私のミッション・ビジョン・バリュー2025年第12回 渡邉新太選手「勝つ」
多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。
その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。
ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針
原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。
2025年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2025年第12回は渡邉新太選手です。
(取材・構成 佐藤拓也)
「2月にスタートして、4~5回面談を重ねて、4月にMVVが決まりました」
Q.今までこうやって過去や思いについて第三者に深く話をしたことはありましたか?
「ないですね」
Q.面談をしてみていかがでしたか?
「再確認という意味で良かったと思います。自分の中で大事なものはずっと持っているので、それを話しながら確認するという感じでした」
「結果を出し続けるということですね。今季に関しては、加入したときから期待されていることを感じていました。毎試合毎試合、期待を感じながらプレーしていますし、結果を出すことによって応えようと思い続けています」
Q.「期待」を感じてプレーするのはプロになってからでしょうか?子どもの頃はどういうサッカーとの向き合い方をしていましたか?
「サッカー小僧でした。サッカーしかやってこなかったですし、子どもの頃からプロになるものだと思ってやっていました。プロになる以外の選択肢は考えていませんでした。子どもの頃は町クラブでプレーしていて、その中で上手の方でしたし、点を良く取るので、チームメイトや保護者から期待されているのを感じていました。常に期待されているということを感じてプレーしていました」
Q.勝つためにゴールを決めて、それでみんなを喜ばせようと思ってプレーしてきたのですね。
「そうだと思います」
Q.期待に“応え続ける”というところに渡邉選手らしさを感じます。続けることの難しさや意義も感じているのでは?
「『続ける』という言葉にそこまで深い意味はないんですけど、自然とこういう言葉が出たということは、昔からずっと続けてやってきたという自負が込められているんだと思います。今後もそうありたいという願望も込めて、この言葉にしました」
Q.水戸に加入する際、監督やGMからはどういった期待の言葉をかけられましたか?
「これまで水戸は育成に重点を置きすぎていたと。やっぱり、勝たないと意味がないということを伝えられて、『もっと勝ちにこだわりたい』ということで、自分を必要としてくれているという話をしてくれました。メンタリティの面だけでなく、試合に出てチームを勝たせられる選手だという期待を持ってオファーを出してくれたんだと思っています」
Q.実際、チームに加入してみて感じたことは?また、チームをどのように変えようとしてきましたか?
「基本的に自分のやることは今までと変わっていません。新加入として水戸に来て、年齢も上の方だったので、若い選手に対して要求はするけど、あまり要求しすぎず、常に矢印を自分に向けて、口で言うよりもプレーで引っ張っていきたいと思っていました。誰が言うかということも大事なところで、発言に説得力を持たせるために結果が欲しかった。最初はあまり口うるさく言うことなく、結果を出しながら、徐々に要求するようにしていきました」
Q.今季、水戸でキャリアハイのゴール数を記録して、首位に立つチームを引っ張ってきました。あらためて、今季水戸でどのような期待を感じてきましたか?
「水戸でというより、サッカーをやってきてずっとこだわってきたのはゴールを決めるということ。そこが一番分かりやすいですし、誰もが自分に対してそこを期待しているということを常に感じています」
Q.今季の結果を踏まえて、さらに期待が膨らんでいるのを感じているのでは?
「それは本当に嬉しいこと。その期待が大きければ大きいほど、目標は大きくなる。その期待に応えたいという思いもさらに強くなります」
「『期待に応える』の先にあるものですね。元をたどれば、点を取って多くの人を喜ばせるということがある。VISIONに関して、社会全体のことを考える選手が多いみたいですけど、自分にはそのイメージが全然なくて、身近な人や周りの人たちを喜ばせたいという気持ちしかありませんでした。その思いでこの言葉を選びました」
Q.先日、チームスタッフやアカデミースタッツなどと合同のミーティングを行い、長くクラブに在籍している方々の思いも聞かれたと思います。それも刺激になったのでは?
「すごくいい機会でした。その反面、そのとき自分は怪我をしていたので、チームの力になれなくて、すごく悔しい気持ちになりました」
Q.経営難など様々な紆余曲折のありながら、ぶれずに前進し続けてきた水戸ホーリーホックがJ1昇格する意義をどのように感じていますか?
「この経営規模のクラブが優勝することによって、他の地域クラブの希望になると思っています。どこのクラブでも上に行けるということを証明できる。そういう部分でサッカー界全体が盛り上がると思う。25年以上J2に在籍していて、本間幸司さんが引退した翌年に昇格のチャンスが巡ってきた。いろんなドラマが今の水戸にはあると感じています。水戸が昇格することは、J1経験のあるクラブや資金力のあるクラブが昇格するのとは意味合いが異なると思っています。だからこそ、絶対に昇格という結果を成し遂げたいと思います」
Q.水戸は地域の方々やサポーターと距離感の近いクラブです。そういった方々の期待も感じているのでは?
「プロフェッショナルという点で考えると、正解や不正解があるわけではないですが、個人的にはプロは遠い存在であるべきだという考えがあります。水戸は距離感の近さが魅力だとは思いますし、サポーターと触れ合う機会も多いクラブ。なので、水戸に来て、近い距離感でサポーターと接して、彼らの思いを感じてプレーする意義も感じています。それと、水戸で一番いいなと思ったのは、フロントスタッフと距離が近いこと。フロントスタッフの思いや頑張りを知ることの大切さを感じています。選手だけでなく、本当にクラブ全体で戦うというイメージを持ちやすくなりました。その距離感は水戸の良さだと感じています」
Q.シーズン序盤と比べて、観客が増えています。そこも渡邉選手にとってモチベーションになっているのでは?
「どんな環境でも自分は変わらないです。観客数に関して気にするのはフロントスタッフだと思います。さっきのプロフェッショナルの話につながりますけど、選手は観客数に関してあまり気にしなくていいと思っています。選手はピッチでやるべきことをやって、その結果が観客の数につながっていく。水戸はいろんなホームタウン活動を行っていますけど、プロはピッチで結果を出して評価される世界。そこへのこだわりが自分の中にはあるので、観客数を気にすることはありません。もちろん、観客が増えたことは理解していますし、嬉しい気持ちもありますけど、観客が多くても少なくても、やるべきことは変わることないです。とはいえ、クラブとして取り組んでいることもあるし、今までの歴史もあるわけで、水戸に加入してから、『もっと認知されたい』という思いは伝わってきています。なので、ホームタウン活動も大事なのは分かっていますし、できる限りのことはやろうと思っています」
「試合に勝つために意識していることです」
Q.そのために意識して取り組んでいることはありますか?
「あまりないです。サッカーファーストで考えて、次の試合に向けてコンディションを整えることぐらいですね。サッカーファーストで考えれば、睡眠や食事など『これはした方がいい』『しない方がいい』ということが出てくる。それを行動し続けているだけですね」
Q.プロになってからずっと続けている。
「そうですね。続けています」
Q.今季の水戸は、チームとしての準備もしっかりしている印象があります。
「怪我をしてしまいましたけど、それまでしっかり試合に出続けたことが結果を出してきた要因だと思います。大分時代も結果を出せる自信を常に持っていましたが、怪我で離脱が続き、出場数が減ったことによって、いい結果を残すことができなかった。だから、準備が大事だと思います」
「この言葉には結果を出し続けることや、勝負に勝つという意味もありますが、自分に勝つという意味もあります。周りの人を喜ばせるためにも、勝たないといけないですし、やっぱり勝つことがすべてです。シンプルですけど、いろんな意味があるかなと思います」
Q.プロである限り、結果が求められますからね。
「そうですね。今季、チームとして結果を出していることによって、クラブ史上初めてユニフォームスポンサーがすべて埋まったという話を聞きました。観客動員も増えているし、注目度も高まっている。それらはすべて勝っていることが理由だと思います。プロとして、結果が一番重要。とはいえ、勝利にこだわったからといって勝てるわけではなく、プロセスが大事だという考え方もよく分かります。水戸ホーリーホックの歴史についてそれほど詳しいわけではないですけど、クラブとして下積み時代が続いた中でもしっかり積み上げてきた。だからこそ、今があると思っています。今年、優勝することができれば、苦しかった時期が報われると思うんです。だから、僕たちは優勝しないといけないと思っています」
Q.リーグ最終盤に向けた意気込みを聞かせてください。
「残り6試合、簡単な試合はないと思っていますし、1試合1試合で状況が変わると思います。でも、水戸の歴史上、最もJ1に近いところで戦うことができています。夏前からずっと首位をキープしてきて、自分たち次第で昇格が手に届くところにある。J1昇格は自分たちだけの夢ではない。フロントスタッフやアカデミースタッフ、スポンサーやサポーター、地域の方々の期待を感じています。だから、今年は絶対に優勝しないといけない。厳しい戦いが続くと思いますけど、1試合1試合、自分たちが今までやってきたことをやれば、簡単に負けないと思います。自分たちを信じて戦うだけだと思っています。そして、自分も復帰して、少しでもチームの力になれればと思っています」
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