“親友”の恩納村とフロンターレが築くこれからの関係

川崎フロンターレ
チーム・協会

【©KAWASAKI FRONTALE】

8月9日(土)にフロンターレは沖縄県恩納村と持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた相互連携・協力を目的とした友好協定「おんなフロンターレいちどぅしップ」を締結。この日は恩納村村長の長浜善巳さんを迎えて会見やホームゲームイベントとして「沖縄まつり」を開催するなどU等々力に沖縄の空気が流れる1日となった。

最高の環境

今年のトレーニングキャンプもあたたかい雰囲気で迎えてくれた 【© KAWASAKI FRONTALE】

「フロンターレがキャンプをやってるグラウンドは高台で風が吹いてくるから、夏でもけっこう涼しいんですよ。湿度は80パーセントもあるので暑いは暑いんですけど(笑)」

そう言って笑った恩納村観光課の安富祖匠平さんの隣にいたフロンターレのスタッフは「でも不思議と暑さは感じないんですよ」と川崎市と恩納村の体感温度の違いの話で盛り上がっていた。

最近の沖縄は関東に比べて少々低い気温だが、80パーセントを越える湿度の高さは息苦しさを感じるだろう。それでも過ごしやすさを感じてしまうのは沖縄の綺麗な海、爽やかな潮風、人柄のあたたかさ、最高のロケーション──。挙げればキリがないほど “沖縄マジック”を感じる要素が恩納村にはたくさんある。

フロンターレは、そんな場所で2021年からオフシーズンのキャンプ地として拠点を置くようになった。ここでトレーニングをするメリットとは。それは監督、選手が口を揃える環境のよさだ。

「おいしい食事、快適なホテル、整備された完璧なピッチ、皆様のあたたかく見守ってくださる視線や声援が自分たちの力になりました」(長谷部茂利監督)

「暖かい気候でいい練習ができましたし、恩納村の方々にもあたたかく迎え入れてくれました。ピッチの芝生もトレーニングに励みやすい環境でしたし感謝しかないです」(脇坂泰斗)

サッカー教室で子どもと同じ目線でサッカーをした脇坂泰斗 【© KAWASAKI FRONTALE】

サッカー教室中、よく子どもたちに話をかけて一緒に楽しんでいた家長昭博 【© KAWASAKI FRONTALE】

また毎年恩納村でサッカーをしている子どもたちを対象に行なっているサッカー教室では「沖縄の子どもはすごく元気でよくて、すごく本能的な子が多いなと。そういうのがとても子どもらしくていいですね。本当に子どもはかわいらしい。癒やされます」と家長昭博が話すように、選手たちもパワーをもらって開幕前の準備への活力になっていた。

友好協定「おんなフロンターレいちどぅしップ」

8月9日(土)のホームゲームイベント内で行われた「かわさき沖縄まつり スペシャルステージ」の様子 【© KAWASAKI FRONTALE】

少しずつ地元の方々との交流が増え恩納村との関係が深まっている背景があるなか8月9日(土)に恩納村と持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた相互連携・協力を目的とした友好協定「おんなフロンターレいちどぅしップ」を締結が発表された。

“いちどぅし”は沖縄の方言で“親友”を表す言葉。「私たちはフロンターレさんの地域や社会にいい影響をもたらし、一緒によりよい社会を作ろうとしている姿に共感しました。これから一緒に地域や社会にいい影響をもたらしていきたいと思っています」と安富祖さんが話すように、お互いの目標に向かって協力をし合いパートナーとして様々な活動を行っていく。

内容はホームゲームイベントでのコラボや川崎市で実施している「算数ドリル」や「GIGA端末教材」の提供やサッカー教室を通じた学びの支援など。そのなかで今回注目したいのは恩納村が日本で始めて取り組んでいる「サンゴの村宣言」への協力だ。

「サンゴの村宣言」とは恩納村の海洋資源であるサンゴが、昨今の気候変動の影響による白化や魚の生育に大きな被害が出ている現状から解決の一助となるべく、観光客へサンゴを大切にしてもらう啓蒙活動や、生育被害の要因である沖縄の赤土が雨などで畑からの流出を防ぐため根が深く張るイネ科植物「ベチバー」で食い止めるなどサンゴを守る活動をしている。

ベチバーは3ヶ月ぐらいで3メートルの高さになるまで成長するため定期的に伐採が必要になるが切り取った葉は敷き草やしめ縄の材料として再利用。住民・企業・学校が「植える・使う・守る」サイクルに参加できる環境が整えられている。

ホームゲームイベントのワークショップでサポーターがデザインしたサンゴ苗 【© KAWASAKI FRONTALE】

選手がデザインしたサンゴ苗 【© KAWASAKI FRONTALE】

今後はそういった恩納村の活動に様々な角度から協力をしていくのがフロンターレの役割になるのだろう。現在、継続的に取り組んでいるのが年に1度ホームゲームイベントで実施されている「サンゴ苗づくり台座の絵付け体験」。選手やサポーターがデザインしたエンブレム入り台座を恩納村に持ち帰り現地スタッフがサンゴの苗付けと植え付けをして、綺麗な海を保つためにサンゴの養殖をする活動を行っている。少しずつフロンターレのサンゴも増えているそうで「サポーターの方々にも見に来てもらいたいな」と口元を緩ませた本企画を担当している恩納村の饒波武周さんは言った。

「フロンターレさんが協力をしていただいてくれることで恩納村がサンゴの村宣言をやってる、サンゴの保全活動をしていると県外の方にも知ってもらえる機会になっています。これからも、どんどん活動を広げていきたいですし、本当に感謝しかありません」

「互いに支え合い、長く続く関係を築く」(長浜村長)

パートナーシップ締結を記念に2025リミテッドユニフォームとかりゆしウェアを交換 【© KAWASAKI FRONTALE】

そんな「おんなフロンターレいちどぅしップ」の締結で期待していることとは。

吉田明宏社長は「いま世界的にサッカー界は環境問題に取り組んでいるなかで私たちはJリーグでトップランナーになっていきたい。そしてスポーツを通じて出会い、地域とつながり、そして”いちどぅし“として気候変動にも向き合う。そんな関係をこれからも大切に育んでいきたいと思います」と意気込み、恩納村村長の長浜善巳さんも太陽のような笑みで目を細めた。

「沖縄でもサッカーが盛り上がってます。そのなかでフロンターレさんが恩納村でキャンプをやっていただけているのは村民にとっての誇りです。本協定は地域社会や未来の子どもたちのために、互いに支え合い、長く続く関係を築くという強い想いのもとに結ばれるもの。これが村の未来にとっても、川崎フロンターレの皆さまにとっても、かけがえのない”いちどぅし”としての第一歩になることを心より願っております」

試合前のメインスタンド前で長浜村長がサポーターに向けて挨拶をした 【© KAWASAKI FRONTALE】

また来年からJリーグは秋春制が導入されていくことになり8月に開幕を迎えるようになる。例年のトレーニングキャンプであれば1月の寒い時期に暖かい気候の場所を拠点としていたが来シーズン以降のオフは夏ということもあって開幕前は避暑地と言われる場所が拠点になっていくのだろう。では沖縄でのキャンプはなくなってしまうのか…、と思われる方がいるかもしれないが、およそ2ヶ月のウインターブレイクを利用して恩納村でキャンプを張れればよりよい環境でトレーニングができる。「恩納村の豊かな気候でのキャンプは重要な拠点となります。とくに赤間総合運動公園サッカー場の天然芝は、選手にとって自然な感触とボールの挙動を提供し、最高のコンディション調整の場です」と吉田社長も話すように、これからも変わらずフロンターレにとって恩納村が第2の拠点地となっていくはずだ。

ともに環境問題に取り組み、ともにシーズンを戦っていく“いちどぅし”。これからも恩納村と一緒にクラブを育んでいく。

(取材:高澤真輝)
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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