【ラグビー日本代表コラムシリーズ】 男子セブンズ日本代表 “進化する「ジャパンらしさ」”

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【©JRFU】

最後まで進化した「ジャパンらしさ」の可能性を示した。9月20~21日に中国・杭州で行われた「アジアラグビーエミレーツセブンズシリーズ2025 中国大会」 男子セブンズ日本代表は、決勝でホンコン・チャイナ代表に敗れて準優勝に終わった。頂点を目指していただけに悔しい敗戦となったが、2季目のフィル・グリーニング・ヘッドコーチ(HC)のもとでこだわってきた、フィジカルやスピードの成長は随所に感じることができた。

「アジアラグビーエミレーツセブンズシリーズ2025 中国大会」スリランカ代表戦のハーフタイム中に戦術確認をする男子セブンズ日本代表 (「アジアラグビーエミレーツセブンズシリーズ2025 中国大会」スリランカ代表戦 2025.09.20) 【©JRFU】

◇全員がリーダー

 日本は中国大会初日、プール戦でスリランカ代表に38-7、シンガポール代表に47-5、タイ代表に54-7と3連勝を飾り、上々の滑り出しを見せた。2日目の準決勝・中国代表戦は激しいフィジカルバトルに苦戦するも、数的有利な状況を生かして落ち着きを取り戻した。2点を追う展開で迎えたラストワンプレー、宮坂 航生(三重ホンダヒート)が防御網のすき間をスルスルと抜ける華麗なステップでトライを奪い、土壇場での逆転劇を完結させた。
 決勝はホンコン・チャイナ代表戦。前半、相手の波状攻撃を止めきれずに2トライを許すと、その後津岡 翔太郎((公財)日本ラグビーフットボール協会 / コカ・コーラボトラーズジャパン(株))の突破で1トライを返したが、終了間際に再び失点して7-19で折り返した。後半も荻田 直弥(NECグリーンロケッツ東葛)のトライで先に得点したが、再び突き放されて12-31で敗れた。
 共同主将を務めた古賀 由教(リコーブラックラムズ東京)は「とても悔しいが、経験が浅い選手たちが多い中で成長を感じる場面もたくさんあった」と冷静に結果を受け止めた。古賀が特に評価したのは、スタメンもリザーブも、誰が出場しても力の差がほとんどなく、質の高いプレーを見せられたこと。中国代表戦も途中出場のメンバーが大勢絡んで、最後の逆転につなげた。古賀は「チーム全体のレベルが向上していることが分かるシーンだった」と振り返った。
 共同主将ながら「自分が話す必要がないほど、若手がどんどん発言してくれる。誰が主将を務めてもいいくらい、『全員がリーダー』という感覚を持てている。本当に皆さんに感謝しています」と古賀。アカデミー出身で早くから7人制に携わってきた立場として「セブンズの価値を高めたい。そのためにも勝利を積み重ねることが絶対」と先を見据える。

パリ2024オリンピックにも出場した経験値を生かし、チームを引っ張る古賀 (「アジアラグビーエミレーツセブンズシリーズ2025 中国大会」スリランカ代表戦 2025.09.20) 【©JRFU】

◇世界で戦う警察官 進む多様な背景の融合

 今季最初の国際大会は悔しいスタートとなったが、グリーニングHCが重視してきた、さまざまな背景を持つ選手たちを融合して、「パスウェー(進路)」を積極的に活用したチーム作りは順調に前進していることがうかがえた。存在感を発揮したのが、昨秋から男子セブンズ日本代表メンバーに入った大阪府警察ラグビー部所属の白國 亮大、志和池 豊馬の2人だ。
 2人は帝京大学からの同期。日の丸を背負うようになって約1年。世界との差を埋めるために注力してきたと口をそろえるのが、スピードとフィジカルの強化だ。志和池は「今まで日本選手相手であれば、少しでも手がかかれば相手を倒せたが、外国の選手には通用しない。しっかり体を当てること、そして倒しきることを意識している」と変化を語る。
 白國は今春のワールドラグビーHSBCセブンズチャレンジャー2025で共同主将を担い、チーム全体を目配りする機会が増えた。次第にジャパンラグビー リーグワンや社会人リーグ、大学など幅広いカテゴリーの選手が集まる中で、発言する人が限られてしまっていることが引っかかったという。「何人かが引っ張って、他の選手はそこについていく、という雰囲気があった。もっと上のレベルに行くには、誰もが思ったことを発言できるチームになる必要がある。だからミーティングで『遠慮することはやめよう』とみんなで話しあった」。チームはまた一回り、大きくなった。
 2人は以前、プロ野球・阪神タイガースが優勝した際の雑踏警備に携わった。志和池は「スポーツであれだけ大勢を喜ばせたり、熱狂させたりできる。底知れないパワーがあると実感した」。いつか自分も--。その思いが厳しい練習に向かう原動力になっている。

なの花薬局ジャパンセブンズ2024での活躍から日本代表まで上り詰めた白國(左)と志和池(右) (「アジアラグビーエミレーツセブンズシリーズ2025 中国大会」スリランカ代表戦 2025.09.20) 【©JRFU】

◇縁の下の「オールラウンダー」たち

 世界最高峰を目指して奮闘しているのは、選手だけではない。「縁の下の力持ち」としてチームを支えるのが、グリーニングHCを含めた9人のスタッフたちだ。15人制や他競技の日本代表と比較すると少数精鋭。それでも「セブンズファミリー」として多くの時間をともに過ごし、時には自分の専門分野も超えたサポートでジャパンの強化に努める。
 S&Cコーチの西田 拓史は練習中、指示を通訳したりビブスを着て練習相手になったりと、グラウンドを走り回る。「自分の本職は何なのかと思うくらい」と笑うが、「専門分野に注力しつつ、チームに必要なことは何でもやる。遠征に帯同できる人数も制限があるので、助けられる部分があれば普段からどんどん声をかけるようにしている」という。
 「オールラウンダー」として動くのは全スタッフ共通だ。アナリストの岩井 優は代表選手のデータ分析の他にも、代表に選ばれる前段階の選手の映像を集めてデータベース作りを担当。トレーナーの古舘 昌宏は一人一人のコンディションを正確に把握しつつ、練習用具の準備なども行う。古舘は「大きな目標に向かって頑張ろう、という中で自分にできることは何でもサポートしようと思うのは、自然な流れ」と頼もしい。また、総務の綿貫 達也は、遠征の宿泊先や交通手段、練習会場の確保、主催者側とのやりとり、広報対応などを一手に引き受ける。イレギュラーな変更も多いが「この状況ならこの形がベスト、と選手が100%力を出しきれるように判断する。結果が出た時のやりがいは大きい」と語る。

少数精鋭のスタッフ陣の奮闘がチームを支える(左から古舘、岩井、綿貫、西田) (男子セブンズ・デベロップメント・スコッド福岡合宿 2025. 08.11) 【©Naoya Tsunoda】

◇フィジカルでも負けない

 次戦は10月18~19日にスリランカ・コロンボで開催される「アジアラグビーエミレーツセブンズシリーズ2025 スリランカ大会」。大会方式が再編され、2026年1月開催予定の「HSBC SVNS DIVISION3」の出場権を獲得するため、スリランカ大会でのホンコン・チャイナを上回る好成績がまずは直近で最大の目標となる。
 明るいニュースも届きそうだ。8月の福岡合宿中に負った怪我の影響で、中国大会はメンバーから外れた中野剛通の完全復活間近が間近に迫っている。186センチ・96キロと、海外勢にもひけをとらない恵まれた体格を生かした突破力は大きな武器となる。昨秋に初キャップを獲得した中野は1年間、世界各地の強豪と体をぶつける中で「一つ一つのタックルやボールキャリーでなかなか前に進むのが難しかった」と壁の高さを感じたという。そこでウエートトレーニングにより重点を置いて取り組むようになり、ベンチプレスやスクワットの最大重量は10キロ以上増加。フィジカル、スピード、コンディションがいずれもバランス良く向上している手応えをつかんだ。そこにはジャパンが誇る「ペネトレーター(突破役)」としての自負がある。「自分は他の選手に比べてサイズもあるので、そこは僕自身が違いを見せていかないといけない。昨季のプレーではまだ物足りない。もう一段階あげたい。ペネトレーターとして、ボールをもっと前に持っていける選手になりたい」。
 ジャパン伝統のハードワーク、スピード、スキルに加えて、フィジカルでも逃げずに対等以上の戦いに持ち込む。その先にスリランカでの栄冠が待っている。

思わぬケガで中国大会に出られなかった悔しさをスリランカ大会にぶつけるべく、練習に汗を流す中野 (男子セブンズ・デベロップメント・スコッド福岡合宿 2025.10.11) 【©JRFU】

(文・角田直哉)
<アジアラグビーエミレーツセブンズシリーズ2025 スリランカ大会>
■男子セブンズ日本代表 大会スケジュール
<プール戦・ブールB> ※大会1日目 (10月18日)
第1戦: vs タイ代表 (日本時間 15:48キックオフ (予定))
第2戦: vs チャイニーズ・タイペイ代表 (日本時間 20:12キックオフ (予定))
第3戦: vs アラブ首長国連邦代表 (日本時間 10月19日 00:36キックオフ (予定))
※大会2日目(10月19日)については、大会1日目が終了後にJRFUホームページにてご案内いたします。
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著者プロフィール

(公財)日本ラグビーフットボール協会は、日本におけるラグビー競技の普及振興に関する事業を行い、その健全なる発達を図るとともに国民体力の向上と明朗なスポーツマンシップの涵養につとめ、もって社会文化の向上発展に寄与することを目的とした競技団体です。 1926年に日本ラグビー蹴球協会として設立されて以降、ラグビー競技の普及発展のための国内唯一の統括団体として活動を続け、2013年に公益財団に移行しました。詳細はこちら(https://www.rugby-japan.jp/jrfu)

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