FC今治、耕作放棄地を「みんなの田んぼ」へ 地域で未来を育む農プロジェクト
初対面の参加者同士でも、自然と「こうやって植えるんだよ」と苗の植え方を教え合ったり、慣れない田んぼで体を動かしながら笑いあったり。和やかな雰囲気の中、参加者全員の力を合わせ、約1反の広大な田んぼを手作業で無事に植え終えることができました。 普段何気なく食べているお米が、どのようにして食卓に届くのか。「育てること」の大切さと喜びを、参加者一人ひとりが実感できた一日だったと感じています。
「耕作放棄地をなくしたい」仙遊寺の願いとFC今治の挑戦
住職のもとには、檀家さんから「田んぼの維持管理が難しい」という相談が年々増えていたといいます。 「私自身も修行に来る人たちと一緒に、水田の管理にあたっています。この土地も、もしFC今治さんがやらなかったら、私がサトウキビなどを作ろうと思っていました。耕作放棄地をそのままにしておくことだけは避けたいですから」と住職は当時の心境を語ります。
「耕作放棄地がたくさんあることを知り、そこから1反の土地をお借りして、しまなみ野外学校のリーダー・がってんが中心となって耕し始めました。まずは草刈りや草取りから始め、荒れた土地を稲を植えられる田んぼへと変えていく作業です」
ただ米を作るだけでなく、どうすれば環境にも優しい農法を実践できるかを追求し、自然農法を学ぶために松山へも足を運んだといいます。
「田んぼ作りについては、「シゼンタイ」の佐伯さんが師匠でした。田植えの仕方から日々の水管理まで、佐伯さんが現地に来て指導してくださり、その土地の環境や状況を見ながら、手探りでノウハウを身につけていきました」
「農業は修行だ」仙遊寺住職が語る、人生を豊かにする学び
「農業は修行だ」と語る住職。
「例えば、食べ物に対する感謝の気持ちは、やっぱり自分で汗をかいて育てた作物を食べることで育つと思うんだよね。それに厳しい自然の中での労働は、学問だけではない、広い意味での勉強になるでしょう」
「昔の人には知恵があったんです。例えば、水平を測るのに、水を入れたパイプを使えばいい。垂直を測りたければ、糸に石を吊るせばいい。こういう知恵は、学校の勉強だけで身につくものじゃないでしょう?」
「人間だからできる『体験』にこそ価値がある」という信念のもと、FC今治では「しまなみアースランド」での環境教育プログラムやmoricco、「しまなみ野外学校」での野外教育、そして昨年からは今治明徳学園が経営する「FC今治高校里山校」のカリキュラムのなかでも、実践や体験に重きを置いた教育を一緒にサポートしています。実際に、FC今治田んぼでは昨年、FC今治高校里山校の1年生たちと一緒に田植え、稲刈りを実施しました。
「自分で汗を流して、しんどい労働をすることこそ、大事なんです。何でもすぐにスマホで調べるのではなく、自分で考え、判断する力を養ってほしい。学歴よりも大切なのは、何を学んだか、そしてそれをどう活かすか。それしかないと思います」
田植えイベントで生まれた、かけがえのない交流
子どもたち兄弟と3人で参加してくれたお母さんは「FC今治さんは、なかなかできない体験をいろいろと提供してくれていて、今回の田植えも、普段できないことだからこそ、子どもたちが本当いきいきしているなって見ていました」と、子どもたちの目の輝きが印象に残った様子。
実は、このご家族、前回の「どろリンピック」にはお子さんだけで参加してくれました。その体験がよほど印象深かったのか、「お母さんと弟も行った方がいい!」と、お子さん自身が誘ったそうです。
お母さんは「子どもたちの体験を、親も共有できる機会は本当に貴重です」と、私たちが提供する「本物の体験」が、親子の絆を深めるきっかけになっていることに感謝の気持ちを伝えてくれました。
地域を育む「FC今治田んぼ」の未来
「今治には、まだまだ耕作放棄地がたくさんあります。労力も考慮しながらですけど、そうした土地を活用したり管理したりできる方法も考えていきたいです。
最終的には、『気づいたら誰かが草抜きをしている』ような、地域の人みんなが気にかけるような、そんな場所にしていきたいですね」
ぜひ、あなたもこの「みんなの田んぼ」に参加して、泥だらけになりながら、一緒に楽しみませんか?田植え、稲刈り、そして収穫祭。それぞれの季節に、ここでしか味わえない感動が待っています。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ