支える覚悟──倉持美知が経験と冷静さで挑む最終戦【東京山九フェニックス】インタビュー

東京山九フェニックス
チーム・協会
ピッチを笑顔で支える選手がいる。大学院で教育学を学びながら、東京山九フェニックスで存在感を示す倉持美知。派手なプレーよりも、試合の流れを読み、高い安定感で若手を支えるその姿は、まさに「縁の下の力持ち」だ。
「苦手を減らすこと」にこだわり続け、守備力や予測力といった武器を磨いてきた彼女は今、教育者としての視点と経験を融合させ、チームの未来を見据えている。

【Tokyo SANKYU Phoenix Rugby Club.】

ラグビーとの出会いは母のひと言から

ラグビーを始めたのは高校から。しかも入学当初は、写真部への入部を心に決めていた。
すでにカメラを選びに行くほど気持ちは固まっていたが、母からの「ラグビーかレスリング、どっちか体験してみたら?」という提案がすべての始まりだった。

「高校に入学した際に写真部に入ろうと思っていたのですが、母にレスリングかラグビーかの2択を提示されて、先に体験へ行ったのがラグビーだったからです。」
「中学まではバスケをやっていたのですが、しっかり体をぶつけにいっちゃうファールが多かったので…母親がコンタクト系の競技の方が良いのでは?って思ったみたいです。笑」

母も含めて家族は誰もコンタクトスポーツの経験はなかったが、このアドバイスが競技人生の第一歩となった。
今となっては、娘の適性を見抜いた的確なアドバイスに感謝していると言う。

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ラグビーの戦術性に魅せられて

母親の勧めで始めたラグビーだったが、ルールを知るにつれて、その奥深さに夢中になっていった。
特に「後ろにパスして前へ進む」という独特のプレー原則が、新鮮で面白く感じられたという。

「後ろにパスをして前へ進まなきゃいけないって、すごく特殊じゃないですか。戦略や作戦の部分が本当に面白いなって思ったことが、自分の中ではしっくりきたんです。」

広いフィールド、15人の多彩な役割、緻密な戦術──すべてが自分の中でしっくりきた瞬間から、ラグビーはただの部活動以上の存在になっていった。

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憧れは高橋尚子──“やりきった”先の言葉

小学生の頃には陸上クラブにも所属し、長距離走が好きだった。
その中で見たシドニー五輪の高橋尚子さん。ゴール後の「すごく楽しい42.195キロでした」という言葉に、衝撃を受けたという。

「厳しい練習を重ねて、上手くいかないことも多かったはずなのに『すごく楽しい42.195キロでした』って言っていたのが本当にすごいなと思いました。」

勝ち負けや結果だけではなく「過程」に誇りを持てる姿に、自分の理想像を重ね合わせてきた。
「最近は勝ち負け以上に、日々ラグビーを続けられることがありがたいと思うようになりました。」

近年は、自らのラグビー人生においても、その境地に近づきつつある。

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杉浦選手への期待と思い

仲間を信じ、その力を引き出すことも倉持の重要な役割だ。
特に杉浦夏麗選手に対しては、強みを発揮できる環境を整えたいと考えている。

「まだ若くて荒削りな部分もあるけど、頑張って喰らいつく気持ちが凄くて、尊敬できる部分だなと感じています。」
「杉浦はフィジカルが強いし、積極的にアドバイスを求めてくるなど成長への意欲も高いので、もっと思い切ってプレーできる環境を作ってあげたいです」

チームメイトの成長を願い、環境づくりにも心を砕く。後輩の力を引き出すことも、倉持の役割のひとつだ。

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教育学×ラグビー選手──学びの循環

地元・千葉大学の大学院で教育学を研究する経験は、学問の枠を超え、日々の練習や試合の中にも息づいている。
後輩への接し方やチーム内でのコミュニケーションも、教育者としての視点が活かされている。

アドバイスを求めてくる杉浦に対しても、教育者の視点でコミュニケーションを意識しているという。

「大学院で教育学を専攻している影響もあって、若い選手にアドバイスする時にもすぐ答えを教えず、自分で考えるきっかけを意識しています。
本人に「どういう選択肢があったのか?」考えさせた上で、彼女自身に答えを出してもらいたいと思っているので、期待をかけすぎずに見守っていきたいなと思っています。」

教えることで自らも学び、学びを現場に還元する。その循環が、彼女を選手としても成長させている。

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知性と冷静さでゲームを作る

感情に左右されず、試合全体の流れを見極める冷静さが倉持の真骨頂だ。
瞬間的なひらめきだけでなく、全体像を把握した上で選択肢を絞る判断力が、フェニックスに安定をもたらしている。
華やかなトライよりも、チームに流れを引き寄せるワンプレーこそ、彼女の魅力だ。

「派手なプレーはないかもしれませんが、流れを作るプレーは見せられると思います」

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苦手こそ克服のターニングポイント

安定感のあるプレーの裏には、日々の地道な積み重ねがある。
自身について「特筆したスキルや能力がない」と語る一方で、派手さではなく安定感や確実性こそが自身の武器だと理解している。

「得意なところを伸ばすというより、苦手をなくすように意識しています。」
日頃の練習から弱点を放置しない姿勢を崩さず、どんな試合でも安定したパフォーマンスを発揮するため、まずは“穴をなくす”ことから逆算して取り組んでいる。

「ただ、それを自分の中で強みと意識してしまうと、そこで満足してしまう気もしているので、日頃から「強みはない」と捉えて、日々努力し続けるという意識をしています。」
「チーム全体のミスを減らすことが、自分の役割だと思っています。」

派手さよりも確実性。そんなスタイルがフェニックスの土台を支えている。

【Tokyo SANKYU Phoenix Rugby Club.】

今シーズン最後の札幌大会で“Bloom up!”を体現したい

札幌大会はシーズンを締めくくる大舞台。
今シーズンのチームは若い選手が多く、勢いに乗れば驚異的な力を発揮する一方、調子を崩した時の弱さも課題だという。

「クラブチームの中では若いチームだと思います。(私は上の方ですが)だからこそ波に乗れる時はすごい強いです。」
「そういう時にBloom up!ができるかどうか。それを最後の大会で魅せていきたいです。」

だからこそ、最後の大会では逆境から這い上がる力──チームスローガンである“Bloom up!”をピッチで表現したいと考えている。

【Tokyo SANKYU Phoenix Rugby Club.】

若手が自由にプレーできる土台をつくる

個人として意識しているのは、若手が伸び伸びとプレーできる環境づくりだ。
自身が若い頃、先輩たちの安定感あるプレーに支えられ、思い切った挑戦ができた経験がある。

「私が若い頃に上手くいかなかった時、先輩たちが安定感のあるプレーをしてくれたので、自由にプレーすることが出来ました。」
「今度は私が若い選手が自由に楽しくプレーできるような土台を作りたいなと思っています。」

今度は自分がその立場となり、若い選手たちの土台となりたいと考えている。

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あえて言葉にしないリーダーシップ

倉持はその考えを、あえてチーム内で声高には伝えていない。
理由は、表面的な共感で終わらせたくないからだ。

「直接言葉や態度出していないので、若手の選手には理解してもらえてないかもしれないです。笑」
「言葉や態度に出せばすぐに行動へ移してくれるかもしれないけれど、それは結局一時的なものだと思っているので、もっと根本的な部分に気付いてほしいと思っています。」

瞬間的に鼓舞することはできても、それが一過性では意味がない。
もっと根本から気づき、行動に結びつけてほしい──そんな静かなリーダーシップを貫いている。

【Tokyo SANKYU Phoenix Rugby Club.】

取材:東京山九フェニックスPR 佐藤 雄大
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著者プロフィール

2022年度は7人制大会15人制大会のどちらも優勝の二冠を達成し、15人制では、2022〜2024年度にかけて史上初の三連覇を達成。15人制、7人制ともに日本代表選手を常に輩出し、女性ラグビー界を牽引するチーム。チームスタイル「攻め滾るスタイルが女性の未来を変える」チームスピリット「ダイバーシティーの街、渋谷発のデュアルラグビーチーム」として新しい女子スポーツ文化を創造し、渋谷から世界へ女子ラグビー文化を発信している。

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