<スノーボード・小須田潤太×車いすバスケットボール・鳥海連志>世界に挑戦し続けるためのマインドセット
※9月9日、オープンハウスグループとアシックスが共催したパラアスリート対談会「世界を見据え、挑み続けるアスリートに学ぶ、未来を切り拓くマインドセットと行動とは?」から構成しました。
メンタルの安定に不可欠なものとは
そう鳥海が明かせば、小須田も同調する。
「家族の存在ってすごく大きいと感じています。最近2人目の子どもが生まれたのですが、妻のコンディションをどう整えていくか、そこは毎日挑戦です(笑)」
所属企業から世界で戦うために不可欠な言葉をもらっていると語るのは、小須田だ。
「入社の際、たくさんの社員の前で『おれにやらせんかい』って大きな声で言わせてもらったのですが、そのとき、『自分がやりたくて入ったんだ』とハッとして。また、社内で発信されている『目標を明確に持て、あいまいさに逃げるな』というフレーズも大切にしています」
「おじさんになって競技を引退後、何で稼ぎ生活するのかということがアスリートにとってリアルな不安要素。そのため、競技だけに目を向けてはいけないということが、常に頭の中にあります。だから、アスリートであるうちに人前で話したりイベントに出たり、あるいは、僕が今、アシックスと一緒にシューズを作っているように何かを一緒につくる。そうして過ごした時間や人間関係は競技引退後も変わらないはずだと思っていて。それが今、競技に専念するための一番の精神安定剤になっています」
社会とのつながりが、競技活動を後押ししているのだ。
ネガティブをポジティブに
小須田の場合、明るく前向きな発言が印象的だが、本来はネガティブなタイプだという。しかし、ポジティブに思考を転換できるようになった出来事があった、と振り返る。
「交通事故で足を失ったのですが、足がないことを考えても足は生えてこない。だから、足がないことに対してネガティブになることに意味はないなと気づきました。この世にはネガティブな要素が山のようにありますが、見る角度を変えたり、俯瞰してみたりすることでプラスに転換できるのではないでしょうか」
「13歳のときにU23代表選考会に呼ばれたのですが落選。そのときは最悪だと思ったのですが、だれよりも練習して、いつか絶対にパラリンピックのファイナルコートに立つ、とマインドがシフトして現在があります。今この瞬間はネガティブだけど、これを絶対ポジティブにしてやるっていうマインドセットは持っていた方がいいのではないでしょうか」
壁はあるもの
「困難なことが無限にあるのが当たり前の世界。なので、目標に向かって進んでいる最中は、壁なんて見ていられないんです。『今、自分にできる最大限は何か』をひたすら考えてやり続けるだけ。もしかしたら何回も壁に当たってるかもしれませんが、自分には見えていません」
では、小須田にとっての壁とは。
「自分より上手い選手がたくさんいますし、毎日毎日難しいことばかり目の前に出てきます。昨日の壁は、時差。一昨日、合宿地のアルゼンチンから帰ってきたのですが、時差12時間、フライト48時間。でも、明確な目標があれば苦じゃない。起こりうることだと自分の中に落とし込めるんです」
「中1から高3まで『夏休み何日遊んだ?』というぐらい、車いすバスケットボールに人生をかけてこの結果か、と受け入れられなくて。数ヵ月間、競技から離れ、故郷の長崎の島にこもりました」
「シュートの調子が悪くても、シュートメイクをする側に回れたらコートにいる価値がある選手。ならば、オールラウンダーが一番いい。そのために必要なことの一つとして、車いすの座面の高さを少しずつ上げていき、それに伴いセッティングも変え続けたのですが、ヘッドコーチや先輩からは反対され続けました」
「やっぱりやめた方がいいのか」と日々、揺らぎながらの挑戦だったという。周囲の声もまた、壁だったのだ。
しかし、最終的に座面の高さを当初から20㎝高くすることに成功。東京大会で主力として活躍し、銀メダル獲得の原動力となった。信念をもって挑戦を続けることで壁を乗り越えたのだ。
世界の舞台に挑み続ける2人。小須田は2種目で金メダル獲得、鳥海はロサンゼルス大会出場権獲得と目標が明確だからこそ、やる気が出ないときも行動できると口をそろえる。
「正直、きついなとか、練習行きたくないなみたいなときはあります。でも、1年後を考えると、やる気がないからと何もしない方が怖い。モチベーションが上がらないときこそ、目標を自分の中で再確認することを大事にしています」(鳥海)
「日々のコンディションのブレなんて絶対、だれにでもある。(そんなときも行動できるかどうかは)目標に対してどれだけ本気で目指しているかだと思います」(小須田)
text by TEAM A
photo by Atsushi Mihara
※本記事はパラサポWEBに2025年9月に掲載されたものです。
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