【週刊グランドスラム336】アジア選手権連覇とアジア・ウインター・ベースボールV2――日本代表・川口朋保監督インタビュー[前編]
――日本代表にとっての2025年は、アジア競技大会に向けて最後のステップを踏むシーズンでした。その中でアジア選手権に優勝し、アジア・ウインター・ベースボール(AWB)でも勝率1位で優勝と、これ以上ない成果を上げました。
川口 アジア選手権では、選手たちが本当によくまとまってくれました。
――トヨタ自動車から全体の1/3にあたる8名を選出したのは驚きました。
川口 一人ひとりがそれだけの実績を積み重ねていましたし、選ぶことに迷いはありませんでしたが、他チームの選手はどう感じたのかな、とは思います。
――その選手選考を含め、前任の石井章夫監督の時代に、日本代表は編成面など大きな変化がありました。
川口 全日本ジュニア強化合宿、AWBを経て日本代表入りしていくシステムは上手く機能していますね。全日本ジュニア強化合宿は全国7か所で実施しているので、多くの若手に日本代表はどんな場所なのかを理解してもらいながら、こちらも一人ひとりの選手をじっくりと観察できます。また、AWBは台湾に遠征しますが、初めて海外に出る選手もいますし、異なる環境での対応力を高める効果も大きいでしょう。そのプロセスの中で、石井監督が「野球の技術以外の専門的なことは、その専門家に任せましょう」と、様々な部門のエキスパートを集めてくれた。私は、その体制を固めながら進めていますので、選手たちはそれを効果的に活用してほしいですね。
川口 韓国に0対1で敗れた時は不安もありましたが、よく盛り返してくれました。ただ、決勝では打順を少し迷いました。五番に入れた古川智也(三菱自動車岡崎)のところで攻撃が切れてしまうと感じていたんですが、ならば八番で当たっていた水谷祥平(JR東海)と並べてみようかと。ダブルクリーンアップのような考え方で七番・水谷、八番・古川としたら、打線がよくつながりました。
――投手では、大会MVPを手にした近藤壱来(JR四国)が大活躍しました。近藤は、選考合宿の時から目の色が違うので気になっていました。
川口 確かに、近藤はテストマッチでしっかりと力を発揮した。国際大会も短期決戦ですから、選考合宿で思い通りのプレーを見せてくれるか否かも、選考では重視しています。そして、アジア選手権での投手起用は直近の状態を見て決めましたが、近藤はそこでもいい状態をキープしてくれました。
――その近藤は、27歳で初の日本代表入りでした。現在の選考システムでは、2年目までに全日本ジュニア強化合宿に招集された選手が一気に選出される反面、25歳過ぎから活躍している選手が選ばれにくくなっているという印象があります。
川口 それは私も感じています。ですから、アジア競技大会の日本代表候補を絞り込む最後の機会となる昨年のAWBには、5年目の野村 工(鷺宮製作所)を招集しました。あのパンチ力は魅力的ですからね。また、3年目の山田健太(日本生命)はプレーに加えて、キャプテンシーも素晴らしかったです。日本代表の経験がある相場寛太(ヤマハ)を招集したのも、スタメンを外れている時期があり、アジア選手権には呼べなかったからです。
相羽は日本選手権で5試合プレーした疲れがあるにもかかわらず、よくやってくれました。ただ、日程終盤のNPB選抜との対戦で、サードフライを打ち上げたら走らなかったんです。はじめはファウルゾーンに上がりましたが、風に流されてフェアだった。だから、ベンチに戻ってきたところで、他の選手にも聞こえるように「おまえがそういうことをするな」と叱った。翌日にも、一対一で「みんながおまえの姿を見ている」と伝え、その日だけ出場させませんでした。それでも19試合中18試合に出場し、レベルの高いパフォーマンスを続けました。
――AWBでは、攻撃のサインを出していないと聞きましたが……。
川口 はい。出すふりだけしています(笑)。招集した選手たちも、はじめは驚きます。でも、次第に自分たちで考えながら攻撃することに慣れ、最後はベンチを見なくなる選手もいました。それだけ、投手との勝負に集中できているのでしょう。ただ、そうした自主性の熟成は、高校や大学までに野球観を育まれている社会人だからできる。中学生に同じことをやっても、野球を覚えられなくなってしまいますよね。ともあれ、そうしたプロセスを経て、私の中でアジア競技大会で戦ってもらう24名の青写真ができつつある段階です。
取材・文=横尾弘一
グランドスラム66は、好評発売中です!!
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ