私のミッション・ビジョン・バリュー2025年第1回 大森渚生選手「vitality」
多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。
その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。
ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針
原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。
2025年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2025年第1回は大森渚生選手です。
(取材・構成 佐藤拓也)
「キャンプが終わってから、1回1時間ぐらいの面談を5月いっぱいまでに5~6回行いました」
Q.今まで自分の思いや過去について、第三者に対して深く話をした経験はありましたか?
「ないですね。過去を振り返ることはありましたけど、ここまで深く話をしたり、文字にしたりするようなことはありませんでした」
Q.面談をしてみていかがでしたか?
「感覚的に感じていることを言葉にするのが本当に難しくて、自分が思っていることをどうやって言葉で表現しようかと悩みながら話をしました。でも、それはすごく大事なことだと思いました。やっぱり、自分が理解していないと言葉で伝えられないので、それを行ったことは自分にとってすごく有意義なことだったと感じています」
Q.大森選手はロジカルに物事を考えるタイプという印象があります。その考えを言葉で伝えるのが難しかった?
「自分が理解しきっていることに対しては伝えることができるんですけど、プレーしていてもあるのですが、『そういうものでしょ』と感覚的な部分もあるんですよ。今回面談をして、そういったところをクリアにすると、もっと良くなるだろうなと思いましたね。だから、こういう機会があって良かったと思えています」
「サッカーというのは、見る人の心を動かすような、周りの人を巻き込むようなエンターテインメントだと思うんです。感情は100%で向き合ってないと出ないと自分では思っています。中途半端では中途半端な感情しか出ない。パフォーマンスの良し悪しはあれど、自分はピッチに対して100%で向かっているということは、嘘偽りなく言えると自分では思っています。だからこそ、感じてもらえるものがあると常に思っているんです。感情が出るまでやりきらないといけない。自分が客観的に心を動かされるような出来事というのも、人が100%で物事に向き合っている姿なんです。結果よりもまずはそういう姿をまず見せないといけないと思っています」
Q.そういうことを考えるようになったのはいつごろからですか?
「大学に行って、いろんな物事を見るようになって、サッカーにおいても、それまでは自分がボールを持ったプレーのことばかり考えていたんですけど、大事なのはそこではないということに気づくことができましたし、サッカーに関して、どういった面に魅力を感じてもらえるのかを考えたとき、自分は感情だと思ったんです。何が人の心を動かすのかということについて、うまいプレーも大事ですけど、それ以上に必死にプレーする姿とか、必死にもがく姿とか、そういったものだと気づきました。それまで守備するのは格好悪いぐらいに思っていたんですよ。そこに気づいたことが自分のターニングポイントだと思っています」
Q.今まで誰かを見て、心を動かされた経験はありますか?
「たとえば、バスケットボールのワールドカップや野球のWBCですかね。サッカーのワールドカップもそうですね。有名な選手がプレーしているからとか、盛り上がっているから心を動かされるかというと、そうではないと思うんです。J2だろうが、大学サッカーだろうが、100%で取り組んで、試合で喜んだり、悔しがったりする姿が人に訴えかけるものがあると考えています」
Q.大森選手は試合中、感情をむき出しにすることが多いです。そのときのサポーターの反応を受けて、さらに大森選手のテンションが上がり、プレーに反映されるのでは?
「もちろんです。こっちからも伝えますが、サポーターからも感情を伝えてもらえることがサッカーの魅力だと思っています。自分がいいプレーをして『よっしゃ!』となっているのに対して、サポーターが反応してくれると、『理解してもらえる』と思えてさらにテンションが上がるんですよ。そうやってお互いのボルテージが上がり、さらに輪が広がっていくことがサッカーの魅力だと思っています」
Q.サイドだと観客席が近いから、ダイレクトに伝わりますよね。
「特にケーズデンキスタジアム水戸はバックスタンドに声を出すサポーターがいるので、伝えやすいですし、伝わりやすいです」
「見る人の心を動かすということもありますが、サッカーがサッカーで留まるのは、すごくもったいないという思いがあります。自分が100%で向き合っている姿を見た人が活力を得て、それが広がっていくことがプロスポーツの醍醐味だと思っています。自分のプレーに心を動かされた人が『次の試合も見たい』と思ってくれて、そのために次の1週間頑張ろうと思ってくれたら、すごく嬉しいですよね。サッカーをしている子どもが『大森選手みたいなプレーをしたい』と思ってくれても嬉しいですし、『応援するために元気にいよう』と思ってくれるのも活力なんですよ。サッカーをサッカーの枠に留まらせることなく、どんどん地域に活力を広げていくことがサッカー選手の使命だと思っています。そこにプロスポーツの魅力を感じています。自分のプレーや姿勢が、多くの人の原動力になって、その輪が広がっていくことにやりがいを感じています」
Q.現在、首位に立っていて、地域が盛り上がってきています。見る人に活力を与えられている実感があるのでは?
「スタジアムの観客が増えていることやスポンサーさんが増えていることを感じることができています。ただ、結果が大事なのはもちろんなのですが、結果だけでなく、広げていくことが大事だと思っています。もちろん、結果を出すために取り組んでいるんですけど、それと両輪で、結果関係なく、100%で戦っている姿を見てもらって影響を与えられるようなエネルギーを持ちたいと思っています」
「自分が100%で向き合っていないと、出せるものも出せない。VISIONでそういうことを掲げているのならば、100%で取り組むことは自分の中の価値の基準にしないといけないと思っています。淡々とプレーしているように見えるかもしれませんが、メンタル的に淡々とプレーして力を発揮できるタイプではないんです。100%のメンタルでプレーしないと、いいプレーできても『もっとできたでしょ』と思うし、悪いプレーした場合、『なんで100%でできなかったんだろう』と思ってしまう。常に100%を出し切らないと、自分の物差しで測れないタイプなんです。それこそ、100%を出し切るから、見ている人に訴えるものを出せると思っているので、そこは自分の中の基準にしています」
Q.妥協してしまいそうになることはないですか? 100%を出し続けるために意識していることはありますか?
「100%を出さないと不安なんですよ。今季、ずっと試合に使ってもらっているからといって、次の試合に出られる保証はないですから。次の試合で大きな失敗をしてしまうかもしれない。そうなってしまったときに100%を出し切れていなかったら、自分を許せなくなってしまう。100%を出し切ったなら、『仕方ない』と割り切れると思うんですよ。だからこそ、逃げ道を作らないようにしたい。そういう姿は周りの人に見えていると思うんです。そういう人を見ても、心は動かない。めちゃくちゃうまくても、100%を出していなかったら、誰の心にも響かない。100%を出す姿を見せないと、自分の価値にならないと思っています」
「自分はサッカーに対して、100%で『人に何かを与えたい』と思って取り組んでいます。自分のプレーを見たことによって、少しでもエネルギーを持ってくれたらいいなと思っています。それが結果的に、ホーリーホックに返ってくるか、自分に返ってくるかは後からついてくるもの。自分が原動力になって、誰かに影響を与える。そのためにも自分が常に向き合って100%やる姿を示し続けないといけない。それが選手としてあるべき姿だと思っているので、それを体現して、周りに広がっていくことが理想ですね」
Q.「vitality」とは活力だと思います。大森選手自身の活力は何でしょうか?
「自己満足では限界があります。自分に向き合い続けることはサッカー選手として大事なんですけど、自分のプレーでスタンドが沸いたり、盛り上がったりする瞬間こそ、サッカー選手の醍醐味。だからこそ、自分が見せられるものを全部見せたいと思っていて、それが誰かの活力になったら嬉しいと思っています」
Q.今後に向けての意気込みを聞かせてください。
「自分はどんな状況であれ、100%やり続けることに変わりありません。それで試合に勝ったり、いいプレーをしたり、そういう姿を見て盛り上がってくれたら嬉しいです。でも、うまくいかなかったり、全然ダメなプレーを見せてしまうこともあると思います。そのときの自分がもがいている姿を見てもらいたい。絶対に手は抜かないので、自分の100%で何を起こすかを楽しみにしてもらいたいです。自分が100%で向き合ったことが、どういう結果につながるかは自分自身でも楽しみなので、そういう姿を見てもらいたいと思います」
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