地域共助の担い手としてのスポーツボランティアの可能性を可視化

笹川スポーツ財団
チーム・協会
人口減少や地域課題の複雑化が進む中、スポーツイベントを契機に設立された地域ボランティア組織が、イベント運営にとどまらず、観光、福祉、コミュニティ形成、環境保全など幅広い分野での活躍が期待されています。本研究では全国6団体の先進事例を対象に、スポーツをきっかけとしたボランティア組織が、地域の多様な課題に対してどのような活動・連携を築いているかを分析し、他分野や地縁型組織と連携したボランティアモデルの構築に必要な要素を明らかにしました。

【笹川スポーツ財団(写真はイメージです)】

本研究では、「まちだサポーターズ」「チームFUJISAWA2020」「川崎フロンターレボランティア」「市民スポーツボランティアSV2004」「田鶴浜スポーツクラブ」「山口県・周南市スポーツボランティア」の6団体を対象に、半構造化インタビューと資料調査を通じて、「スポーツボランティアの好循環モデル(図表1)」への適合状況を検討しています。

スポーツボランティアの好循環モデル(本研究の分析フレーム) 【笹川スポーツ財団「スポーツイベントをきっかけとした地域ボランティアの仕組みづくりに関する研究」】

好循環モデルの検証結果

スポーツボランティアの活動は、「入口(イベント参加)→ 活動の拡大・定着 → 出口(地域課題への貢献・波及)」という循環構造を形成し、なかでも「活動の拡大・定着」フェーズの充実が、地域における持続可能な共助の仕組みを生み出していることが明らかとなりました。

【主なポイント】
●活動の拡大・定着に向けて、先進事例では行政・大学との連携や、リーダー育成、若年層の積極的な参画といった工夫が行われており、これらが活動の継続性を支えていた
●特に総合型地域スポーツクラブでは、震災時の避難所支援、多世代交流、福祉・環境活動への発展が見られ、地域共助の基盤として機能していた

スポーツを基軸とした好循環モデルに関する6事例の比較検証 【笹川スポーツ財団「スポーツイベントをきっかけとした地域ボランティアの仕組みづくりに関する研究」】

持続可能なボランティア組織の構築に向けたキーポイント

以下の4つの要素が、地域ボランティア活動を持続的に発展させるうえで重要であると示されました。

① イベント終了後も地域に活動が根付く仕組みの構築
② スポーツを起点に、福祉・防災・教育・環境など他分野のボランティアと連携
③ リーダー/コーディネーターとしての中核人材の継続的な育成
④ 定期的な活動の振り返りと、共通理念の明文化・共有

スポーツをきっかけとした地域ボランティア連携モデルの構築を目指して

本研究では、スポーツを媒介とした「地域ボランティア連携モデル」の構築を提案します。

特に、スポーツボランティアが地域の防災や福祉活動と結びつくことで、災害時にも機能する支援体制を確立できる可能性が示唆されました。田鶴浜スポーツクラブの事例では、平時からの地域ネットワークが災害時の迅速な支援活動につながったことが確認されました。今後、自治体や地域現場での実証研究を通じて、このモデルの有効性を検証し、政策提言へとつなげていきます。


■研究概要
【研究名】スポーツイベントをきっかけとした地域ボランティアの仕組みづくりに関する研究

【研究期間】2024年7月~2025年3月

【調査対象】全国6団体:まちだサポーターズ(東京都町田市)/チームFUJISAWA2020(神奈川県藤沢市)/川崎フロンターレボランティア(神奈川県川崎市)/市民スポーツボランティアSV2004(宮城県仙台市)/田鶴浜スポーツクラブ(石川県七尾市)/山口県・周南市スポーツボランティア

【調査方法】半構造化インタビュー、資料調査
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著者プロフィール

笹川スポーツ財団は、「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進するスポーツ専門のシンクタンクです。スポーツに関する研究調査、データの収集・分析・発信や、国・自治体のスポーツ政策に対する提言策定を行い、「誰でも・どこでも・いつまでも」スポーツに親しむことができる社会づくりを目指しています。

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