私のミッション・ビジョン・バリュー2025年第13回(最終回) 森直樹監督「今を生きる」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

2025年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2025年最終回となる第13回は森直樹監督です。

(取材・構成 佐藤拓也)

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Q.コーチ時代の2022年にMVVを作成されましたが、今年も面談を継続して行ったのですか?
「当初、月に1回程度の頻度で面談を行う予定にはなっていましたが、監督になると、1週間の流れがあるんですよ。その流れをあまり崩したくなくて、行いませんでした。でも、メンターさんはかつて成功した指導者や著名人の名言などを頻繁に送ってくれました。それを参考にさせてもらっています」

Q.当時作ったMVVを今も継続している感じでしょうか?
「そのままですよね。ただ、監督という立場に立って、軸というものがより伝えやすくなったかなと感じています。戦術や戦略といったサッカー面が多いですけど、そういう部分の軸に関して、コーチ時代より伝えやすくなりました。あと、コーチ時代に作ったものなので、育成色が強いですね。同じ言葉でも、今は『結果』への思いが強いです。そこの違いはあります」

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Q.では、まずMISSIONから聞かせてください。「クラブの軸、アイデンティティを作り伝え続け、日本サッカーを牽引するクラブモデルをつくること」です。長年水戸に在籍している森監督ならではの思いが込められていますね。
「当時、海外のチームに指導者研修で行く機会があったんです。そのチームの試合には地域の方々が集まっていて、ご高齢の方も多かったんです。そういう文化を水戸市に作りたいという思いがありました。家族で水戸の試合に来て、ご飯を食べて帰る。水戸の多くの人がそういう週末を送ってもらいたいと思って、選んだ言葉でもあります」

Q.当時の「軸」と現在の「軸」に変化を感じていますか?
「一緒だと思いますよ。ただ、当時はクラブモデルを作るということでMISSIONとして掲げましたが、今はMISSIONを遂行している最中という感じです」

Q.今まで築いてきたものをチームに落とし込んでいる?
「そうですね」

Q.具体的にクラブの軸やアイデンティティとはどういったものでしょうか?
「サッカー面で言うと、守備のところですね。粘り強い守備が水戸ホーリーホックのベースです。そこから拮抗した展開に持ち込むのが水戸のスタイルです。当時は守備を担当していたので、そういう意識がより強かったと思います。現在のMISSIONとしては、こういったモデルを作りながら、J1昇格を果たすということになっていますね」

Q.モデルはアップデートされていますか?
「以前はハイプレスをメインとしていましたが、今はプレスラインを設定するなど、もっと細かな守備ができるようになっていると感じています。あとはアイデンティティのところでいうと、メンタル面の変化があると思います。以前は『成長』とか『育成』に重きを置いていたところがあったと思いますが、今は『勝つ』ために戦っている。自分が監督に就任してから、そこを変えました。監督になってみて、やっぱり『成長』や『育成』だけでは勝てないことを痛感しましたし、勝たないとお客さんが増えないことも理解しました」

Q.「日本サッカーを牽引するクラブモデルをつくること」とのことですが、日本サッカーに一石を投じたい思いもあるのでしょうか?
「一番はクラブの規模のところですね。水戸はJ2の中でもでも経営規模の小さなクラブですけど、昇格争いすることができている。西村卓朗GMを中心にクラブとしていろんな取り組みをしてきた成果が出始めていると感じています。育成に力を入れてきたことによって、若くていい選手が来てくれるようになったこともつながっていると思いますし、そこにプラスして、『勝利へのこだわり』を浸透させたことによって、今の結果を生み出していると感じています」

Q.「育成」と「結果」の両方を求めたことによって、チームがうまく走り出しているという感じでしょうか?
「育成より、結果が大事だと思っています。結果を求め続けたからこそ、若手が伸びている。たとえば、齋藤俊輔がU-20日本代表に選ばれるようになったのもチームとして結果を出しているからだと思っています。今季、水戸が昇格争いに加わってなくて、残留争いをしていたら、選ばれていなかったと思います。上位にいて、彼自身が結果を残したから、代表に選ばれると捉えています」

Q.昨年、高卒ルーキーの齋藤選手を抜擢して起用しました。その判断は「育成」ではなく、「結果」だったのでしょうか?
「彼のパフォーマンスが良かったからです。彼のポテンシャルが高かったから使っただけで、『結果』を求めた結果です。彼を成長させるために起用したわけではありません」

Q.そういう意味で、齋藤俊輔選手は今後の水戸の象徴的存在となりそうですね。
「そうだと思います。(碇)明日麻においても、彼の能力が必要だから、試合に使ったわけで、経験させるために起用したわけではありません。能力とその試合で特長が生きると思って試合に使う判断をしました。年齢や実績は関係ありません」

Q.そうやって選ばれた選手が成長していく。それが新たな水戸のあり方ですね。
「そうなってほしいですね。『成長させたい』とか、『経験させたい』といって選手を起用しだしたら、チームはおかしくなると思っています。いい選手を選び続ける方がいいと思っています」

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Q.次は VISIONについて聞かせてください。「クラブが全てのホームタウン住民の象徴となっている未来を創る」とありますが、水戸ホーリーホックがさらに発展するためにも、地域の方々からもっと愛されるクラブにならないといけないということを感じていたのでは?
「そうですね。そのためにも結果を出さないといけない。プロですから。J3だろうが、J2だろうが、J1だろうが、スポーツは結果が求められるものなので、こだわらないといけないと思っています。その意識がコーチ時代から一番変わったところだと思います」

Q.実際、今年、その考えが確信に変わったのでは?
「本当に観客が増えましたね。集客活動を頑張って、お客さんが増えたのではなく、ピッチ内外で頑張り続けたことが今の状況を作り出したと思っているんです。そこに意義があると感じています。地道にやり続けてきて、結果を出したことによって、お客さんが来てくれるようになった。そこは実感しています。選手たちにも『君たちがこれだけのお客さんを呼んだんだよ』という話をしています」

Q.今までどんなに頑張っても、これだけ多くの人は来てくれませんでしたからね。
「それこそ、今年クラブ史上はじめてユニフォームスポンサーが埋まりましたしね」

Q.その意義を森監督が理解していることはこのクラブにとって大きいと思います。
「他のクラブにとって、そういうことは当たり前かもしれないですけど、水戸の歴史においてすごいことですからね。相手サポーターの人数に頼らず、スタンドが埋まるようになったことにクラブとしての進化を感じています」

Q.現在、チームは変革期ですね。さらなる大きな未来を作り出すためにも、昇格という結果を出したいですね。
「とにかく今を大事にやっていくしかないと思っています」

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Q.VALUEの一つ目は「相手の話を聞く」。こちらはいかがでしょうか?
「コーチ時代と変わらず、選手としっかりコミュニケーションを取るということですね。この当時は強化にも関わっていたこともあって、フロントスタッフとコミュニケーションを取ることも大切にしたいという思いもありました」

Q.コーチの立場と監督の立場で選手との距離感が変わったのでは?
「相当変わりましたよ。監督はみんなの意見を聞きすぎてもいけないですから、むしろ、監督になってからは『相手の話を聞く』ことに関しては減らしているところがあります」

Q.距離感で意識していることは?
「情が入ってしまうので、あまり特定の選手とコミュニケーションを取らないようにはしています。コーチは情が入っていいと思うんですけど、監督は情が入ると判断が難しくなってしまう。ドライにならないといけないんです。その分、コーチにコミュニケーションを取ってもらうようにしています」

Q.より選手の表情を見るようになったのでは?
「そうですね。ただ、リーグ終盤に入ってから、気づいたことは直接話してあげようとも思っています。どちらかというと、やらないといけないことをしっかり提示してあげるようにしています。特に先発で出場しているような選手ではなく、ベンチに入るか、入らないかぐらいの立場の選手に対して、ベンチから外したときにその理由について説明することもあります。同時に期待していることについても話すようにしています。リーグ終盤、チーム全員の力が必要になってくると思うので。たとえば、(フォファナ・)マリックにはうまくいかない時期もありましたけど、やるべきことを伝えたら、パフォーマンスが上がってきました」

Q.続いて、「部署の垣根を超えて関わるすべての人と何気ない会話をする」。こちらはいかがでしょうか?
「これも監督になると難しくなりますね。いろいろ気を遣うようになりますから。でも、なるべく、フロントスタッフとはコミュニケーションを取るようにしています。現場とフロントが意思疎通できていることは水戸の強みだと思いますし、練習後に事務所に寄ってフロントスタッフと談笑する選手も少なくないですからね。そんなJリーグクラブ、他にないと思いますよ」

Q.フロントスタッフの思いを知ることや仕事内容を知ることも大事なことですよね。
「そうだと思います。先日、GMがフロントスタッフやアカデミースタッフを交えて決起集会を開催してくれました。そこであらためて『想い』を語ってもらったのですが、それは選手たちの胸に刺さったと思いますよ」

Q.3つ目は「地道にやり続ける」です。
「地道にやり続けてきましたよ! それが今につながっていると思います」

Q.いつ頃からこの考えを持つようになりましたか?
「コーチになってからですね。チームもそうですが、自分も一気に成長するわけではなく、地道にやり続けて、少しずつ成長していくことの大切さを学んできました。それでここまで来たという実感があります」

Q.コーチとして、客観的に選手を見るようになったと思います。選手の成長曲線についても、一気に成長するというより、ちょっとずつ成長する選手が多かったのでは?
「そうですね。選手もそうですし、指導者としても、一気にいい指導者になれるわけではないですから。自分の場合はいろんな監督のもとでコーチをして、いろんなことを見させてもらって、今があります」

Q.その蓄積を活かしているのですね。
「そうですね。たとえば、ある日のトレーニングはシゲさん(長谷部茂利元監督)が行っていた内容を取り入れたことがありましたし、日によってはアキさん(秋葉忠宏元監督)が行っていたような対人トレーニングのメニューを行うこともあります。選手たちのコンディションや状況を配慮しながら、メニューを考えています。テツさん(柱谷哲二元監督)がやっていた素走りを取り入れる日もあります」

Q.そういった経験が森監督のVALUEになっているのですね。
「地道にやり続けてきましたから」

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Q.スローガンは「今を生きる」です。
「今を大事にすることですね。1日1日を大事にして、ここまで来たら、昇格を目指す」

Q.森監督は就任以降、常に「目の前の試合に100%を出す」と言い続けてきました。
「1試合1試合もそうですけど、4試合で勝点8という短期目標も立てています。その目標も達成してきました」

Q.残り試合も「今」を戦い続けることが求められます。
「目の前の試合を戦い抜きます。選手たちにもここから勝ち抜いていかないと昇格はないという話をしています。1試合1試合だけでなく、1日1日のトレーニングから大事にしていかないといけないと思っています。日々競争ですし、調子のいい選手を試合で起用するようにしてきましたし、最後までその姿勢を貫こうと思っています。まあ、大変ですけどね(苦笑)」

Q.残り試合に向けての意気込みを聞かせてください。
「勝ち抜いて昇格します!」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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