【駅伝】「古櫻復活」を誓う、それぞれの夏(17) 新雅弘監督に聞く

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練習を見つめる新雅弘監督 【日本大学】

最下位に終わった今年の箱根駅伝から7ヶ月。日本大学陸上競技部特別長距離部門は、個人として、チームとしての成長の鍵を握る夏合宿を、8月上旬から北海道釧路市でスタートさせた。
3年連続の箱根駅伝出場、そして上位進出への巻き返しを図るために、就任3年目となる新雅弘監督(1983年経済学部卒)はチームをどう導いていくのか。今年の箱根駅伝の振り返りと、チームのこれからについて聞いた。(取材日:8月15日)

結果は悪かったが、経験は次につながる

−今年の箱根駅伝の結果はどう受け止めましたか?
年末から体調不良者が全部で6人出て、スタート前から厳しい戦いになるというのは覚悟していましたので、その結果について落ち込むことはなかったですね。

−序盤から苦しい展開になりました
1区はもっといけると期待していたんですけど…しんどい場面で我慢できずに前に出ていって、潰れてしまった。2区のシャドラック(・キップケメイ)は1週間前に風邪をひいたこともあったので安全に走って、ただ参加したというだけでしたし、3区の冨田(悠晟)も、朝は熱がなかったものの体調が思わしくなくて、走り終わって帰ったら39度5分ありました。4区の選手も朝3時半頃に39度の熱があると言ってきたので、復路を予定していた大仲(竜平)をすぐに起こして平塚に行かせました。
チーム内にウイルスがまん延していたのでしょうが、同時に心の緩みもどこかにあったのかもしれません。昨年、1年目でうまいこといったので、簡単に箱根に出られると思ったり、出れば何とかなるんじゃないかという気持ちの甘さがチーム全体にあって、それが年末に体調不良者が出ることにつながったのではと思います。

−9区では繰り上げスタートになりました
前半を順調につないで、後半に自分のペースを上げて走った結果、繰り上げになるのはいいからと、選手たちには話していたのですが、最初からダメな状態での繰り上げは想定していませんでした。前半から攻めていって、力尽きての繰り上げなら良かったんですが…。

−初めて箱根を走った選手も多くいました
今回は新しいメンバーを多く使ったので、彼らは箱根の舞台を味わうだけでうれしかったと思います。5区の鈴木(孔士)も、ずっと前から山登りをやりたいと言っていたのが実現して、反省点も口にしているので、次につながると思います。
全体の成績は悪かったですが、個人個人が次につながるいい経験をしたと思っていますし、入れ替えになった選手もその悔しさを次につなげてほしいですね。

インタビューを受ける新雅弘監督 【日本大学】

ミーティングの様子 【日本大学】

上級生が1年生に刺激を受けている

−合宿には1年生が6名参加していますが、参加メンバーの選考はどのように?
ふだんの練習を見て選んでいますから、練習を積めていない選手を外しただけです。こちらに来て、練習を積めなかったら意味ないですし、ふだんの練習の結果でも1年生の方が強い。10000mまではみんな走るんですが、残り10kmがあるので、スピードを持っていても練習を積めていない選手に21kmを走らせるのは怖い。だから、夏はやったもん勝ちですね。今回箱根を走った選手でも、次に必ず出られるという保証はないです。

−釧路でのこの1週間は足づくりということですが?
そうですね。今年も集団走ばっかりやっていますが、設定タイムは去年より上げています。1週間目で、今が一番疲れのピークじゃないですか。予選会はトータルのタイムでの勝負ですから、集団の中で励まし合っていくのが大事で、個人プレーをしたら前半でいって潰れてしまいます。集団走をやっていく中で、ここから何人が個人でレースをやれるかを見極める感じです。

−ここまでの成果はどうでしょう?
昨年よりも良いと思います。ただ、今日は後半に集団がバラけてしまった。1人がダメになると連鎖反応を起こしてしまう、それがダメなんです。1年生が遅れていくぶんにはいいけれど、1年生が目いっぱい走っているのに、上級生が集団から離れてしまうと、僕らも離れていいかっていう連鎖反応が出てくる。それが一番怖いですし、避けたい。今日だって、上級生が遅れたから、1年生がいいんじゃないかと思って遅れてしまう。遅れていなかったら、みんなついてきたと思います。

−箱根駅伝を2度経験した3・4年生に変化は?
それぞれ自信をつけていますね。自信ありすぎるのも困るんですけど(笑)。ただ、4年生が引っ張れるチームだったら強いと思います。うちには上級生に絶対的に強い、エースという存在がいません。みんな同じような力で飛び抜けた選手がいないので、一致団結してやっていく総合力のチームです。そういう意味では、上級生に刺激を与えている1年生たちに期待しています。

−1年生がもたらす影響とは?
1年生たちは個人としてもみんな強いし、覚悟を決めて合宿に来ている。練習もしっかりこなしているし、対応力もすごいなと思って見ています。それに刺激されて上級生たちも頑張ってくれていますね。2年生、3年生は1年生がついてきているので集団を離れられない。1年生が押し上げていることでチームに安定感が生まれているし、私はこういう雰囲気が欲しいんですよ。

練習中に選手に鼓舞する言葉をかける新雅弘監督 【日本大学】

シード権争いの勝負ができるように

−監督就任当初からの「3年計画」の3年目となりますが?
本当は3年目で箱根に出るという予定だったのが、1年目、2年目に出てしまった。次は結果が求められるので、予選会をきちっとクリアして本戦に出るのはもちろん、3年目なのでシード権争いに加わりたい。まだ他のチームのように「シード権を獲る」と言えるほどチームができていないので、シード権争いに加わって獲れるか獲れないかという際どいところの勝負ができればいいなと思います。

−シャドラック選手への期待も大きいと思いますが?
そうですね。今はケニアに帰国して、標高が高い場所で練習しています。予選会はまだ暑い時なので走るけれど、寒くなるとどうなのかと…、本戦は2年続けて本来の力を発揮できませんでしたからね。ただ昨年は1週間前に風邪をひいてしまい、どうしようもないと思ったんですけど、次は3度目ですから慣れてくると思うので、やってくれると思います。

−5月の全日本大学駅伝の予選通過については?
全日本の予選会は何のプレッシャーもなかったので、本当によく通ってくれたと思いますが、次のことが心配でした。箱根予選会の2週間後に全日本なので、どうなるんだろうって。箱根の予選会でボロボロになると思うし、昨年で言えば予選会後に練習を再開するまで3週間以上かかりましたから、2週間ではちょっときつい。だから、出ても後ろの方の順位になるか、最悪棄権になる可能性も頭の中をよぎったりしました。出場権を獲ったからには上を目指したいのですが、とにかく1番は箱根予選会で、力を100%出していくこと。もしそれがいい結果になれば、全日本もいい流れでいけるかもしれません。

−箱根予選会に向けて今思うことは?
日大は、総合力がなかったら予選会は通らない。エースがいませんので、みんなで励まし合って、一段一段、階段を昇っていく。1つ1つ練習していく。それでチームの土台を作っていくという段階です。しっかり土台を作ったら絶対崩れませんから、それを目指しています。


−今後へ向けての抱負をお願いします
箱根駅伝はそんなに甘いものでもないし、各大学もどんどん強化しています。私たちも大学側からいろいろ援助していただいて、合宿も長い期間できるなど、いろんな方々にフォローしてもらっています。また周囲の皆さんからも応援してもらっているので、それを励みにしっかりやっていきたいと思います。

同じ目標に向かう一体感の走り 【日本大学】

充実した夏合宿を迎えている選手たち 【日本大学】

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著者プロフィール

日本大学は「日本大学競技スポーツ宣言」を競技部活動の根幹に据え,競技部に関わる者が行動規範を遵守し,活動を通じた人間形成の場を提供してきました。 今後も引き続き,日本オリンピック委員会を始めとする各中央競技団体と連携を図り,学生アスリートとともに本学の競技スポーツの発展に向けて積極的なコミュニケーションおよび情報共有,指導体制の見直しおよび向上を目的とした研修会の実施,学生の生活・健康・就学面のサポート強化,地域やスポーツ界等の社会への貢献を行っていきます

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