若きハーフコンビの"成長"が新たな武器に
リーグワンライジング第1戦
リーグワンライジング。公式戦出場機会の少ない選手のプレーチャンスを増やすため、今年から始まったリーグワンのプレシーズンプログラムだ。
静岡ブルーレヴズ(以下、レヴズ)の初戦は、静岡市の草薙総合運動場球技場に豊田自動織機シャトルズ愛知を迎えた一戦。ファンクラブ会員限定公開で行われた試合には、好天に誘われて多くのファンが集結。草薙球技場のメインスタンドはほぼ埋まった中、試合はシャトルズのキックオフで始まった。
試合の焦点はズバリ、若手のプレーぶりだ。
なかでも注目されたのはスクラムハーフ(SH)の細矢 聖樹(ほそや・せな)とスタンドオフ(SO)の筒口 允之(つつぐち・まこと)のハーフバックコンビだ。2人は今春入団したルーキー。今年2月にアーリーエントリーでブルーレヴズに加わったが、24-25シーズンの公式戦出場はかなわなかった。
細矢は速いテンポでパスを捌いてレヴズのアタックのリズムを作り、11分にはゲームキャプテンのセンター伊藤 峻祐のキックを追ってトライも決めた。
筒口は滞空時間の長いハイパントで味方フォワード(FW)を前に出し、PKを得れば正確なタッチキックを相手陣ゴール前まで蹴りこんでトライチャンスを作り、トライ後のコンバージョンキックは6度のうち4度成功させた。
レヴズは前半だけで6トライを奪い38-7と大きくリード。後半は岡﨑 航大-サネレ・ノハンバのペアに交代してさらに6トライを奪い、80-21で大勝した。
自分の強みで差別化は図れる
「トライのところは、ペナルティーをもらったときに相手の陣形を見て判断して攻めて、キックをバックス全員でチェイスしていって、カウンターラックをかけて、(ジャック・)ティムが持ち出したところでボールをもらいました。『ボールをもらえたらラッキー』くらいの気持ちでしたけど、自分は体が大きくない分、コースは読んでいました」
「テンポを出す、仕掛けのところは彼らと差別化を図れるところだと思う。今日も手応えはありました」
「キックは自分の武器」
「良かったという言葉をいろんな方にかけていただきました。そう言ってもらえたということは、出来が良かったのかな。先週(後半から出場した釜石シーウェイブス戦)よりは良かったと思います。ただ、ラストパスの精度とか、キックを外した場面もあったりと、来週に向けてまだまだ修正しないといけないところはあります」
反省も忘れない筒口だが、ポジティブに振り返ったのはキックの部分だ。
この日のレヴズはハーフ団からのキックを多用。筒口のハイパントを追ったWTBの槇、ティムのハイボールキャッチがたびたびレヴズのチャンスを広げ、PKからゴール前ギリギリを狙ったタッチキックはラインアウトモールから多くのトライを生んだ。
ブルーレヴズの新たな武器に
「ゲームコントロールができていたし、早い球出しができていた。今日はCTBに外国人選手がいないし、キックをうまく使っていこうというのはチームのプランで決めていたけれど、2人はそのプランをよく遂行してくれた。レギュラー争いに食い込めると思う」
昨季のレヴズは、スクラムをはじめとしたFWの強さと、WTBヴァレンス・テファレ、マロ・ツイタマ、FLヴェティ・トゥポウといった大砲の決定力、彼らの個人技で空いた穴を見逃さずに攻略したSH北村 瞬太郎のスピードを原動力に、初のプレーオフに進出した。
だが初めて乗り込んだプレーオフでは、リーグ戦とはまたレベルの違う戦いが待っていた。互いに18試合のリーグ戦を戦い抜いたあとの一発勝負は、互いに相手を研究し尽くし、相手の持ち味を消しあうシビアな戦いだった。
そしてこの日、細矢が見せたテンポアップ、筒口の見せた精度の高いキックは、プラスアルファのオプションとしてレヴズの武器になる可能性を確かに感じさせた。
ハーフバックのポジション争いは激しくなりそうだ。
ラン能力の高さが魅力の北村 瞬太郎とサム・グリーンはともに日本代表でプレッシャー下の経験値を高め、SH岡﨑 航大とSO家村 健太はニュージーランド留学でゲームマネジメント力を磨いた(家村は今も武者修行中だ)。この日、後半からSOに入ってランニングゲームの強みを見せたサネレ・ノハンバはSHでもプレーできるとあって、藤井監督は「リザーブにFWを6人入れたい時も頼りになる」と期待を寄せる。
だが、多彩なキャラクターがハーフバックに並んでいることを考えると、今季のレヴズはそんな常識を変えるかもしれない。何しろ指揮官は、サニックス時代からラグビー界の常識に挑むように新たなチャレンジを重ねてきた藤井 雄一郎監督なのだ。何を考えていてもおかしくない。
開幕の日に、誰が背番号9と10のジャージーを着ているのか。
21番と22番を掴んでいるのは?
そしてそれは、試合を重ねるごとにどう変化するのかあるいはしないのか?
それは、ここから続いていくプレシーズンマッチ、そしてタイトル奪取を狙うシーズン、その最大の注目点になる気がした。
大友 信彦(おおとも のぶひこ)
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ