オリックス戦力分析 ('25)
はじめに
昨年の悔しさを胸に奮起した野手陣、相次ぐ長期離脱の中で新戦力が台頭した投手陣と収穫もあった一方で、世代交代や底上げという点では課題も残った。
本稿ではその'25シーズンの戦力分布をデータから振り返り、続投を表明した岸田監督2年目のドラフト戦略の行方を探る。
前提条件
FIP(Fielding Independent Pitching)とは、守備の影響を排除して投手の純粋な投球内容を評価する指標であり、FIP-はそのリーグ平均を100として指数化した値である。
防御率ベースや失点率ベースなど算出方法は様々だが、本稿では下記の式を用いた。
FIP- = FIP ÷ パリーグ平均FIP × 100
これらの数値を基に、年齢を横軸、FIP-を縦軸、イニング数をバブルの大きさで表したバブルチャートを作成し、投手陣の分布を可視化する。なお、グラフの視認性を考慮し、一定イニング数以上の投手のみを対象とした。
一方、野手の分析には「wRC+」を使用する。
wRC(Weighted Runs Created)は打者が創出した得点量を示す指標であり、wRC+はそれを打席数で補正したうえでリーグ平均を100として指数化した値である。算出式は下記の通りで、バブルの大きさは守備イニング数とした。投手同様に、一定イニング数以上の野手のみを対象としている。
※球場補正なし
wRC+=(wRC÷打席)÷(リーグ総得点÷リーグ総打席)×100
また、ポジションごとに筆者の独断でAからEのドラフト優先度を設定し、最終的な指名予想に反映する。
それではまず投手陣の分析から見ていこう。
戦力分析
先発投手
二軍では、佐藤や高卒2年目の東松・宮國、高卒新人の山口など、一定水準の成績を記録した投手もいたものの、突出した成績を残した椋木が一軍先発の壁に弾かれ、将来が安泰とは言い難いのが現状である。
さらに、宮城は早ければ来季、山下も2年後にはポスティングの可能性があり、田嶋は来季にFA権を取得予定だ。現存戦力だけでの見通しは厳しく、ローテーションを支えうるポテンシャルの高い先発投手は継続的に補強する必要があるだろう。
ドラフト優先度
高卒B 大卒B 大社C
中継ぎ投手
その上、今季1年を通して投げ抜いた中継ぎは、マチャド・ペルドモの両外国人のみ。中盤以降に合流したベテランの山岡・岩嵜や、ロングリリーフに回った髙島・片山、大きく成長しクローザーも任された才木らを中心に立て直しを図ったものの、来季以降も同じ体制で継続できるかは未知数に近い。
二軍では、横山楓・権田らが一定のアピールを見せたものの、その他は中堅組の調整色が強いのが実態だ。
大江の引退により若手左腕中継ぎの存在が完全に途絶えたこともあり、ドラフトでの補強も十分考えられる。
ドラフト優先度
大卒C 大社C
野手全体
若手では、太田・紅林の二遊間コンビがさらなる成長を見せたものの、今季頭角を現したといえるのはドラフト1位新人の麦谷のみである。
二軍でも来田・杉澤といった外野手が昨季同様に一定の成績を残したものの、一軍定着には至っていない。
特に左打者は、一軍でwRC+100を超えているのが西川・西野のみであり、数年後にスタメンを張れる左打者の台頭、あるいは補強が急務だ。
詳細は、次以降でポジション別に確認していく。
捕手
その一方で、一軍では福永、二軍では堀が守備面で順調な成長を見せたものの、打撃面ではまだまだ物足りなさがあり、世代交代への明確な道筋は描けていない。
シーズン途中には捕手不足を理由と見られる練習試合の中止もあり、次世代を担う捕手の補強は急務である。
ただ、今ドラフトでは候補が少なく、山中の本格的な捕手転向が現実味を帯びる可能性も否定できない。
ドラフト優先度
高卒C 大卒B 大社B
一塁手
太田や山中らのオプションや、比較的助っ人の獲得難易度が低いポジションであることなどを踏まえると、他ポジションと比べて現時点での補強の優先度はそれほど高くない。
ただ、二軍で主に守った内藤の戦力化にはまだ時間を要する見通しであり、その間を埋め将来的に競争する相手として次世代の大砲候補を獲得する選択肢も検討に値するだろう。
ドラフト優先度
高卒D 大卒C 大社D
二塁手
二軍では、遠藤・デール・宜保・清水といった育成組が打撃でアピールを続けているが、その下の世代には有力な候補が現状いない。
他ポジションからのコンバートや新たな有望株の獲得を視野に入れる必要があるだろう。
ドラフト優先度
高卒B 大卒C 大社D
三塁手
彼らの年齢を踏まえても、ドラフトで最も補強優先度が高いポジションであることは疑いようがないだろう。
二軍では、横山聖や内藤ら将来を期待される選手が代わる代わる起用されているが、現時点でこのポジションに定着する明確なビジョンは描きにくい。
ドラフト優先度
高卒C 大卒A 大社A
遊撃手
彼の離脱があった中でも、期待された選手たちは十分な結果を残せず、 横山聖まで年齢が空いていることに加え、そもそもの頭数の少なさを考えると、そろそろドラフトでテコ入れを図る時期に差し掛かっているのではないだろうか。
二軍では、横山聖が多く出場し打撃面でも一定の向上を見せたものの、守備面では依然として課題を残す。将来を見据えれば、新たな高卒遊撃手の獲得も十分に検討されるだろう。
ドラフト優先度
高卒B 大卒B 大社B
左翼手
彼の離脱時には、2年ぶりに左翼を守った中川も好成績を残しており、一軍の同ポジションでの打撃面はおおむね安定していたと言えるだろう。
ただし、全体的に年齢層が高く、守備面での課題が見え始めているのも事実だ。数年後を見据えれば、池田や茶野のさらなるステップアップに期待したいところであるが、ドラフトでの補強も考えられなくはない。
ドラフト優先度
高卒C 大卒C 大社D
中堅手
その一方で、麦谷より下の世代はおらず、右打者の候補も限られているため、ラインナップの柔軟性や選手層を考慮すると、ドラフトでの補強が全く不要なポジションとは言えない。
ドラフト優先度
高卒B 大卒C 大社D
右翼手
その一方で、次世代の筆頭候補である来田は、波が大きく一軍定着には至っておらず、将来的な競争を加速するため、ドラフトでの補強も選択肢となる可能性はある。
ドラフト優先度
高卒C 大卒C 大社D
指名打者
助っ人野手に求められる能力の高さと市場供給のギャップ、さらには全体的な野手の高齢化を考慮すると、来季以降も同様の起用が続く可能性は高い。
打力が高い一方で守備力に課題がある選手が多い現状を踏まえ、新たに獲得する選手には最低限の守備力を備えていることが求められるだろう。
ドラフト優先度
大卒E 大社E
ドラフト優先度考察
現状および将来的にも安泰といえるポジションはなく、ここ数年のドラフトの例に漏れず、ポジションを必要以上に意識せずに良い選手を獲得しにいく方針は変わらないと予想される。
ただ、その中でも、今年のドラフト市場には優れた打力を備えた内野手候補が比較的多い。
昨年に支配下で1人も内野手を獲得しなかったこともあり、今年は積極的に彼らを狙う可能性が高いのではないだろうか。
おわりに
しかし、今年は中堅選手の奮闘を中心とした見事な巻き返しによりAクラスに返り咲き、野球の奥深さを改めて実感させられた。
もっとも、本分析で度々触れたように、再び頂点に君臨するためには、克服すべき課題が依然として多く存在する。若手選手の突き上げや首脳陣による底上げなどがまだまだ足りず、チーム全体で抱える課題と言えるだろう。
このチームが新たな時代を築けるか否か。その第一歩となる今年のドラフトに、大きな期待を寄せたい。
※リンク先は外部サイトの場合があります
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ