私のミッション・ビジョン・バリュー2025年第10回 林雅人コーチ「日本から世界へ」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

2025年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2025年第10回は林雅人コーチです。

(取材・構成 佐藤拓也)

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Q.今回のMVV作成のために面談を行ったと思いますが、今まで第三者に自分の思いや過去について深く話をしたことはありますか?
「ありますね。FC今治に所属していたときも、オーナーの岡田武史さんを中心にスタッフの教育や選手の教育という点で、人として成長するということに力を入れていて、自分たちの未来やミッションやバリューをしっかり持つためにそういった取り組みをしていましたし、同時にクラブとしてのフィロソフィーも掲げていて、それに付随したプロミスを設定していました。指導者としてのMVVを作っていたので、今回も入りやすかったです」

Q.あらためて、MVVを作成するための面談をしてみてどう感じましたか?
「自分の位置づけとか、現在関わっている人たちに対して、自分の価値や存在意義をしっかり設定して意識できたと思うので、すごくいいことだと感じました」

Q.このMVVは今治時代から変化はしているのでしょうか?
「僕はオランダでサッカーを勉強してきた経験があるので、世界基準というものを伝えたいという思いがMVVに込められていると思います」

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Q.まず、MISSIONを聞かせてください。「世界基準の思考を伝え続ける」「指導者が育ち選手が育つ」の2つです。こちらはどういった思いが込められているのでしょうか?
「指導者の道に進み、オランダで学んだ際、最終的なゴールとして、FIFAのインストラクターになるという目標を立てたんです。自分一人で直接指導できるのは、数十人程度ですよね。指導インストラクターとして、30名の指導者に影響を与えることができれば、その30名がそれぞれ数十人に指導して広がっていくんですよね。自分の根本的な使命として『日本サッカーを強くしたい』という思いがあります。インストラクターになるというゴールがある中、世界で指導してきた経験や基準をいろんな選手や人に伝え続け、選手だけでなく、指導者も育ち続けることが、日本が最終的に強くなる方法だと僕は思っています。なので、この2つの言葉をMISSIONにしました」

Q.林さんにとって、2つの言葉が指導者としての両輪なんですね。日本で活動するようになってからも、常に世界の情報は入手してアップデートしている感じでしょうか?
「当時は現地に行かないと見られなかったですけど、今は情報社会なので、日本にいて見ることができる。サッカーでいうと、フィジカル重視か、テクニック重視か、どっちかが先行すると、逆側がそれを上回っていく。それをさらに逆側が勝っていくといったらせん状に発展していくんですよね。今、らせん状のどの位置にあるのかということを見ておかないと乗り遅れてしまうし、先を予想できなくなってしまう。なので、常に見ていますね。家族には『サッカーばかり見て』と言われますけど、仕事なんでね(苦笑)」

Q.水戸の選手たちにも世界基準を求めている?
「水戸の選手もそうですし、アカデミーのスタッフや子どもたちにも伝えています。アカデミーに関しては、技術や戦術だけでなく、競争の厳しさも伝えるようにしています。ヨーロッパは子どものときから本当に激しい競争社会ですから。そこを勝ち抜かないと、プロになることはできないんです。そういうことは現地にいないと分からないものがあるので、そういうことを伝え続けていきたいと思っています」

Q.端的に日本と世界の差は何だと思いますか?
「スピード感ですね。スピードの基準を上げる。速すぎるとボール扱いが難しくなるんですけど、その“速すぎる”を普通の基準にするのが世界基準。普段の練習でもミスをしてもいいから、高いパススピードを要求しています」

Q.試合の中で選手たちがピッチの中で戦い方を変化させることも世界との差だという話を以前お伺いしたことがあります。
「そうですね。なので、今年の水戸にはそれを落とし込んでいます。第30節いわき戦は引き分けてしまいましたけど、選手たちは自分たちでジャッジして変化を加えることにトライしていました。うまくはいきませんでしたけど、だいぶ進んできたなという感触はあります」

Q.第30節いわき戦まで勝ちきれない状況が続きましたけど、チームとして変化も見えていたのでしょうか?
「見えています。サッカーは不確定要素が多くて難しいのですが、戦い方の整理は選手のなかでだいぶできてきていると感じています」

Q.その基準をぶらさずにこれからも指導していくということですね。
「そこがぶれてしまったら、自分の存在意義がなくなってしまいますから」

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Q.次はVISIONについて聞かせてください。「日本の指導者が世界各国で活躍している」「日本のサッカー選手が世界各国で活躍している」です。こちらはいかがでしょうか?
「すべては『日本サッカーを強くしたい』という思いがあり、FIFAインストラクター就任が達成されたときにどういう絵になっているかというと、『育てた』という言い方は好きじゃないんですけど、僕が関わった指導者がヨーロッパのクラブで指導しているとか、そういう状況にしていきたいと考えています。そして、インストラクターとして関わった指導者の関わった選手たちが海外のトップリーグのクラブで活躍する。そういう絵を思い描いています。現在、世界の舞台で戦っている選手は増えましたけど、指導者はまだ全然出てきていない。そこがプラスされたら、日本サッカーはもっと強くなると思っています。そういう思いを込めた言葉です」

Q.現在、トップチームのコーチを務めていますが、今後インストラクターに向けてのキャリアビジョンをどのように考えていますか?
「今治ではユース監督兼アカデミーダイレクターを務めていました。さらに愛媛県サッカー協会のインストラクターもしていました。今年から水戸に来て、すぐに茨城県のインストラクターを務めることは仕事的に難しいかもしれませんが、タイミングが合えば、やってみたいと思っています」

Q.指導者が世界で活躍するために必要なことは何だと思いますか?
「だいぶライセンスの互換性が出てきていて、もしかしたら、近い将来日本のS級指導者ライセンスがUEFAのProと互換性を持てるようになるかもしれない。そんな可能性が出てきています。あと、語学はしっかりやっておかないといけない。そして、日本を飛び出す勇気を持たないといけません。失敗してもいいからチャレンジしてみるという姿勢が大事かと思います。何より、日本サッカーの活躍が一番重要だと思います。今、森保一さんが日本代表の監督として結果を出している。もしかしたら、森保さんに欧州のクラブから声がかかるかもしれない。現在、U-20日本代表がU-20ワールドカップを戦っていますが、いい結果を残せば、船越優蔵監督は海外のクラブの目に留まると思う。だから、U-20日本代表には結果を出してもらいたい。欧州は結果がすべての世界ですから。今、アジアの国で活躍している指導者は増えていますよね。僕もタイと中国で指導をした経験がありますが、それはアジアで日本が結果を出しているし、育成でたくさん優秀な若手を育てているからなんですよ」

Q.サッカーの世界は、国籍よりも結果をフェアに見てくれる世界なのでしょうか?
「だと思いますよ。サッカーはサッカーという考えですよね。だから、世界で日本サッカーが結果を出すことが重要だと思っています」

Q.日本サッカーが世界トップレベルに立つためにも指導者のレベルアップが必要ということですね。
「それはマストだと思っています。どんどん世界に出て、世界を知っている人たちが増えてもらいたい。とはいえ、世界を知っているからといって、日本サッカーのすべてを変えられるわけではないんです。文化が全然違いますから。育成に関して、オランダでは10歳から1年勝負で篩にかけられるんですよ。能力の高い選手はいいクラブに引き抜かれていきますし、活躍できなかった選手は次の年にチームにいられなくなります。子どもの頃から毎年死に物狂いなんですよ。だから、練習で100%でやる習慣が身についている。今、水戸のトップチームの選手たちは昇格争いのプレッシャーの中で戦っていますが、オランダの子どもたちは10歳の頃からずっとそれを味わっているんです。チームに残れなければ、プロへの夢は途絶えてしまうわけですから。でも、日本をオランダと同じようにできるかというと、無理なんですよ。日本には日本の文化がある。それを理解した上で変化をもたらしていかないといけないんです。スキルにおいて世界基準を求めないといけないですし、日々の練習から死に物狂いでプレーさせるような雰囲気を作らないといけない。そういう環境を作っていかないといけないと思っています」

Q.やるべきことがたくさんありそうですね。
「そういうことを伝えることが今の僕の役割だと思っています」

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Q.VALUEについて聞かせてください。「情熱・ハッピー・チャレンジ・自立・今・責任・必然・多様性・言葉」。こちらはいかがでしょうか?
「今治で岡田武史さんが提唱しているVALUEと同じ言葉です。自分の姿勢の部分ですよね。指導者が『情熱』を持って何事にも挑戦しないといけないですし、『ハッピー』というのは、相手に笑ってもらいたかったら、自分も笑っていないといけないし、何をするにしても、楽しもうという姿勢を表した言葉ですね。『チャレンジ』は、挑戦して失敗してもいいんです。大事なのはその失敗から何を学ぶかということ。『自立』というのは、自分を律するという自律もありますが、自分から考えるという姿勢が大切だと思っています。『今』は未来を見据えながらも、今できることは何かを常に考える姿勢が大事なんです。今を大切にするという考え方ですね。そして、『責任』を持ち続けないといけないですし、『必然』というのは、岡田さんがよく口にする格言があって、今起きていることはすべて必然だと言っていて、良いことも、特に悪いことが起こったときこそ、それは必然であって、チームや自分に足りないものへの何かしらのメッセージが与えられているという考え方なんです。勝てなかった試合は、たまたまでも偶然でもなく、必然であって、『このままでは昇格できないぞ』というメッセージだと受け止めて、そこから何をしないといけないのかを考えるようにしないといけない。それが『必然』という考え方です。物事にはすべて意味がある。その意味を考える。特に自分に向けてポジティブに捉えるという考え方です。『多様性』に関して、僕は今までいろんな国に行きましたけど、世界にはいろんな人がいるし、いろんな考え方があることを学びました。いろんな方面からの考え方を取り入れていくことが大事で、そのためにも多様性を認めていかないといけないんです。最後の『言葉』は自分の発する言葉に責任を持つ。言葉の力を信じて、何を言うか、いつ言うかということを意識しようという考えですね」

Q.指導者人生において、岡田武史さんとの出会いが大きかったのですね。
「岡田さんは考え方を大切にしている人。考え方が良くないと、能力や情熱があってもうまくいかないという考えを持っている。本当にその通りだと常々思っています。岡田さんからの影響は大きいですね」

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Q.最後、スローガンについて聞かせてください。「日本から世界へ」。今まで話してきたことを表現した言葉ですね。
「僕自身もそうですけど、いろんな選手や指導者も同じ思いを持っていると思います。世界をアッと言わせたいですよね」

Q.林さんから見て、日本と世界の距離は近いですか? それともまだまだ遠いですか?
「僕がオランダから帰ってきたときは『遠い』と感じていました。でも、今はかなり近づいたと思っています」

Q.日本の指導者も海外で結果を残せると思いますか?
「できると思いますよ。世界の指導者が日本に来ても結果を残せない人もいますし、逆もあると思います。海外の方が合っているような日本人の指導者もいると思います。サッカーのテンポやスピード感はヨーロッパの方が一段階か二段階ぐらい上だと思いますけど、やっているサッカー自体は同じなので、突拍子のない戦術があるわけでもないですから。大丈夫だと思います」


Q.残り試合に向けての意気込みを聞かせてください。
「自動昇格を目指して戦います。そのためにも攻撃を担当する立場として、1試合平均1.5得点という結果を残さないといけないと思っています。シーズン合計57得点が目標です。第30節いわき戦で18試合ぶりに無得点に終わってしまいました。それは修正していかないといけない。第32節終了時点で50点。残り6試合でなんとしても最低でも7得点を取るために試行錯誤して戦術を考えて、落とし込んでいくだけです。MVVじゃないですけど、目指すゴールは決まっているので、絶対に目標を達成して、昇格を果たしたいと思っています」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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