私のミッション・ビジョン・バリュー2025年第3回 西川幸之介選手「自分と戦い続ける」
多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。
その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。
ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針
原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。
2025年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2025年第3回は西川幸之介選手です。
(取材・構成 佐藤拓也)
「1回30~40分ぐらいの面談を2月下旬からはじめて、3月と4月は毎週行って、MVVを決めました」
Q.今まで自身の過去やサッカーへの思いなど第三者に深く話をしたことはありましたか?
「ないですね。僕は結構秘密主義なんで(笑)」
Q.話をしてみて感じたことはありましたか?
「結構楽な人生を歩んできたなということですね。そんな苦しい人生を歩んできたわけではないなということを知ることができました。今まで大きな挫折もなかったですし、何かを乗り越えたような経験もそんなにない。あまり何もしていないなと(苦笑)」
Q.でも、自分の中で目標を持って突き進んできた実感はあったのでは?
「そのための壁はあったのかもしれないですけど、たいした壁ではなかったんだと思います」
「アスリート自体、自分との戦いを強いられる職業だと思うし、それがすぐに結果に出やすい職業でもあるんです。なので、この言葉をスローガンにしました。自分と向き合えていないとプレーもうまくいかないんです。だから、そこにフォーカスしたいと思って、選びました」
Q.多くの人に見られて、結果として評価が明確に出る仕事はアスリートだけかもしれません。
「そうだと思います。それと、体が資本なので、自分の甘さがプレーに出やすい。他の職業だと、睡眠不足でも仕事はできるかもしれませんが、アスリートはちょっと寝る時間が遅くなったり、生活が乱れたりしただけでプレーの質が変わります。妥協しないというか、自分の甘さに負けないところが大事だと思ったので、この言葉にしました」
Q.学生時代からそれだけストイックにやってきたのでしょうか? それともプロになってから意識したのでしょうか?
「自分に負けていると、うまくいかないときの言い訳を作っちゃうんですよ。それを作っちゃうと、悪い循環しかしない。そこで自分に勝つことで、いいプレーをしたときの理由もそこに行きつくし、パフォーマンスが上がらないときに自分の甘さに立ち返られる。すごく大事な考え方だと思っています。特に昨年、試合に出られなくて、矢印がいろんなところに向きがちになりそうでした。でも、自分の成長のために自分に矢印に向けてやれないとチャンスが来たときにうまくいかないんです。昨年というか、昨年が終わってから振り返りを行ったときにそう強く思いましたね」
Q.「戦う」モチベーションは目標があるからなのか、自分のなりたい自分があるからなのでしょうか?
「このスローガンに関しては、『戦う』というより、『自分に負けない』という意味合いが強いんです。朝起きる瞬間から自分に勝たないといけないわけです。日々の練習でも常に目的を持ってやれるかどうかで成長は変わってくる。生活の一つひとつの選択の中で常に自分が楽じゃない方を選ぶことが大事だと思いましたし、それが結局自分のマインドにも生きてくると感じています」
Q.その意識がプレーにつながっている実感はありますか?
「今季序盤は試合に出られていませんでしたけど、水戸に来てから自分の成長のための練習はできていました。もちろん、GK4人で競っているので、試合に出ている選手のプレーに目がいってしまうことがありますけど、今季は自分にフォーカスして練習できていました。だから、出番が来たときにすんなり試合に入ることができました。今も試合に出ていますけど、他の選手よりも優れているとかではなく、自分としっかり向き合って、パフォーマンスが上がっているから使ってもらえていると思っています。もちろん、4人の中の競争も大事ですけど、自分との戦いが一番大事だと思っています」
「僕自身、昨年あまりうまくいっていないときに、自分と同じように、GKとしてサイズに恵まれていないながらも活躍を見せる菅野孝憲選手(札幌)のプレーを見てすごく勇気をもらいました。自信を失いかけていたところがあったんですけど、『自分もできる』と思えるようになったんです。僕が活躍する姿を見せることによって、僕が菅野選手から勇気をもらったように、誰かに何かしらの勇気を与えられるかもしれない。特に体の小さい子どもでも『GKをやりたい』と思ってくれるかもしれないと思ったんです。その人の心というか、やる気や何かを駆り立てる要因となって、プラスの要素を与えられればと思って、この言葉を選びました」
Q.西川選手らしいプレーを突き詰めていると思います。ミスを恐れずにトライしている姿に活力を与えられている人は少なくないと思います。どういった意識でプレーしていますか?
「僕だけに限らず、サッカー選手は何かしら自分の特長があって、それを売り込むというか、出していかないと評価されない職業なんです。もちろん、チームの戦術ややり方に合わせていかないといけない部分もあるんですけど、そこを体現したうえで自分の強みを発揮することを意識してプレーし続けています。その結果だと思っています」
Q.GKとして、非常に足元の技術が高いですけど、子どもの頃からGKだったのでしょうか?
「小学校高学年ぐらいからGKでした」
Q.GKのどこに魅力を感じたのでしょうか?
「単純に『シュートを止めるのがカッコいい』というところから入りました。そこからGKをしてきましたが、やっぱり特殊なポジションだと思います。『GKをやりたい』という子どもがいたら、止めたくなるぐらいのポジションです(笑)。年に1回ぐらいGKのおかげで勝つような試合があるんです。その瞬間のために日々きつい練習をしていますし、そういう試合を増やしたいと思って練習しています。どちらかというと、マイナスの要素が大きいポジションで、失点すれば問題があったと言われるポジションでもあります。それでも、シュートを止めたときの感情の高ぶりはFWが点を取ったときと同じ価値があると思っています。そこに魅力を感じています」
「MISSIONと重なるところがありますけど、自分のプレーを見て何かを感じ取ってくれた人が誰かを誘って水戸の試合を見に来てくれるようになったり、地域の人の会話の中で水戸ホーリーホックの会話が増えたりしたら嬉しいです。プラスの気持ちは伝播すると思っているので、MISSIONの流れのままVISIONにしました」
Q「活力」や「生きる喜び」を感じに、スタジアムに来ている人が多いと思います。西川選手自身、誰かを見て「活力」や「生きる喜び」を得た経験はありますか?
「僕は愛知県出身で、子どもの頃は名古屋グランパスの試合を見に行くことがありました。リーグ優勝が決まる前のホームゲームを見に行って、逆転勝ちをしたときには震えました。『これが強いチームだ』と思いましたね。豊田スタジアムだったんですけど、人も多いし、一体感もすごかった。ゴールが決まった瞬間の盛り上がり具合はえぐかったですね」
Q.そういう盛り上がりを今、水戸で作ろうとしていますね。
「実際、開幕のときと比べて、ホームゲームの観客は増えていますし、スタジアムの一体感も大きくなってきている。第21節徳島戦で同点ゴールが決まったときの雰囲気はすごかった。ゴールの前から応援の迫力がすごくて、『追いつけるだろうな』という『活力』をサポーターからもらうことができていました。このクラブには新たな歴史を作る力があると思いますし、そのための力になりたいという思いがより一層強くなりました」
Q.現在、昇格争いを繰り広げていて、その目標を達成しようという思いが大きなモチベーションになっているのでは?
「茨城に来て思ったのは、水戸から鹿島の試合を見に行く人はいるのに、水戸の試合を見に来てくれる人が少ないなということでした。でも、こうやって昇格争いを繰り広げて、話題になるようになって、観客も増えていますし、地域の人も以前よりも注目してくれるようになっている。この状況は自分たちで作り出したものなので、そこに関われていることを誇りに思いますし、もっとこの盛り上がりを大きくできる自信がありますし、その一員でプレーし続けたいという思いがあります。楽しみな気持ちもプレッシャーもありますが、いい形でシーズンを終えられるようにしたいと思っています」
「内省は自分と向き合うという意味で、試合も練習も1日の生活も反省すべき点をしっかり反省して、次に活かしていく。探求は新しいものを取り入れることが好きなので、今はSNSを含めていろんな情報を手に入れることができます。挑戦は道があったら、難しい方を選ぶということ。それをずっと続けてきました。そういうことも含めて、いろんなことを取り入れて挑戦して、内省するというPDCAサイクルじゃないですけど、そういった循環をさせていくことを普段から意識しています」
Q.今季プロ入り後初の移籍となりました。水戸に来たことも「挑戦」だったのでは?
「そうですね。移籍をすることになった際、どこのチームを選ぶか考えました。水戸は自分の持ち味が生きるようなパスサッカーをしているチームではなかったと思うんです。でも、GKとして『シュートを止める』ところで評価されないと、GKとしての価値は高まらないと思いましたし、自分はこのまま終わってしまうと思ったんです。その中で水戸には(松原)修平君という『シュートを止める』ことに関して、素晴らしい能力を持ったGKがいて、その選手に勝つことによって、GKとしての評価を高められると思ったんです。そこで勝負したかった。河野高宏GKコーチの練習もSNSで見ていて、『面白そうだな』と思っていたので、そういう点も含めて水戸への移籍を決めました」
Q.難しい方の選択をしたんですね?
「足元の技術を評価されてオファーを出してくれたチームもありました。それよりも、難しい方に行きたいという思いが自分の中にあったので、水戸に行くことを決めました」
Q.実際、そのチャレンジにより、GKとしての価値を高めることができていると思います。
「まだ全然ですけど、セービング能力は昨年よりも確実に上がっていると思っています。着実に上に向かっていると思うので、さらに磨きをかけていきたいと思います」
Q.「内省」に関して、具体的にどういうことを行っていますか?
「映像を見たり、失点しなくても、うまくいっているプレーもうまくいかなかったプレーもあるので、そういった一つひとつのプレーをしっかり振り返るようにしています。あとは練習の中から、常に試合のシチュエーションを意識してプレーするようにしています」
Q.「探求」という点で最近何かを取り入れたことはありますか?
「たとえば、ポジショニングの高さについて、今まではゴールライン上に立つのが普通でしたが、今はもう少し前に立つことが流行りだしている。自分も身長がない方ですけど、足の運びの部分で解消しようとしています。そこに関しても、いろんな意見がありますが、いろんな情報を取り入れて試しながら、一番自分に合った方法を選ぶようにしています。その取捨選択を大切にしています」
Q.最後に今後に向けての意気込みを聞かせてください。
「自分たちでいい状況を作り出してきたから、ここからうまくいくかどうかもすべて自分たち次第だと思っています。この勢いをつなげるというより、1試合1試合に集中して戦うことが大事ですし、1日1日を大切にしながら、しっかり積み上げていくことが大切だと思っています。それを続けることができれば、いい形でシーズンを終えることができると思っています。継続していければいいと思っています」
Q.西川幸之介というGKの価値ももっともっと高めていきたいですね。
「大分時代とイメージが変わった人がいると思います。首位にいるからこそ、目立つところもあると思っていて、そういうプレッシャーを力に変えて、さらに価値を高めていきたいと思っています
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