「日本大学アメリカンフットボール有志の会」の現在地
活動開始当初は暗中模索だったが、多くの人々の理解と尽力に支えられ、自ら掲げたビジョンの実現のため、学生生活と競技に真摯に向き合い、成長と躍動を重ねている「有志の会」。2シーズン目を終えようとしている今、チームは何を考え、どんな未来を見つめているのか。指導責任者を務める須永恭通氏と三ヶ尻晃基主将(文理4・大阪産業大学附属)に話を聞いた。
(取材:2025年12月3日)
信頼関係の中でチームは成長している。
「有志の会」結成時に責任者という職務に就き、チームを指導してきた須永氏に、この1年半における学生たちの変化を尋ねると、「互いの信頼関係ですね」と一言。
「最初は疑心暗鬼だったと思うんです。学生たちは私のことを知らないし、私も彼らのことを知らない。ただ、チームの発足にあたっては、相応の覚悟を決めた人間だけが集まっているので信頼感が生まれやすい。短い時間の中でも、指導者と学生、学生間の信頼関係というのは大きく変わったと思います」
「さまざまな個性を持った選手がいますが、自分たちで一生懸命やるようなチームになっていると思います。まだ、いろいろ足りないところや、決め事を守れないこともありますが、基本的にはそれらを自分たちで解決しようとする。僕はプレーの期待値や要望は高いかもしれませんが、生活面では口を酸っぱくして言って介入しているわけじゃない。自分たちで自浄できるような学生たちであり、チームになっています」
「確かに、須永さんに怒られたことは少ないですね」と話す三ヶ尻主将も、チームとしての成長を実感している。「怒られた時は、須永さんはこういうことを考えているんだから、僕らはこうしないといけないんだなと、自分自身の中で考えるという習慣が根付いてきた。今の自分にとって何が必要かとか、チームに対して何をすべきなのかっていう部分を考える能力が全体的についてきたように思います」
それでも「個性豊かなメンバーが揃っているので、その個性をどこまで容認して、どこから制限をかけないといけないのか、その見極めは結構大変でした」と、主将としてチームをまとめていく中での苦労はあった。だが、「前主将の杉山さんから引き継いだ『僕らが言う“当たり前”は、当たり前じゃない』というのがこのチームの根底にある」
と、「感謝を忘れない」ということだけはチームが活動していく上での根幹として貫き通している。
「定期的にミーティングを行い、その都度、『この環境は当たり前じゃないんだ』っていうことは伝えています。練習前、自分たちがこのグラウンドに集まる理由をしっかり考えさせる時間も設けているので、そういった部分を意識する習慣は浸透していると思います」
練習の後には、選手同士でいろんな話をしていて、練習のレベルや雰囲気が全くダメだったとか、このままでは負けてしまうというようなことを、私が言うのではなく、選手同士で言い合っている。そういう自分たちでどうにかしていこうという姿勢が、素晴らしいと思っています」
自分たちの姿勢で、信頼を回復していく。
また、学生という本分を全うするため、授業への出席と学習にも真摯に向き合っている。
「大学生である以上、授業ファーストっていう気持ちは全員の共通認識としてあると思う。授業を後ろの席で携帯電話をいじりながら受けるのではなく、前の方でしっかり教授の話を聞いて授業に参加しているというのは、大学生としてふさわしい行動を周囲に見せられるので意識するようには伝えています」(須永氏)
加えて、競技スポーツセンター主導でのスポーツインティグリティ研修もオンラインで実施。その出席率は毎回100%に近く、「研修を通じて、僕らがもともと持っているスポーツや日常に対する考え方を再認識できたという感じがします。こうした研修や日々の生活を通じて、僕らがなぜこういう状況になってしまったのかを改めて考えるきっかけになっていると思います」(三ヶ尻主将)。
さらに、チーム独自の取り組みとして、チームドクターでもある日本大学病院の医師を招いて、ドーピングや薬物についての研修も実施している。「今後、日本一を目指すという中で、ドーピングは自分たちが日頃から気をつけなければいけないこと。違法薬物の知識を含め、十分に注意しながら練習していこうという意識が高まったと思います」
今シーズンからは、学生の発案で、練習開始前にアメフト練習場の周囲の道路清掃を始めた。
「周辺地域の方々には、夜遅くまで練習していてご迷惑をお掛けしていますし、地域の方々の協力があってこそ僕らの活動ができているので、その恩返したいという思いで実施しています」
道を行き交う人へ挨拶の声掛けは、「僕らからの一方的なものなので、もしかしたら少し威圧感を与えているのかも…。それでも、挨拶に笑顔を返してくれる方も多くいらっしゃるので、少しはいい関係が作れているのかなと思っています」。
三ヶ尻主将は「今後、地域の子どもたちを招待して、スポーツイベントなどを開けたら面白いと思いますね」と話し、須永氏も「そういうことが実現できれば、また一歩、我々の活動への理解が進んでいくのでは」と期待を寄せた。
チームの未来へ向けて、今できることを。
「今年の最善の結果を残す、次につながる最高の結果を残すということを各学年意識しています」という三ヶ尻主将。「チームとして目指すのはやっぱり日本で一番になる、日本一強いチームになることですが、今年はそれを結果で実現することが不可能になった。だから僕は、“日本一にふさわしいチーム”作りを目標としています」と胸を張る。そして、「僕が杉山さんから託された『感謝の気持ちを忘れない』ということに加えて、対戦相手へのリスペクトする気持ちというのも、次の世代に伝えていきたいと思っています」と言葉に力を込めた。
「みんなアメリカンフットボールが好きという気持ちや、このチームに対する感謝の気持ちもあるだろうけれど、決して誰にでもできることではありません。今年の卒業生の思いをきちっと汲んで、正しいチームの運営も競技の結果も、本当に高いレベルで収めていって未来につなげる。その気持ちを強く持ってやってくれていることがすごく重要だと思います」
さらに須永氏は、「この4年間の活動は、卒業後の人生を自らの力で切り拓いて幸せになるための準備の時間です。だからこそ、アメフトだけではなく、学業はもちろん、普段の立ち振る舞いや言動、思考など、すべてのことにどう向き合っていくべきかを深く考えて、それぞれが大きく成長してもらいたいと思っています」とエールを贈る。
「勝つという目標を全員が持っていますが、まずはその日に向けた1日1日を大切にすること、そして試合中の1プレー1プレーを大切にしよう、噛み締めてやろうという話をしています。最後まで一瞬1秒を大事にやっていきたいと思います」と、三ヶ尻主将は力強く決意を語った。
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