【ママさんバレーボール】白いボールを追いかけて⑫ 秋田編 ママさんバレーボール2025 GRACE CUP LEAGUE in秋田

チーム・協会

ファミリーの結束で若さ封じる  スポーツツーリズム求めた新大会

モダンなアリーナに約400人が集結した 【Takehiko Ito】

会場近くの本荘浜からは別名・荘内富士の鳥海山を望める 【Takehiko Ito】

注目集めた隣県対決

 7年前に地域の防災拠点としてできた秋田県由利本荘市防災公園の「ナイスアリーナ」は横一面に4つのコートが取れる巨大アリーナだ。初秋の9月7日、最新の電光ボードに歓迎のメッセージが掲げられる下、20歳から74歳の400人近いママさんバレーファミリーが集った。ママさんバレーボール半世紀超の歴史で新しい試みとして踏み出した大会『GRACE CUP LEAGUE』は3部門を設け、1年に3回、東日本、中日本、西日本に登録チームが集まる。1日で参加各チームが2試合を消化。移動と宿泊面で無理なく県外、地域外のチームとの交流を図れるプログラムだ。2025年は秋田を皮切りに伊勢(11月)、岡山(12月)で予定されている。
 秋田での最初の大会で注目の対決が始まったのは、午後1時過ぎのこと。11チームが参加した「18歳以下の部」は、Aコートで滝沢南クラブ、Bコートで厳美(げんび)の岩手勢が、それぞれ浪岡(青森県)神町(山形県)と対戦した。
 浪岡は平均年齢32歳、神町は35歳と参加チームの中でも若さが売り物のチーム。滝沢南は52歳、厳美は42歳と平均年齢には差がある。くじ引きで対戦が決まると、「よりによってそんな若いチームなんて」という声が選手間で上がったと滝沢南クの三上洋子監督は明かす。創立半世紀を超えるチームで、全国ママさんバレーボール大会や冬季大会にも参加。滝沢市の南中学を活動拠点に、地域の仲間で白球を追ってきた。

結束力で2勝を挙げた滝沢南ク(岩手) 【プロフォートサニー】

厳美(岩手)は親子3組のファミリー集団 【プロフォートサニー】

若さに任せた攻撃を封じる

 今回のメンバーは23歳から73歳と「高低差」の大きなチームで、その分、ベテラン選手の経験が活きた。第1セットの立ち上がりからリードして勢いに乗る浪岡を相手に終盤から粘りのレシーブで応戦。21-19と競り合いから先取すると、第2セットは終始ペースをつかんで21-16と快勝した。ここ数年、東北大会では全国経験のある山形に敗れるなどし、県外チーム相手の勝利は久しぶりという。「最近は合同編成や他チームから補強するチームも多いですが、いつも一緒に練習するメンバーで全国に来て、勝てたのがうれしい」。監督と嘉成優子キャプテンは、そう口をそろえた。
 お隣のコートでも、一関市から参加した厳美が神町の若さを封じた。第1セットこそ落としたが、左右からのしなやかなアタックで第2セットを取り返すと、第3セットはリズムを握って逆転する。「みんなバレーが大好き。1点1点を楽しんだ積み重ねです」とキャプテンの菊池比奈子さん(46)。若いチームとの対戦にも、「自分もそうでしたが、若い選手は一発で決めようとしがち。そこをしのいで自分たちのリズムが出せました」と振り返った。今大会のメンバーに親子3組がいるファミリー集団。初参加の今大会について、「メンバーはみんな子どものスポ少の付き添いや家庭の事情もあるので、3大会があって選べるのはありがたい」と話す。第2戦も勝って、2勝で気持ちよく帰路についた。

「6人制」から生まれた新チーム

 経験に屈した若い2チームでは、中高生の指導者だった葛西百子監督(56)が、6人制時代の教え子を中心に2年前に編成した浪岡が、2敗に終わった。葛西監督は「みんなママさんバレーのルールを覚えているところで、1試合1試合が実戦経験。若い選手が審判員の資格にチャレンジしてくれるので、期待しています。楽しかったです」と笑顔で会場をあとにした。
 さくらんぼの産地で有名な東根市からやってきた神町も、前衛のメンバー編成で試行錯誤しているチーム作りの途上だ。30年の歴史を持つチームだが、他県との交流は今大会がほぼ初体験。高橋厚子監督は「緊張もあって力が出せなかったので、これからも経験を積みたい。若いチームだけに『産休』に入る選手も出てくるので、2年以内に全国大会をめざしたい」と話した。

大会最年少チームの浪岡(青森)は勢いに乗れなかった 【プロフォートサニー】

神町(山形)も今大会の経験を糧に全国大会をめざす 【プロフォートサニー】

 浪岡の葛西監督が「サーブカットからの『ツー』など、ママさんならではの変化があり、勉強になった」と話した通り、若さと運動能力だけでは勝てないのがママさんバレーの奥深さでもある。身近な舞台で実戦に臨みたいチームと経験豊かなチームのこうした交流が、この大会の持ち味であり、なおかつすぐそこの隣のコートに、年齢ではかなり上の、自分たちがめざす姿があるという仕組みだ。
 スポーツツーリズムも見逃せない。「50歳以上の部」で2勝したのは、全国大会常連のファジィ三笠(奈良県)で、この大会の秋田開催が決まったときから照準を合わせてきた。前日に東北の小京都と言われる角館に赴き、試合の合間には国道沿いで女性が売る「ババヘラアイス」にありつくと、翌日は、なまはげ見物で男鹿半島へ足を伸ばした。コート上では第1戦こそ地元秋田を相手に苦戦したが、第2戦は2セット計21失点で快勝。大ベテランの秋川弘子監督は「いつも通りに楽しくバレーができた」と、残暑にも涼しい顔だった。

奈良の名門ファジィ三笠は危なげなく2勝をマーク 【プロフォートサニー】

温泉と郷土料理を堪能

「50歳以上の部」で同じく2勝したのはバレーどころ岡崎みなみBa(愛知県)で、セッター兼監督の石川和子さん(62)の高速平行トスなど速攻、ツーなどで圧倒し、サーブもサーブカットも盤石の戦いぶりだった。「食事と観光で、秋田遠征は決まりでした」とキャプテンの平川千秋さん(58)。宿泊も温泉つきで郷土料理の夕食も堪能、今後は県内のいそじ年代の大会に臨むためのリフレッシュができた格好だ。

石川選手④のトスさばきが冴えた岡崎みなみBa(愛知) 【プロフォートサニー】

 そうした遠征組を迎えた地元秋田のチームでは、秋田あすか(秋田県)が「18歳以上の部」で2勝、「60歳以上の部」で秋田あすかドリームが2勝と“姉妹”で全勝した。秋田市内で活動し、地元の連盟杯で5連覇中の名門チームで、姉貴分は8月の全国ことぶき大会で敗れた雪辱を果たした。今回、妹分で出場した古瀬ルミ子さん(56)ら50代は、年齢バランス的にも姉貴分チームに昇格するタイミングだという。遠方の大会に遠征する年代ではと尋ねると、「自由に遠征に行けるのは、60代になってから」という答え。50代はまだ仕事や家庭との兼ね合いが強い。それだからこそ、近隣の会場を選んで気軽に参加できる新大会の意味がある。
 今回、「60歳以上の部」に参加したのは地元あすかドリームのほか、東北が3チームに愛知、岐阜から3チーム。選手100人の平均年齢は67歳近い。彼女たちが健在を示すと同時に、その姿から40代でも50代でも、「まだまだバレー人生、これから」と自信を持てること。それがこの催しの本当の価値になるだろう。
取材・文/伊東武彦

地元勢で唯一、2勝をマークしたのは秋田あすか 【プロフォートサニー】

「姉貴分」の秋田あすかドリームも60歳以上の部で連勝 【プロフォートサニー】

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著者プロフィール

バレーボールを通して会員の心身の健全な発展と、その輪の広がりを願いあわせて、社会的価値のあるものとして生涯スポーツに導くことを目的としてガイドラインの設定と各種大会の運営を行っています。

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