【武士が斬る!】vol.24 レース後も楽しめるコンテンツが盛りだくさん!今週末は富士スピードウェイへ
前回の東北大会菅生ラウンドは、決勝日は昨年同様雨模様になりましたが、東北のファンの皆さんの願いが届いたのか、WETレースにはなりましたが、バトルが多くの場所で繰り広げられる素晴らしいレースが展開されましたね !昨年のレース途中での中断から、タイヤの開発や路面改修も行われ、しっかりと昨年のリベンジを果たせたのではないかなと個人的には思います。
今も昔も、屋外で行われるレースイベントでは天候による部分が大きく影響がありますが、こればかりはお天道様のご機嫌次第なので、受け入れるしかありません。でも努力や準備は無駄にならないことを、1年後にしっかりと確認させてくれることも、レースの神様は粋なことをしてくれるなと、そんな風にも感じるのは僕だけでしょうか? 何にせよ、ファンの皆さんにレースをしっかりとお見せできたことが本当に良かったなと思えた週末でした(^-^)
昨年からいつ勝ってもおかしくない状況ながらほんの少しかみ合わないレースが続き、レース数としては16レース目の初優勝は決して遅い方ではないのですが、直接の対象ドライバーがデビュー戦での優勝を遂げたリアム・ローソン選手ということで、その後のシートを得た岩佐選手はかなりプレッシャーがあったと想像します。彼らのターゲットは“Formula 1”なので、見ている目標や定められている成績も、国内のTOP FORMULAのそれではないことは容易に想像できますが、岩佐選手の置かれている立場のプレッシャーを感じることは我々にはできないでしょう。なんせ、岩佐選手の所属はRed Bull Familyですから・・・(^^;
しかし、このレースウィークの岩佐選手は走り出しから非常に落ち着いていて、そしてマシンも決まっているように見えて、流れ的には盤石に見えました。そして予選ではその好調のままポールポジションを獲得しますが、決勝はWETコンディションとなり、どのチームも初めて履くことになる新しいWETタイヤと今年張り替えられた新舗装の路面という不確定要素の中では、ドライで走った予選までの好調はリセットされて、走り出してみなければ分からないという状況でしたが、この週末の岩佐選手は動じませんでしたね。どんな状況でもしっかりと己のやるべきことに集中して、難しいコンディションのレースでも見事に“やり切って”トップチェッカーを受けました。
今年ここまでの8戦中6回の表彰台を獲得している岩佐選手は、トップ坪井翔選手に5ポイント差と迫るランキング2位に浮上してきました。トラブルによりリタイヤを喫した2レースでも第3戦茂木が4位、第5戦オートポリスはトップを走行中だったことを考えても、今年の岩佐&15号車は非常に高いレベルでアベレージしていると言えますし、この優勝でチャンピオン争いの本命に名乗りを上げたと言ってもいいでしょう。
初優勝までの道のりは長かったかもしれませんが、その分、骨太になった岩佐選手は、他チームにとって恐ろしい存在になっていると思います。世界を見据えている岩佐選手が、残りの4戦をどう戦うのかをしっかりと見届けたいと思います。
その他にも昨年までFIA F2で活躍していたザック・オサリバン選手やフォーミュラEで活躍していたサッシャ・フェネストラズ選手、そしてWECでチーム代表兼ドライバーとしてフルに活躍している小林可夢偉選手など、世界基準の物差しを持っている選手が数名います。他にも海外経験がありSUPER FORMULAの優勝経験がある選手が5人、そしてここ数年このステージを引っ張ってきた野尻智紀選手がいるという、選手層としては非常に分厚いのがSUPER FORMULAの魅力の一つですよね。
記録としては、予選ノータイム・決勝13位ですが、しっかりと記憶に植え付けることができたパフォーマンスだったと思います。B-Maxレーシングは1台体制で、オーナーの情熱でこのTOP FORMULAのステージで戦うプライベーターです。松下信治選手がドライブしていた2022年の雨の鈴鹿での優勝は記憶に新しいと思いますが、やはり1台体制のプライベーターとしては、なかなかコンスタントに上位に加わることはこれまでできずにいます。その中でこのトップタイムはチームの士気も上がりますし、辛口の本山哲監督にもきっと褒められたことでしょう(^^) 今後の成長に期待せずにはいられませんね !
今回予選3位に入った阪口晴南選手も光る走りを見せてくれました。決勝こそ順位を下げて5位になってしまいましたが、ここまで8戦中6戦で入賞を遂げています。予選で後方に沈んでいるときでも粘り強く、チームの戦略と共に上位に進出してくる様子は非常に力強いレースをしているといつも感心させられます。こういうレースを続けている先に未来が開かれてきたドライバーを何人も見てきました。晴南選手の粘り強い、そして切れ味の鋭い走りにも注目していきたいと思います。
今回のレースも2022年最終ラウンド鈴鹿から続いている無限 ・トムス・ダンディライアンのTOP3チームから優勝者が生まれました。2位にも“おかえりポディウム”のトムスのサッシャ選手が入りました。2022年の菅生ラウンドで初優勝したサッシャ選手はこの年シリーズランキング2位を獲得した実力者です。復帰当初はコーナリングスピードの速いSF23に手を焼いているように見えましたが、やはり、というか流石、しっかりとトップレベルに戻してきましたね。絶好調の坪井選手&1号車(36号車)と共に、37号車チームが復調となると、チームランキング争いも一層過熱してくると思いますので、こちらにも目が離せません !
そしてチャンピオンナンバーのゼッケン1を最終盤で見事にパッシングした福住仁嶺選手が今季初の表彰台である3位に入りました。今年は少し苦戦しているように見受けられましたが、トップ3チームの牙城を切り崩すNo.1の刺客は仁嶺選手だと思っています。チームKCMGにとってもとにかく欲しい“優勝”ですが、今回のレースも仁嶺選手がその可能性を大いに感じさせてくれました。今回も、もし雨が降り続かなかったら、もしセーフティーカーが入る回数が少なかったら、8号車の順位はもっと上だったかもしれません。
先日富士で行われたスーパーGTのスプリントレースでも、仁嶺選手はトヨタ移籍後の初優勝を遂げました。昨年もSUPER FORMULAで勝つポテンシャルはしっかりと見せてくれていましたので、その日がくるもの近いような気がしています。
先述したように、8号車陣営は、雨は少なくなる方の内圧設定に賭けていたようで、田坂エンジニアに後日聞いたところ、「レースの最後に“いいように”内圧を設定しておいて」とタイヤマンに指示していたと話していました。
そしてこの“いいように”という指示を受けて内圧設定したのが“優しきタイヤマン”の岡本克彦さんです。田坂エンジニアが絶大な信頼を置いているのが分かるエピソードですが、仁嶺選手の3位表彰台は岡本さんの絶妙な内圧設定が大きく寄与していたことに疑いの余地はありません。そしていつも、「あとちょっとで勝てそうだよね !」と嬉しそうにそして楽しそうに話してくれる岡本さんでしたが、信じられないことに菅生レースの翌日急逝されました。サーキットではいつも通りの元気な姿だったので尚更信じられません・・・
私のチームでもタイヤマンとして、クルーに入って頂いたことが何度もありましたし、本当にレースが好きで、情熱を持っていつも取り組んでいらっしゃった姿が今も目に浮かびます。何より誰にでも優しく、面倒見がよく、たくさんの人に慕われていました。今でもサーキットに行けばおっきな身体にクシャクシャな笑顔でレースの話をする岡本さんに会えそうな気がしていますが、そう思うのは私だけではないでしょう。
誰よりもレースにロマンを抱き、その人生を駆け抜けた岡本さんのご冥福をお祈りします。いつまでもサーキットの空の上でみんなを見守っていただきたいと思います。
岡本さんの情熱を引き継いでいってくれる若者はたくさんいますし、私もその一人です !これからも天国の岡本さんに喜んでもらえるようにいいレースをみんなでしていきいましょう !!
さて今回も長文のコラムとなりましたので、この辺でm(__)m
この週末、私はテレビ放送の解説とステージイベントなどにもお邪魔します。そしてハロウィン月ということもあってイベントもたくさん用意されているみたいです !富士ではおなじみになりつつあるAFTER RACE GRID PARTYも開催されるので、レース後も楽しめるコンテンツ盛りだくさん !!今週末は是非富士スピードウェイにいらして下さい。そして来場できない皆さんは放送でSUPER FORMULAの熱いバトルをお楽しみくださいね !
ではまた!
日本のトップカテゴリーで活躍したレーシングドライバーとして活躍。プライベートチーム「つちやエンジニアリング」のチームオーナーでもある。現役を引退した現在は、ドライバー・エンジニア・メカニックの育成に務め、モータースポーツ界に大いに貢献し多方面で活躍している。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ