なぜ運動したくてもできないのか?年代による運動をしない理由の違い

笹川スポーツ財団
チーム・協会
笹川スポーツ財団(SSF)は、健康関心度とスポーツライフに関する調査を実施しました(2024年8月)。

健康への関心は一定程度ある反面、運動実施の習慣化には至っていない人が多く、やりたくてもできない“ジレンマ”が課題として浮かび上がり、そのジレンマの要因を探るために運動の促進・阻害要因との関連を分析しました。結果、年代によって運動非実施の要因が異なることがわかりました。

本文:水野 陽介(笹川スポーツ財団 シニア政策オフィサー)

【写真:Adobe Stock】

健康への関心が低い「低関心」群の割合は7.0%にとどまる

先行研究に基づいた健康関心度尺度を用いた。同尺度は意識・意欲・価値観の3因子12項目について「そう思う」から「そう思わない」までの4件法で尋ねるものである。得点化した合計(12-48点)を3区分し、低関心群(12-24点)・中関心群(25-36点)・高関心群(37-48点)とすると、それぞれの割合は低関心群7.0%、中関心群76.1%、高関心群16.9%であった。

健康関心度尺度(合計得点)のヒストグラム 【笹川スポーツ財団「健康関心度とスポーツライフに関する調査Ⅱ」】

健康への関心が高い「高関心」群でも、3割弱が運動を実施していない

運動・スポーツへの取り組みについては、先行研究に基づいた行動変容ステージモデルを使用した。

■行動変容ステージモデルの段階
・前熟考期:わたしは現在、運動をしていない。また、これから先(6カ月以内)もするつもりはない。
・熟考期:わたしは現在、運動をしていない。しかし、これから先(6カ月以内)に始めようとは思っている。
・準備期:わたしは現在、運動をしている。しかし、定期的ではない。
・実行期:わたしは現在、定期的に運動をしている。しかし、始めてからまだ間もない(6カ月以内)。
・維持期:わたしは現在、定期的に運動をしている。また、長期(6カ月以上)にわたって継続している。

「前熟考期」は低関心群で70.3%と最も高かったが、中関心群では31.1%、高関心群でも11.4%を占めた。「前熟考期」と「熟考期」を合わせてみると、低関心群で8割、中関心群で5割、高関心群も3割弱(前熟考期11.4%、熟考期16.3%)が運動の実施には至っていない。

康関心度3群別の運動実施状況(行動変容ステージモデル 【笹川スポーツ財団「健康関心度とスポーツライフに関する調査Ⅱ」】

主な運動阻害要因は「無精」「疲れる」「動機がない」「時間がない」

運動阻害要因尺度について項目ごとの回答構成比を示す。5段階中3以上の合計をみると、最も高かったのは「無精である」74.7%、次いで「運動によって疲れてしまう」74.5%であった。続いて「動機づけに欠ける」71.0%、「十分な時間がない」68.3%など怠惰性や時間の管理に関する項目が上位となった。時間的なゆとりの少なさが主な要因ではあるものの、「仕事が多すぎる」は52.2%にとどまっており、仕事以外の理由で時間がとれていない可能性もある。また「一緒に運動する人がいない」「施設がない」といった社会的あるいは物理的な環境要因に占める割合は相対的に低かった。

運動阻害要因尺度(全10項目)の回答構成比 【笹川スポーツ財団「健康関心度とスポーツライフに関する調査Ⅱ」】

運動非実施の要因は年代によって傾向が異なる

運動促進要因尺度と阻害要因尺度を得点化し、その合計(10-50点)を用いて年代別の傾向を分析した。それぞれ合計点が高いほど運動に対する促進度または阻害度が高い、とみることができる。促進度は18-29歳が最も高く、最も低い50歳代までは年代が上がるほど低い傾向にあった。一方で阻害度は18-29歳から30歳代にかけて高く、40歳代以降は年代が上がるほど低い傾向にあった。

すなわち、運動に対する積極性は20歳代までをピークに50歳代まで下がるが、60歳代以降では顕著な低下はみられない。運動に対する消極性は30歳代まで高いが、40歳代以降では低下がみられる。しがたって、運動非実施の要因はやる気があってもやれない30歳代と、やる気が起こりにくい50歳代を中心として特性の異なる課題が存在するのではないかと考えられる。


■調査概要
【調査名】健康関心度とスポーツライフに関する調査Ⅱ

【調査方法】インターネットモニター調査

【調査対象】全国18歳以上の男女(性・年代による人口構成比割付)

【有効回答数】5,272

【調査項目】就業状況/運動・スポーツ実施状況/運動・スポーツ実施時間/運動・スポーツ実施種目/運動不足感/主観的健康感/健康関心度尺度/運動促進要因・阻害要因尺度 など

【調査期間】2024年8月1日(木)~6日(火)
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著者プロフィール

笹川スポーツ財団は、「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進するスポーツ専門のシンクタンクです。スポーツに関する研究調査、データの収集・分析・発信や、国・自治体のスポーツ政策に対する提言策定を行い、「誰でも・どこでも・いつまでも」スポーツに親しむことができる社会づくりを目指しています。

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