1人の市民が梶ケ谷第1公園に巨大遊具を寄贈

川崎フロンターレ
チーム・協会

左から高津区長の白井豊一さん、川崎市長の福田紀彦さん、遊具を寄贈したblueさん、フロンターレの吉田明宏社長、西梶ヶ谷小学校 校長の鶴見悦子さん、 【©KAWASAKI FRONTALE】

10月6日(月)神奈川県川崎市高津区の梶ケ谷第1公園にて「遊具オープニングセレモニー」が開催された。新たに完成したのは川崎フロンターレカラーやマスコットがデザインされた全長20メートルを超えるロングスライダー(かじがやドリームスライダー)とインクルーシブブランコ。こんなにも大きな遊具を寄贈したのは、ある1人の川崎市民だった。

自分がワクワクするほうへ

巨大遊具を寄贈したblueさん 【©KAWASAKI FRONTALE】

“あなたは、もし手元に「2,000万円」のお金があったら何に使いますか?”

ほとんどの方は自分や家族のために使うだろう。むしろそれが普通であり、今回遊具を寄贈した梶ヶ谷で不動産業を営むblueさんも最初は同様で豪邸を建てる、高級車を購入しようと考えていた。ただ、ある日、高級外車の試乗に行ったとき想像していたよりも気分が高揚しなかったという。

「あまりワクワクしなかったんです(笑)。そのときにやっぱり僕は地域の象徴になるものを作るほうがワクワクすると思いました。大人は子どもたちのために生きる。そういう格言があると思いますが、次世代に投資をしたい、地域の投資になるようなお金の使い方をしたい。そっちのほうが僕は嬉しいんです」

少年サッカーチームのコーチもしていて、子どもたちが楽しそうにしている姿を何よりも大事にしているblueさん。だったら子どもたちがもっと笑顔になれる街になるよう大きな遊具を作ったら喜んでくれるのではないか。腹は決まった。“公園に遊具を作ろう”と。

動き出した物語は1年半前。blueさんは、高津区役所へ電話で「公園に遊具を寄贈したい」と伝えた。受話器越しに話を聞いていた区役所は団体ではなく個人からの思いがけない問い合わせに戸惑いもあり、「本当に実現できるのか?」と少し半信半疑だったという。ただ高津区長の白井豊一さんが「blueさんの思いの強さが話を動かした」と振り返るように、少しずつ“寄贈できるかもしれない”という実現への流れに入っていったのだった。

デザインも心のなかで決まっていた。大ファンであるフロンターレのデザインにして地域に愛着をもってもらいたい、と。こちらもクラブの問い合わせページから「デザインを使わせてください」と一報を入れ、GOサインが出てから本格的に遊具の会社を交え打ち合わせを重ね、ついに10月6日に遊具が完成の日を迎えた。

見たかった景色

いよいよテープカットの瞬間 【©KAWASAKI FRONTALE】

セレモニー当日。公園には多くの子どもたちが「早く遊びたい」と胸を踊らせて遊具の使用開始を待ち、オープンを記念して行われたテープカットがされた瞬間、一気に子どもたちが遊具へ走って大興奮で遊んでいた。

「こういう光景を見たかったんです。僕自身もワクワクします。こんなにも大きくて迫力のあるものができたので。街の魅力、地域の魅力を上げたい思いがありましたし、この遊具があることで子どもたちが楽しめる公園になるんじゃないかなと。すごく素敵なものを作っていただいて嬉しいです」(blueさん)

テープカット後、子どもたちは遊具に一直線 【©KAWASAKI FRONTALE】

学校側からの視点で見ても安全性を考慮して遊具が使えず、体を動かす機会の減少や公園でゲームをしていて紛失などのトラブルも多いという現状のなか、遊具ができたことは体を動かす1つのキッカケにもなるだろう。

「公園でゲームをするのではなく、遊具ができたことで体を動かす1つの場になったのが嬉しいです。これを機会に外で遊ぶ子どもたちも増えるのではないかなと思います。本当にblueさんには感謝しかありません」(近清えり子さん/梶ヶ谷小学校 校長)

「学校から遊具を作っているのが見えていたので、完成を楽しみしていました。こんなにも大きな遊具ができたのも体育の面でも助かりますし、blueさんに感謝しています。子どもたちはフロンターレが大好きなのでデザインも含めて、とても喜んでいます」(鶴見悦子さん/西梶ヶ谷小学校 校長)

紡がれるメッセージ

全長20メートルを超えるロングスライダー(かじがやドリームスライダー) 【©KAWASAKI FRONTALE】

blueさんは匿名での寄贈を考えていたが、そうしなかった理由にはある思いが込められている。

「自分の名前を出すことで子どもたちの記憶に残るかなと思ったんです。この遊具で遊んでくれる子どもたちが大人になったときに、自分と似たようなことをしたいと思ってもらえるように。そんな大人になってほしいなと思っています」(blueさん)

地域に対しての思いや考え方はフロンターレも同じ。今までフロンターレが地域に寄り添った活動をしてきたことで、ホームゲームのボランティアの方々や、清掃活動をするとなったら市民の方々が積極的に手を挙げて参加してくれるようになった。みんなで一緒になって川崎市を「いい街にしよう」と取り組み続けてきた。だからこそフロンターレの吉田明宏代表取締役社長もblueさんの行動を見て感じたことがある。

大人気のインクルーシブブランコ 【©KAWASAKI FRONTALE】

「blueさんの姿を見て、『自分も』と思う方が出てくるのではないかと思います。遊具で育った子どもたちが、いつか自分もblueさんのように地域にお返ししようと考える。そのような好循環が川崎市に生まれてくると、フロンターレが地域密着の活動を続けてきた意義の一つと言えるのかなと思います」

想いは連鎖する──。

「子どもたちの笑顔は街の宝です。遊具を寄贈していただいたことで公園の魅力や子どもたちの居場所ができたことを嬉しく思います。このようにblueさんとフロンターレのつながりが、こういった形になるとは予想もしていませんでしたが、フロンターレとblueさんの地域に貢献していきたい想いのコラボは意義深いなと思います。この遊具は人の優しい思いが連鎖して生まれたもの。子どもたちは、ここで楽しく遊んで思いやりのある子に育ってくれたら嬉しいです」(福田紀彦 川崎市長/川崎フロンターレ後援会名誉会長)

かじがやドリームスライダーにはふろん太とワルンタの姿も 【©KAWASAKI FRONTALE】

これは1人の市民がワクワクすること、子どもたちが笑顔になる瞬間を作るために遊具を寄贈した優しさに包まれた物語。

「自分がこの社会をよくしよう、この地域をよくしようと考えられる大人に育ってくれたら嬉しいです」

セレモニーの最後にblueさんが子どもたちに伝えた言葉だ。

遊具は20年から30年使用することができる。いまの子どもたちが大人になり、いつか自分の子どもが遊具で遊ぶ未来だってある。そのとき、きっとblueさんのことを思い出すだろう。

メッセージは次世代へと紡がれていく。

(取材:高澤真輝)
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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