日清食品カップ 第41回全国小学生陸上競技交流大会レポート&コメント①(全国交流大会)
日清食品カップ全国小学生陸上競技交流大会(以下、全国小学生陸上)は、小学生が、すべてのスポーツの基本である「走る・跳ぶ・投げる」の技能を身につけていくなかで陸上の楽しさに触れること、チームでの活動を経験するなかで友達との良い関係つくりやマナーを育むこと、小学生年代の指導にあたるコーチの研鑽を図ることを目的として、日本陸連が1985年に『全国少年少女リレー競走大会』の名称でスタートさせました。1992年の第8回大会から日清食品カップ全国小学生リレー競走大会に、そして、1994年の第10回大会からは、名称に「交流」の言葉が入った現大会名で実施されています。
競技会だけでなく、研修・交流も兼ねての実施であるため、全日程は2泊3日で組まれています。集合日となる1日目は会場での前日練習と指導者研修会が行われ、2日目に都道府県の各代表選手が出場する全国交流大会と指導者交流会を実施。最終日には、インスタントラーメンの発明で地球の食文化を革新したことで知られる日清食品創業者・安藤百福氏の創造的思考に触れることができる体験型ミュージアム「カップヌードルミュージアム 横浜」を見学して各都道府県に帰るスケジュールです。
今回は、指導者研修会と全国交流大会をレポート。まずは2日目に実施された第41回全国交流大会の模様からご紹介しましょう(指導者研修会の様子は、次回ご紹介します)。
第41回全国交流大会
小学校5年生および6年生が参加対象となっている全国交流大会で現在実施されているのは、5年生100m(男子・女子)、6年生100m(男子・女子)、80mハードルと走高跳の2種目で合計得点を競うコンバインドA(男子・女子)、走幅跳とジャベリックボール投の2種目で合計得点を競うコンバインドB(男子・女子)、男女各3選手でチームを組み、そのうちの男女各2選手でバトンをつなぐ混合4×100mリレーの全9種目。選考対象大会として6~7月に各地で実施された都道府県交流大会を経て、各都道府県陸上競技協会が、個人種目各1名および混合リレー1チーム(6名)の代表選手を選出します。こうして、都道府県ごとに監督(1名)・コーチ(3名)・選手(14名)からなる選手団が編成され、この全国交流大会に集まりました。
午前10時からの競技開始に先立ち、会場では午前9時から開会式が行われました。各選手団ともに、開会式には、ウォーミングアップ実施中の者を除く選手と指導者が参加。今年から初めて、大会公式YouTubeチャンネルでのライブ配信が導入されたこともあり、北海道から順に行われた入場では、大会バックボード前で各選手団が配信用カメラに向かってポーズをとってから場内に移動すると同時に、優秀な少年少女陸上競技指導者に贈られる「安藤百福記念章」受賞者を都道府県ごとに紹介していくスタイルが採用されました。
続いて選手宣誓が行われました。今年は、栃木県代表である稲荷山恭吾選手と上野結香選手の2人が選手代表として登壇。宇宙飛行士で、カップヌードルミュージアム 横浜の名誉館長を務める野口聡一さん(公益財団法人 安藤スポーツ・食文化振興財団理事)に向けて、「今年、東京で世界陸上が開かれました。そこで目にしたのは、選手が全力で挑戦する姿でした。私たちも全国から集まった同じ夢を持つ仲間と同じフィールドに立ち、全力で競いあうなかで、互いを尊重し、友情を深めたいと思います。そして今まで支えてくださった家族、コーチ、大会関係者など多くの方々に感謝し、一人一人の挑戦が未来を拓く力になることを信じて競技することを誓います」と力強く宣誓しました。
今回初めて実施されたライブ配信では、北京オリンピック男子4×100mリレー銀メダリストの塚原直貴さん(ザ・ファースト)、この全国小学生陸上の“OG”で走幅跳と100mハードルで活躍した井村久美子さん(イムラアスリートアカデミー)、十種競技で活躍し、400mハードルでもオリンピックに出場している中村明彦さん(スズキ)、モスクワ世界選手権女子マラソン銅メダル獲得をはじめ、トラックからマラソンまで長年日本のエースとして活躍した福士加代子さん(ワコール)という名オリンピアン4名が解説を務める豪華ラインナップが実現。全力で挑んだ小学生アスリートたちのパフォーマンスや、その魅力を視聴者に伝えました。
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このほか、日本人で初めて女子100mハードルで13秒の壁を突破した寺田明日香選手(ジャパンクリエイト、東京オリンピックセミファイナリスト)、東京世界選手権女子200mで準決勝進出を果たすとともに同男女混合4×400mリレーで8位に入賞した井戸アビゲイル風果選手(東邦銀行)の、“全国小学生陸上OGコンビ”に加えて、東京世界選手権男子35km競歩で銅メダルを獲得した勝木隼人選手(自衛隊体育学校)、東京世界選手権男子110mハードル5位で、今年、日本人初の12秒台(12秒92)の日本記録をマークして今季世界リスト2位となった村竹ラシッド選手(JAL)、男子走高跳日本記録保持者(2m35)で東京オリンピックファイナリストの戸邉直人選手(JAL)の5名もプレゼンターとして来場。選手の表彰だけでなく、競技の合間に場内インタビューに協力するなどして、大会を大いに盛り上げました(寺田選手、井戸選手のコメントは、別記をご覧ください)。
全国大会として9種目が行われた競技についても、ご紹介しましょう。競技はすべて2025年度日本陸連規則に準じて実施されますが、参加者の年齢段階を踏まえて、発育発達や教育的な配慮をとったなかで行われることが特徴です。例えば、同じ競技者が2回不正スタートをした場合は、その競技者は失格となりますが、通常であれば出場できなくなるところを、オープン参加の扱いでレースを走ることができるようにしています。また、コンバインドAで実施する走高跳の跳躍方法は、「はさみ跳び」に限定して、マットへの着地が背中や腰からとなった場合は無効試技と判定されるほか、コンバインドBで行われるジャベリックボール投では、助走距離は15m以内、オーバーハンドスローで投げることが決められています。
各都道府県交流大会を制したチームが代表となって、全47チームで競う混合4×100mリレーを制したのは、長野県代表のChinoAs。1走から五味華選手、佐藤華香選手、岩下琉心選手、小林慶彦選手とバトンをつなぎ、アンカーで逆転して51秒07でフィニッシュしました。
そのあと続いたゲストアスリートへの質問タイムでは、小学生リポーターの中村さんと藤谷さんが代表で、井戸選手と勝木選手に質問を行いました。「取り組んでいる100m・200m・400mのなかで、一番好きな種目は?」という問いに、「一番好きなのは200m。コーナーから直線に入るところをうまくつなげて、直線でスピードに乗って走る感覚がすごく好きです」と答えたのは井戸選手。また、「競歩をするうえで一番大切だと思うことは?」と聞かれた勝木選手は、「競歩だけでなく全部に言えることだと思うけれど」と前置きしたうえで、「他人の評価をあまり気にすることなく、自分の成長が続くように頑張っていくことだと思います」と答えました。
【ゲストアスリートコメント】
出場した皆さんには、「好きで始めた陸上競技だと思うので、全力で楽しんでほしい」とお伝えしたいですね。また、やっているうちに、どんどん「もっと上に行きたい」「強くなりたい」「勝ちたい」という気持ちが強くなっていくと思いますが、「シニアでどうなりたいかいか」とか、「陸上選手として自分がどうなりたいか」みたいなところも、保護者やコーチの皆さんと一緒に考えながら取り組んでいってもらえたらいいなと思います。
<保護者目線で、保護者の皆さんへ小学生アスリートへの接し方のアドバイスを、のリクエストに>
我が家も、娘が今年から陸上を始めたのですが、挙げるとしたら、「聞きすぎないこと」…私もついつい聞きたくなってしまうのですが…(笑)。あとは「独自のアドバイスをしすぎないこと」でしょうか。「見守る」というのが一番難しくて、一番大切なのかなと思います。選手の身体つくりに関しては、お家で食べるごはんがすごく大きいと思うので、ぜひ、見守りながら、おいしいごはんをつくって出していただけたらと思いますし、今、私も頑張っています(笑)。
◎井戸アビゲイル風果(東邦銀行)
私は、小学生のころ、本当にリレー種目が好きで、4人でアクシデントを経験したり、練習で一緒に頑張ったことができたりという思い出が一つずつ増えていくことが、すごく楽しかったんです。高校や大学になると、新しい技術ができるようになったりタイムが出たりすることも嬉しく思うようになりましたが、小学生のころに好きだった4×100mリレーの思い出が、私のなかでは大きな支えになって、今につながっていると思います。
小学生の皆さんには、「レースすることが楽しい」という気持ちを忘れずにいてほしいなと思いますね。そういう気持ちで試合に出ていけば、長く競技を続けることができますし、小学校のときに出会った友達と、違う場所や違う試合でまた会ったりすると、ずっと(陸上を)やってきてよかったなと思うので、そういう仲間との出会いとかが、陸上を通してできたらいいなと思います。
<自身の小学生時代と比べて、最近の小学生と接した印象と、それを踏まえてのアドバイスを、のリクエストに>
「陸上の知識をもうそこまで知っているんだ」という小学生が多いことに驚かされました。小学生のころは、走る種目が得意で取り組んでいる子も、跳んだり投げたりする種目にも挑戦してほしいです。いろいろな動作をすることで、全身の筋力も上がってきます。さまざまな動きを経験しておくと、そこから先にできることが増えてきます。いろいろな動きを取り入れることをお勧めしたいです。
【ゲストアスリート(ナビゲーター)コメント】
ナビゲーターを務めてみての感想ですか? 実は、僕自身は、小学校のときは陸上競技をやっていなかったんです。今日の試合を見ていたら、僕が中学校3年生だったときの記録よりも速い子がいっぱいいる状況で…(笑)。「今後の陸上界って、すごくキラキラしたものになっていくんだろうな」という期待感を持つとともに、「まだまだ僕も負けていられないな」という気持ちになりました。その思いを胸に、これからの冬期練習を頑張りたいなと思いましたね。
来年は、アジア大会を控えていますが、代表入りの条件をクリアできるように、まずは自分のやるべきことをコツコツとやるしか道はないと思っています。今年は、日本選手権1種目の100mでケガをして、多くの方からいただいていた期待に応えることができませんでした。来年は、まずは日本選手権に勝って、そしてアジア大会で活躍したい。皆さんに喜んでもらえるような結果を出していけるように、この冬、しっかりトレーニングしていきます。
◎田中友梨(スズキ)
この大会では、コンバインドA・Bとして私が取り組んでいる混成競技が実施されましたし、また、競技場の外では、いろいろな種目に挑戦するデカチャレ(キッズデカスロンチャレンジ)のコーナーもありました。小学生の大会で混成が行われていることを嬉しく思いましたし、実際にピットのすぐそばで応援したり、デカチャレ会場で実際に挑戦してみたりという経験もさせていただきました。
小学生の年代に、シニアのアスリートと間近で接することができるなんて、めったにない機会だと思います。きっと私が小学生の立場だったら、すごく刺激を受けただろうなと思いました。これから将来、「陸上界期待の星」になってくれる子たちが集まったなかで、そういう機会があるのはすごくいいことだな、素敵な試合だなと感じました。また、参加した子どもたちが、シニアの選手たちと接して喜んでいる様子に、「もっと私も、子どもたちに刺激を与えられる存在になりたいな。もっともっと頑張らなきゃな」と、逆に刺激をもらいました。
来年は、名古屋でアジア大会が行われます。アジア大会で活躍することを目指して、この冬季でパフォーマンスの底上げができるよう、しっかりトレーニングに取り組みたいと思っています。
文・写真:児玉育美(日本陸連メディアチーム)
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