【香港国際競走回顧】香港“3英雄”の壁は今年も厚く…日本馬奮闘も3年連続の未勝利に終わる
今年も香港の壁は厚かった。特に香港カップ、香港マイル、香港スプリントの本命として出走した3頭の地元の英雄たちはやはり強く、日本馬も懸命に食らいついたものの超えるには至らなかった。
メインの2000m芝、香港カップには同レース3連覇中のロマンチックウォリアー(せん7=香港・C.シャム厩舎)が、JRA発売分の単勝オッズでも1.1倍の断然人気を背負って登場。対する日本馬は横山和生騎手騎乗のベラジオオペラが好ダッシュからいったん控えて、ロマンチックウォリアーを外に見る形でインの4番手、クリストフ・ルメール騎手騎乗のローシャムパーク(牡6=美浦・田中博康厩舎)は最後方から末脚勝負にかけた。
「ロマンチックウォリアーには思っていたより追いつけそうで追いつけませんでした」と横山和騎手。これが香港競馬史上に残るスーパースターの底力なのだろう。ベラジオオペラは1馬身3/4差の2着、ローシャムパークは5馬身3/4差の5着に敗れた。
「本当に特別な馬です。まさに規格外。何と言えばいいのか分かりません……」
勝利後、主戦のジェームズ・マクドナルド騎手は馬上で感極まった表情を浮かべていた。現役馬でありながら、すでに“伝説”の域へと入っている英雄は来年8歳を迎えるが、陣営は2月サウジカップでフォーエバーヤングとの再戦を望んでいるとの報道も出ている。これが実現すれば世界中のホースマン、競馬ファンが注目する“世紀のリマッチ”となるのは間違いない。
好スタートから当たり前のようにハナを切ると、後続の12頭を従えたまま最後の直線は馬場の真ん中へ。そして、鞍上のザカリー・パートン騎手が手綱を押すと、一気にギアを上げていくカーインライジング。見る見るうちに2着以下との差は広がっていき、最後の100mで追うのをやめたままゴールしたにもかかわらず、3馬身3/4差の圧勝だった。もちろんステッキは一発も入れていない。もし最後まで本気で追っていたら、着差はどこまで広がったのだろうか。しかも、これが国際GIでの出来事だというのだから信じられない強さ、速さだ。
「前走の内容から、今日はこういう結果になるだろうと分かっていました。彼は今や完全に別次元の存在です」とパートン騎手も手放しで絶賛するスプリント王者は、これで16連勝。来年、まずは香港記録であるサイレントウィットネスの17連勝の更新を狙うことになる。カーインライジングを止める馬は現れるのだろうか。
一方、日本から参戦したサトノレーヴ(牡6=美浦・堀宣行厩舎)は中団追走から最後の直線でインを突いたものの、伸びきれずに9着。「速いペースのせいで、最後の脚をいつものように見せることができませんでした。勝った馬は非常に強いです」と、手綱をとったライアン・ムーア騎手は脱帽のコメント。ウインカーネリアン(牡8=美浦・鹿戸雄一厩舎)は、カーインライジングの後ろにつける2番手からスプリンターズSの再現を狙ったものの、最後は失速して11着に敗れた。三浦皇成騎手は「カーインライジングが相当速かったので、なんとかついて行ければという気持ちでした。結果的について行ったのが最後苦しくなってしまった原因の一つかなと思っています」と、こちらもカーインライジングのスピードに翻弄されてしまった形だ。
ソウルラッシュの手綱を握ったクリスチャン・デムーロ騎手は「彼は最後まで果敢に戦い抜きました。一瞬勝てると思ったのですが、勝ち馬があまりにも強すぎました」とコメント。残り200m過ぎから一度はアタマ一つ抜け出したものの、最後の最後で地元馬の意地に屈してしまった。
一方、池江調教師が「年齢のせいか本当にだんだん図太くなってきて……」と語ったように、この日のソウルラッシュは道中から押して押しての中団キープ。ゴール前もソラを使ってしまったようで、「芯から走ったというような息遣いをしていなかったです。最後に勝って引退させてあげたかったのですが、本当に日本のファンの皆さんの期待を裏切ってしまって申し訳ない気持ちで一杯です」と、悔しそうな表情を浮かべていた。
トレーナーが語った通り、ソウルラッシュはこれで現役を引退し、来年からは種牡馬となる。有終の美を飾ることはできなかったものの、6歳にして昨秋のマイルチャンピオンシップでGI初制覇を達成し、今年春のドバイターフではロマンチックウォリアーを撃破するなど大きなインパクトを残した。生まれてくる子たちも、父のように息の長い活躍をする競走馬に育つことを期待したい。
なお、ルメール騎手が騎乗した桜花賞・秋華賞の二冠牝馬エンブロイダリー(牝3=美浦・森一誠厩舎)は末脚が不発に終わり、11着に敗れた。
一方、昨年の菊花賞馬アーバンシック(牡4=美浦・武井亮厩舎)は1200m過ぎから先頭に立つ積極策を展開したものの、最後の直線ではお釣りがなくなり10着。ルメール騎手は「彼は少し怒って、掛かって、一生懸命過ぎる走りでした。一番残念なのはペースが遅かったこと」と語っており、スローペースで本来の力を出し切れなかった。
文:森永淳洋
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