【RIKUJOフェスティバル】第2部アスレティックスアワードレポート&コメント:藤井菜々子が女子競歩初のアスリート・オブ・ザ・イヤーに
このイベントは、「RIKUJOファミリー」(陸上を愛するすべての人々:トップアスリート、一般の愛好者、審判、指導者等)が一堂に会して、これまでの100年に感謝するとともに、新たな未来に向かってスタートを切る瞬間を皆で分かち合いたいという思いから企画されたものです。単なる記念式典としてではなく、ファンの方々や全都道府県陸上競技協会をはじめとする関連団体の方々、アスリートやその関係者、審判・指導者の皆さまが、みんなで楽しく過ごせる「祭典」にすることを目指し、計画・準備が進められました。
イベントは、「マザー・オブ・スポーツ」と呼ばれる陸上を、参加者とトップアスリートがともに楽しむ「RIKUJOファミリー 大運動会!」、2025年に活躍した競技者を称え、今年の日本陸上界を皆で振り返る「日本陸連アスレティックス・アワード2025」、そして、陸上に関わるすべての人々と100年の歩みを振り返り、新たな未来をともに描く「日本陸連100周年セレモニー」の3部構成で展開されました。当日は、穏やかな秋晴れにも恵まれ、会場の東京・国立競技場は、陸上を愛する人々の温かな笑顔に満ちた1日となりました。
ここでは、「第2部 日本陸連アスレティックスアワード2025」の模様をレポートします。
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第2部:日本陸連アスレティックス・アワード2025
日本陸連アスレティックス・アワードは、その年度に優秀な成績を収めた競技者や、陸上を通じてスポーツ界や社会で活躍した人々を称えるとともに、陸上を支える方々に感謝の意を伝え、日本陸上界のさらなる発展を祈念する機会として、日本陸連が2007年から毎年開催している式典です。例年は、12月中旬ごろ、東京都内のホテルを会場として、対象となるアスリートや関係者を招いて実施されています。しかし、100周年となる今年は、「できるだけ多くの関係者の皆さまにお越しいただきたい」「アワードでは、“RIKUJOファミリー 大運動会!”に参加してくださった方々と一緒に、選手たちの活躍を称えたい」「無料開放したスタンド席に足を運んでくださった皆さまにも、アワードを見ていただきたい」という思いから、「RIKUJOフェスティバル」に第2部として組み込むことに。2025年最大のビッグイベントであった東京2025世界陸上の舞台となった、東京・国立競技場で執り行い、たくさんの人々と今年の陸上界を振り返ることができるように企画されました。
屋外での開催を決めたことで、運営サイドが最も気を揉んだのが天候の問題です。「好天に恵まれてほしい」「なんとか雨だけは降らないでほしい」という祈りが通じたのが、朝から青空と穏やかな日差しに恵まれました。やや雲が増えてきた午後も、晩秋の冷え込みを感じるまでには至らず。国立競技のホームストレートは、午前中の活気に満ちた“運動会モード”から、一気に華やかな“式典モード”に切り替えられ、午後2時、2025年のアスレティックス・アワードが開幕しました。
式典は、東京2025世界陸上のテレビ中継でメインキャスターの任を果たしたTBSの石井大裕アナウンサーによる司会進行によりスタート。最初に、主催者を代表して、有森裕子日本陸連会長が挨拶に立ちました。
「陸上の聖地である、この国立競技場で、アスレティックス・アワードを行うのは初めてです。光栄な思いとともに、ちょっと緊張しながらこの場に立っています」と、本音を明かす言葉からスピーチを始めた有森会長は、本年6月からの務める会長職について、「このような役割を、まさか自分自身をするとは思っていませんでしたが」と述べつつ、「こうやって一つ一つの役割をするたびに、“私たちアスリートというのは本当に幸せだな”と」改めての実感を語り、「こんなにいろいろな機会をもらい、こんな素晴らしい場所で皆さんに祝ってもらい、こういったことを力に生きていけるという年数は、そんなに長くありません。(アスリートは)そういう時間を大切にしなければいけないと思いますし、そういう思いを持つアスリートを私たちは育てていかなければいけないなと思っています」と話しました。そして、今回の受賞対象者が、東京世界選手権で活躍した選手たちであることを示したうえで、「ぜひ、そのアスリートたちの活躍を称え、また来年、アスリートたちが一段と輝く姿を全力で応援していただきたい」と来場者に呼びかけるとともに、受賞者たちに向けて「この賞を一つの力として最大に生かして、来年、さらに羽ばたいていってほしい」と期待を寄せました。
2025年に最も顕著な活躍を残した競技者に贈られる「アスリート・オブ・ザ・イヤー」には、女子20km競歩の藤井菜々子選手(エディオン、ダイヤモンドアスリート修了生)が選出されました。藤井選手は、東京2025世界陸上女子20km競歩で、今季2回目の日本記録更新となる1時間26分18秒をマークして、日本女子競歩界史上初のメダルとなる銅メダルを獲得する快挙を達成。その活躍が、高く評価されての受賞となりました。
登壇した藤井選手には、表彰の前に、一つのサプライズが用意されていました。複数種目の日本記録樹立や世界大会入賞などの実績で長年日本の女子競歩界を牽引し、先日引退を発表したばかりの岡田久美子さん(富士通)が、表彰のプレゼンターを務めたのです。藤井選手にとって岡田さんは、競技を始めたころからの憧れで、その背中を追って、ともに世界で戦ってきたロールモデル的存在です。岡田さんは、ネタバレを避けるべく「会場入りの時間を変えて、控室も別にしていた」そうで、のちに「おかしいな。いらしているはずなのに、姿が見えないなと思っていたんです」と藤井選手が笑いながら振り返ったようにサプライズは大成功。最優秀選手に授与するシャーレと呼ばれる皿型のトロフィーを手にした岡田さんを目にした藤井選手は、両手を口元に当てて驚きの表情を見せたのちに、満面の笑顔で岡田さんを迎えました。
登壇した岡田さんは、「女子競歩界初のメダル獲得ということで、とても嬉しく、そして感謝の気持ちでいっぱいです。これからの活躍も期待しています。本当におめでとうございました」と祝福の言葉を述べたうえで、最高位の栄誉を意味する金色のシャーレを藤井選手に贈呈。さらに、有森会長からは、ワールドアスレティックス(WA)のセバスチャン・コー会長から届いた祝福メッセージの盾が贈られました。
勝木選手と山西選手の表彰でプレゼンターと務めたのは、男子競歩界のレジェンド・鈴木雄介さん。鈴木さんは、“世界一美しい”と称された歩型を武器に、2015年に男子20km競歩で1時間16分43秒の世界記録を樹立したほか、2019年ドーハ世界選手権男子50km競歩で日本競歩史上最初の世界大会金メダルを獲得した名ウォーカーです。勝木選手には、35km競歩の前身である50km競歩金メダリストの立場で、また、自身の世界記録を塗り替えた山西選手には20km競歩前世界記録保持者の立場で、各選手にクリスタル製のトロフィーを贈呈しました。
また、村竹選手への表彰は、女子マラソンで名選手として活躍し、引退後は指導者としてメダリストはじめ多くの日本代表を育てた山下佐知子さんが行いました。山下さんは、1991年東京世界選手権では、日本女子マラソン史上初のメダルとなる銀メダルを獲得した人物。村竹選手に「110mハードルで初のメダリストになってほしい」という願いを込めて、トロフィーが贈られました。
東京運動記者クラブ陸上分科会選出の新人賞は、男子100mの清水空跳選手(星稜高2年・石川)と女子マラソンの小林香菜選手(大塚製薬)が受賞。清水選手はインターハイ男子100mにおいて、10秒00のU20日本新記録、U18日本新記録、高校新記録を樹立したことが、また、小林選手は、社会人2年目の今季、初めて代表入りした東京2025世界陸上女子マラソンで7位に入賞する活躍を見せたことが、それぞれ評価されました。
表彰には、東京2025世界陸上プロデューサーの七澤徹氏、保坂龍之介氏、西村和大氏、廣瀬泰斗氏の4名が登壇。この大会の日本陸上選手団監督を務めた山崎一彦日本陸連強化委員長から感謝の思いとともに贈られた記念のトロフィーを、七澤プロデューサーが代表として受け取りました。
その後、受賞者を代表して挨拶した七澤プロデューサーから促される形で、東京2025世界陸上放映のメインキャスターを務めた石井アナウンサーも挨拶することに。司会進行しながら受賞の挨拶も行うこととなった石井アナウンサーは、やや恐縮しながらも、国立競技場が連日満員となった9日間を「夢のような舞台でした」と振り返ったうえで、「我々、TBSのスポーツの標語に、“スポーツには、世界を一つにする力がある”というものがありますが、それをこの舞台でまさに感じることができました。ファンの皆さま、選手の皆さま、関係各社の皆さん、そして我々TBSのメンバーが全力で取り組んで結果であると同時に、このスポーツの持つ力を、世界に、そして日本に広められた時間になったと思います。本当に皆さまのおかげです。どうもありがとうございました」と感謝の意を示しました。
授与が行われたのちには、石井アナウンサーが、中島選手、廣中選手、桐生選手の3名にインタビュー。中島選手は、「世界陸上後、オフもあって、少し落ち着いたことで、世界陸上でいい走りをして、いろいろな方々に見ていただいたことの実感がようやく湧いてきた」と述べ、「そのあとも、各方面からの反響もすごかったし、陸上の地位が上がったなと感じる大会だったので、またここ(効率競技場)に戻ってきて、ファンの方々に(報奨金授与を)見ていただけたことはすごく嬉しいことですし、感慨深いですね」と話しました。
【日本陸連アスレティックス・アワード2025受賞者コメント】
藤井菜々子(エディオン)
技連盟が100周年という記念すべき節目の年に、この賞をいただけたことを光栄に思います。また、日本の競歩としては、谷井(孝行)さんが2015年に初めて北京世界陸上で(銅)メダルを獲得されてから今年で10年。その間も、先輩方が常にメダルを取り続け、日本競歩チームを牽引してこられました。今回、女子として初めてメダルを獲得できたことは、そうした歴史のなかで新しい一歩を刻むことができたという意味でも、とても嬉しく感じています。
私自身としては、高校生の時にダイヤモンドアスリートに認定していただき、ジュニア期から競技者として、そして国際人として育てていただきました。さまざまなプログラムを通じて多面的に磨かれた経験が、世界で戦ううえでの大きな支えとなっています。このような機会を与え、支えてくださった日本陸上競技連盟の皆さまに、改めて深く感謝申し上げます。
最後になりますが、これからの陸上界がもっと多くの人たちにとって、身近で、夢を与えられる存在であり続けられるように、私もその発展に少しでも力になれるよう、励んでまいりたいと思います。本日は、本当にありがとうございました」
【優秀選手賞】
勝木隼人(自衛隊体育学校)
これからも諦めずに、1つ1つできることを積み重ねていって、“成長することに限界はないんだ”ということを皆さんに証明していきたいと思います。これからもよろしくお願いします。
来年も、“やる気、元気、勝木”で頑張っていきたいと思います。本日は、ありがとうございました」
村竹ラシッド(JAL)
今年は、自分の一番の成果としては、日本記録…12秒92で走れることができたことかなと思っています。“12秒台を出す”というのは、自分にとってはかねてからの目標で、今年達成できたことを本当に嬉しく思っていますし、これまでの道のりを支えてくださった、家族をはじめ、関係者の皆さんに、この場を借りて感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
9月、東京世界陸上がこの国立競技場で行われ、5位入賞を果たすことができました。自分の目標はメダルの獲得だったので、そこには及ばずというところでしたが、自分はこのまま終わるつもりは全くありません。来年のアジア大会や、新しく開催されるアルトメットチャンピオンシップ、そして、2027年の北京世界陸上、2028年のロスオリンピックと、まだまだ世界大会は目白押しなので、そこに向けて今はトレーニングを積んでいますし、そこでのメダル獲得、上位入賞を目指して頑張っています。これからも温かい目で見守っていただけたら幸いです。
これからも陸上というコンテンツを、皆さん、ぜひ楽しんでいただけたらなと思います。僕自身も、一選手として陸上競技を盛り上げていきたいと思いますので、皆さん、ぜひ、ついてきてください。ありがとうございます」
山西利和(愛知製鋼)
自分は、2023年以降は、なかなか世界選手権、オリンピックと、結果を残すことができず、苦しい時期も続いているのですが、そのなかで、こうしてたまには良い結果を残すができて、それを評価いただけることがありがたいです。来年以降も競技は続けていきますし、一つ一つの失敗を糧に、また次に向かっていけたらと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました」
【新人賞】日本陸連選出
◎古賀ジェレミー(東京高3年・東京)
自分は、記録とかにこだわると、うまくいかない面があるので、いつも支えてくれている人の応援を力に変えられるように、精いっぱい楽しんで、みんなを楽しませるようなレースをしたいと思っています」
坂ちはる(大阪体育大1年)
砲丸投は、世界とは距離のある状態ですが、大学4年間のうちに、自分のペースでどんどん記録を伸ばし、在学中にワールドユニバーシティ―ゲームズなどへの出場や、将来的には日本記録(18m22、森千夏、2004年)も狙っていきたいと思っています。
このような賞を、これからもたくさんもらえるように頑張っていきたいと思います。応援よろしくお願いします」
【新人賞】東京運動記者クラブ陸上分科会選出
清水空跳(星稜高2年・石川)
10秒00をマークしたレースは、スタートから完璧で、走っている最中に“これは来たな”という感覚のあるレースでした。10秒00という記録を見て、本当に嬉しかったです。高校3年間で9秒台を出すことを目標にしているので、まずは来年、9秒台で走ることが一番の目標です。
こういう賞をいただけることも、結果を出せたことも、皆さまの応援のおかげです。それを実感することができたので、これからもこのような賞がいただけるように頑張っていきたいと思います」
小林香菜(大塚製薬)
世界陸上は、代表に選んでいただいた段階から信じられない思いで合宿なども過ごしてきました。責任などを感じて、つらく思ってしまう日々もあったのですが、レースでは本当にたくさんの皆さんが沿道から絶え間なく応援してくださって、終わってみたら本当に楽しかったし、“もう一度、あの景色を見たいな”と思えるレースでした。マラソンは自分らしさを出せるというか、“長い距離、最後まで何があるかわからない”と自分が一番“楽しいな”と思える種目です。ロサンゼルスオリンピックに出ることを一番の目標にしていますが、今回の結果で、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の出場権をとることができたので、MGCに向けて、丁寧に、ゆっくりと準備していきたいと思っています。
これからも新人らしく頑張っていきたいと思っていますので、温かく応援していただけたら嬉しいです」
【特別賞】
株式会社TBSテレビ
この賞は、我々TBSへの評価という以上に、陸上競技の魅力そのものが、テレビを通じて皆さんにしっかり届いた証だと受け止めています。日本のメディア、テレビの力はまだまだすごいです。TBSはこれからの陸上競技の魅力、そして素晴らしさを、誠心誠意伝えてまいります。これからもよろしくお願いします」 (東京2025世界陸上プロデューサー 七澤徹氏)
※各受賞コメントは、日本陸連アスレティックス・アワード2025におけるスピーチをまとめていますが、新人賞の各氏については、終了後に行われた囲み取材におけるコメントを一部追記する編集を加えています。
文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
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