある相手なのだ。
自分達の求めるスタンダードに
「もちろん今日の結果はとても悔しいです。トライを取れるチャンスはあったんですが、取り切ることができませんでした。また、たくさんのファンが観に来てくれたのに勝つことができず、残念な気持ちです。試合に負けたこともですが、今日は自分たちの求めるスタンダードでプレーできていませんでした。
一方でD-Rocksはとてもいいプレーをしたと思います。ハイボールをうまく使って、フォラウ選手がボールを取り返して、それによって自分たちはまたプレッシャーを受けてしまう形になってしまいました。その点は、自分たちが取り組むべき部分だと感じています」
藤井監督は「まだ3戦終わっただけなので、しっかりもう1回立て直して、チームとして目標である(プレーオフ)トーナメントに向けていきたいと思います」と前を向いた。
昨季は開幕から3連勝、開幕節の6位から第2節で2位に上がると一度も連敗せず、第6節で5位に落ちた以外は常に4位以内をキープした。
今季は3節を終えて7位。悔しい順位だ。
だがプレーオフ圏内にはとどまっている。ネガティブになる必要はない。
まだ3/18が終わったばかり
今季3戦目で初登場のFLヴェティ・トゥポウは身上の突破力でトライを決めた。
今季3戦目で初先発のFB奥村 翔は、それまで背番号15をつけていた山口 楓斗とはまた違うタイプのカウンターアタックで再三ビッグゲインを勝ち取った。
ルーキーPR稲場 巧は初先発で後半18分までスクラムを組み続け、反則を取られたときもあったが、パワーで相手をねじ伏せる場面もあった。
後半53分から初めてリーグワンのピッチに入ったルーキーSO筒口 允之はゴールキックを1本成功。終盤のアタックでは攻めに攻めながら決め手を欠いたが、それもこれからの伸びしろだ。長いシーズンを戦い抜くための武器は、戦いながら着実に増やしている。
熊谷に乗り込むのは2023年4月以来。ワイルドナイツがリーグワン設立から続けていた不敗伝説を雨の中で破った(そしてレヴズが王者キラーの称号を得た)あの一戦以来だ。
年が変わる。
カレンダーは新しく掛けかえられる。
レヴズよ、新しい年の最初の試合で、新しい伝説を作ってみせようじゃないか。
(大友信彦|静岡ブルーレヴズ公式ライター)
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。
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