【週刊グランドスラム329】エース・佐藤 廉の5連投と強力打線でヤマハが8大会ぶり2回目のダイヤモンド旗
涙を堪えながらインタビューに答える申原直樹監督の手には、ウイニングボールが握られていた。第50回社会人野球日本選手権大会の決勝は、ヤマハが2対1で日本生命を振り切り、8大会ぶり2回目の優勝を果たした。
準決勝までの4試合で49安打31得点と強打を印象づけてきたヤマハ打線は、日本生命の先発・谷脇弘起の前に4回まで散発3安打。ようやく得点の好機を迎えたのは、5回表だ。2四球で一死一、二塁とすると、九番・永濱晃汰の中前安打で満塁とチャンスを広げる。そして、続く矢幡勇人がフルカウントから、低目の真っ直ぐをしぶとくライト前に運んで2点を先制した。
「見逃せばボール球ですが、外野まで持っていけるベテランならではの技術は素晴らしい。千両役者ですね」とは、申原監督。だが、さらなるピンチを日本生命が凌ぎ、2対0のまま試合が進むと、8回裏には反撃する。先発、リリーフ、先発、リリーフで準決勝までの4試合に登板し、決勝の先発も託されたヤマハのエース・佐藤 廉に、一死から3連打を浴びせて1点を返す。
それでも、次打者を遊ゴロ併殺に仕留めた佐藤廉は、1点リードで迎えた9回裏にもピンチを迎えた。一死から髙田幸汰の中前安打、代打・上西主起のレフトへの二塁打で二、三塁。すると、8回まで三振のなかった佐藤廉は、「ここは三振を取らなければいけない場面。狙いにいきました」とギアを上げ、三島有貴、中津大和を連続三振に打ち取り、見事に優勝を決めた。
5試合で3勝をマークした佐藤廉は、最高殊勲選手賞に輝いた。今季は公式戦12勝負けなし。指揮官が「大エースに成長した」と称える左腕は、「はじめから5試合投げるつもりだった」と逞しい。
「失点しても、必ず逆転してくれると思える心強い打線。でも、決勝のように打てない試合も、もちろんあります。そういう時に、自分がしっかり抑えて勝つことを意識してきました。野手と投手の助け合いで優勝できたのは嬉しい」
東海勢が暴れ回った2025年シーズンを締め括る勝利
「はじめからいいものを持っている投手でしたが、これまでは完投が少なかった。本人も『完投させてください』と言い、今年は球数も放ってきた。それが最後まで任せる判断材料にもなりました。うちのエースなので、あいつの気持ちも買って、最後まで投げさせたい気持ちもありましたから。これから、他チームはもっと佐藤を研究してくるでしょう。その中で、さらに成長して、社会人を代表する投手になってもらいたい」
「だったら日本選手権で獲りに行こう、と話しました。その通りにやってくれた選手は、本当に素晴らしい。昨年、監督に就任してから『常勝チームを作る』を方針として、驕ることなくやってきました。常勝するためにも、来年の戦いが大事になってきます」
申原監督はそう言って、表情を引き締めた。昨年の日本選手権で優勝したトヨタ自動車の藤原航平監督とは、中央大の同期生だ。4年時は申原監督が主将、藤原監督が副主将を務めた。
「藤原監督に追いつけ、追い越せでやってきました。まだまだ肩を並べられたわけではありませんが、トヨタ自動車の翌年にヤマハが優勝できたのも運命のように感じます。互いに監督として、次は都市対抗で対戦できたらいいですね」
今年の都市対抗は王子が黒獅子旗を手にし、JABA11大会のうち6大会を東海勢が制した。しかも、ヤマハは東北大会と北海道大会で優勝だ。東海勢の強さが際立った2025年シーズンのラストも、投打に圧倒したヤマハがダイヤモンド旗を獲得。高いレベルで鎬を削る東海地区は、さらなる熱戦で実力をつけていくことだろう。他地区も負けてはいられない。
取材・文=古江美奈子
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