【週刊グランドスラム319】都市対抗デビュー登板で驚異の回転数を披露 「勝てる投手」を目指すJR東日本・古谷龍之介
JR東日本の古谷龍之介が、東北学院大時代の最終登板後に口にした言葉だ。あれから2年が経ち、9月3日に都市対抗デビューを果たした。
NTT西日本との二回戦。同点に追いつかれた5回表、なおも二死一、三塁のピンチの場面で三番手としてマウンドに上がった。NTT西日本の五番・濵田竜之祐(日本新薬から補強)を力のないフライに打ち取ったと思ったが、無情にもレフト線に落ちて三走が生還。結局これが決勝点となり、4対5で敗れた。
「逆転されてはいけない場面で出てきて、クリーンヒットではないけど、失点してそのまま負けた。何としても追加点を与えないピッチングをしなければならなかったと、悔いが残ります」
試合後、古谷はそう肩を落とした。一方、6回表は連続三振を含む3者凡退。1回2/3を投げて1安打3奪三振の無失点と、デビュー戦としては上々の内容で、「自分の持っている力はそれなりに発揮できたと思います」と充実感も滲ませた。
古谷と言えば、大学時代から驚異的な回転数を誇るのが最大の特長。この日も強みは健在で、直球は2600~2800回転ほど、変化球は3000回転以上を計測した。
高校生の頃から、動画配信サイトなどを参考に投球フォームを研究するのを日課にしているほど、勉強熱心な性格。本人は「特に意識はしていなくて、高校生の頃から気づいたら(回転数が)多くなっていました」と話すが、日々の努力が唯一無二の武器を作り上げた。そして、質の高い直球にカーブ、カットボールなどの変化球を織り交ぜた投球は大舞台でも通用すると証明した。
小3からスタートした野球人生で、全国大会は今回が初めて。
「これほどの大歓声の中で投げることはなかなかないのでいい経験になった。社員の方々に応援してもらってより燃えました」
勝利にこそ届かなかったものの、収穫は少なくなかった。
確認したエースの定義「来年は先発を勝ち取って完投したい」
しかし、通算5勝6敗と負け越し。中でも強敵の東北福祉大との試合では通算防御率1.51をマークしながら未勝利に終わった。それが、古谷が「『勝てる投手』には程遠い」と自己評価した所以だ。
大学ラスト登板となった東北福祉大戦も、9回11奪三振、無四球1失点と圧巻の投球を披露するも敗戦。最後に「過去一の投球」をやってのけたが、やはり満足はできなかった。
その後、「育成指名でもプロに行きたい」とプロ志望届を提出。指名はなかったものの、「『だろうな』という感じでした。勝たせるピッチングができていなかったので」と冷静に受け止めた。ドラフトの翌日にはJR東日本の練習会に参加し、投球を評価されて即日で内定を獲得。古谷は「運がよかったですね」と笑う。
そうして始まった社会人1年目は、右肩や腰、脇腹を故障して本領を発揮できず、今春から気合いを入れ直した。技術面の向上はもちろん、マウンドで考える習慣をつけたという。古谷は「例えば、ファウルを打たせた時の相手打者の反応を見て、『何を狙っているか』や『どの球を投げたら抑えられるか』を考えられるようになりました。試合後に動画を見返しながら、キャッチャーと話す時間も増えました」と話す。
徐々に本来の輝きを取り戻し、2年目の今季は都市対抗東京二次予選で3試合に先発するなど首脳陣の信頼を得た。だが、東京ドームでの一回戦は堀 誠(NTT東日本から補強)、二回戦は森畑侑大に先発の座を譲ることに。大会直前の調子が悪かったわけではないだけに、「頭から投げてチームを勝たせたかった」というのが本音だ。
今年はドラフト指名が解禁になる。野球人である以上、「(プロに)行けるなら行きたい」という思いは消えていない。ただ、古谷はそれ以上に「今回悔しい思いはしましたが、貴重な経験ができました。来年は先発を勝ち取って完投したい」と、来夏の都市対抗を見据えている。
「チームが勝つには、先発がいいピッチングをしなければいけない。それがエースなので」
来年こそは、東京ドームで「『勝てる投手』になれた」と胸を張りたい。
取材・文=川浪康太郎
グランドスラム65は、好評発売中です!!
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ