雨音を搔き消した11,295人の”青援”
相手はリーグ2連覇中の東芝ブレイブルーパス東京。
だがレヴズは昨季、その王者に2戦2勝と勝ち越した。
それだけではない。
レヴズはここまで3季連続で、前年のチャンピオンを破っている。
ジャイアントキリングはレヴズの代名詞。
初めてのチャンピオンを掴むためにも、ホーム開幕戦で勝利をあげたい。
前年チャンピオンを破りたい。開幕連勝スタートを切りたい。
そんなレヴズの意志に共鳴するように、ヤマハスタジアムには次々に、青いレインポンチョやこの日配布されたSHIZUOKA Prideシャツを身に着けたファンがつめかけ、キックオフ前にはスタンドが蒼く染まった。
試合後の会見で藤井雄一郎監督はそう言って、続けた。
「だからこそ、勝ちたかったんですが…」
激戦だった。
昨季の王者を迎えて
前週の開幕戦で埼玉ワイルドナイツに0-46というまさかの大敗を喫したショックを振り払おうとするように、試合開始からスロットル全開でレヴズに襲い掛かる。
大黒柱のリーチマイケルに続いてシャノン・フリゼルも欠場、HO橋本 大吾も試合直前に欠場となりブレイブルーパス加入2年目で初出場の酒木 凜平がスクランブル出場。
緊急事態を抱えながら、レヴズの生命線のスクラムでもプレッシャーをかけてきた。
モウンガは絶妙にコントロールした50:22キックを決めてレヴズを自陣にくぎ付けにした。
そんな厳しい立ち上がりを経ても、レヴズは復元力をみせた。
28分、SH北村 瞬太郎が昨季の第15節から7試合連続となるトライを決めて反撃開始。
前半のラストプレーでは相手ゴール前左のラインアウトから、モールを警戒する相手の裏をかくワイド展開で右WTBヴァレンス・テファレが右隅へ飛び込み、オートバイのスロットルを回すパフォーマンスでレヴニスタを盛り上げた。
昨季の躍進のシンボルとなった二人のトライで、多くのレヴニスタは後半のさらなる追い上げを確信したはずだ。
試合開始から62分かけて、この試合初めてのリードを奪った。
だがブレイブルーパスもさるもの、次のキックオフから抜け目なくレヴズゴール前に攻め込み、ニュージーランドとフィジーの代表歴を持つCTBタマニバルがトライ、モウンガがコンバージョンを決めて22-26と再逆転する。
レヴズは4点を追って、試合はラスト15分。
レヴズはNo8にシオネ・ブナ、CTBに岡﨑 颯馬というフレッシュレッグズを投入してシフトアップを図る。
序盤は苦しんだスクラムも、後半投入された山下 憲太と稲場 巧の両PRが立て直した。
降り続く雨でボールが滑る中、ハンドリングエラーが多くなっても、スクラムでPKを奪えるという手応えはレヴズに自信と勇気を与えた。
29分の右ゴール前ラインアウトからのアタックは6フェイズでノットリリースザボール、37分の右ゴール前ラインアウトからのアタックは3フェイズでノックフォワード。
そして残りゼロ分、相手ゴール前スクラムからアタック。クワッガが、日野 剛志が、シオネ・ブナが…次々にトライラインに迫る。
雨の中、『GO!GO!REVS!』の声がスタジアムに響く。
トライラインにボールを置けばその時点で逆転だ。
だが…12フェイズまで攻撃を継続したところで、直前に頭を打って退場したジャスティン・サングスターに代わって入ったばかりのジャック・ライトが相手タックルを飛び越えようとしたとき、倒れざまに落球。
その瞬間、レヴズのホーム開幕戦勝利は消えた。
スコアは22-26。
次こそは勝利のプレゼントを
「自分たちのミスで相手にチャンスを与えてしまった。自分たちもあと5mまで行くチャンスは何度も作ったけれど、遂行しきれなかった」とクワッガ・スミス主将。
前半の最後にはラインアウトモールを警戒する相手の裏をかいて大外勝負をかけて取り切った。最後にそんなオプションはなかっただろうか?――その問いに藤井監督は答えた。
「オプションはたくさんあったんですが、あそこは全力でねじ込みに行ったんじゃないかと思います。4点差だったし(雨の中で)リスクを取るよりもシンプルにパワープレーで行こうと選手たちがチョイスしたんじゃないかと思います」
だが指揮官はその結果だけを取ってネガティブにとらえてはいなかった。
シーズンはまだ2戦目。
苦しい立ち上がりから最後は勝利までぎりぎりのところまで王者を追い詰めたのは地力がついた証だ。
そして「結果」とは、目の前の1戦のものであると同時に、シーズンを通じて追うものでもある。
ひとつのチャレンジが目の前の結果につながらなくても、その経験がシーズンの最後にもっと大きな結果につながったなら、その学びは有益だったことになる。
そして、冒頭で紹介した藤井監督の言葉にあった、レヴニスタの存在。
この日は11,295人の観衆が集結。
「いつも以上に大きく聞こえました。本当にすごかった。力をもらいました。だからこそ、ホームでの勝ちをプレゼントしたかった」と、北村は唇をかんだ。
目指すのはシーズンの最後に頂点を掴むことだけれど、目の前の勝利も求め続ける。それがプロフェッショナルクラブの使命であり、スタジアムに足を運んで声を枯らしてくれるレヴニスタへの誠意だ。
「ひとつひとつの試合が大事ですから。来週のD-Rocks戦に向けて準備します。ホームの試合で勝たないと」
次節、年内ラストゲームとなる浦安D-Rocks戦は12月28日。
ちょっと遅めのクリスマスプレゼントを、レヴニスタに届けることを誓った。
(大友信彦|静岡ブルーレヴズ公式ライター)
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。
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