【第3回】プロスポーツビジネスの神髄に触れる!──即戦力になるための実践講義 SAGA久光スプリングスの現場から
プロスポーツチームが地域とどう結びつき、持続的に成長していくのか。その鍵を握るのが、「経営戦略」と「組織マネジメント」だ。
今回、びわこ成蹊スポーツ大学プロスポーツコアチームの学生6名が、SAGA久光スプリングスの事例をもとに、戦略的なクラブ運営について学ぶ講義を受講した。
企業の成長戦略に応用される理論を、スポーツビジネスの現場でどう活かすか。講義では、実際の収益構造やマーケティング施策をもとに、プロスポーツクラブが地域に根差しながら発展する仕組みが紹介された。学生たちは、熱意だけではない「情熱×冷静」がスポーツ現場では求められていることや、ファンづくりと勝利が連動する経営戦略に触れ、プロスポーツの新たな可能性を実感したという。
本記事では、びわこ成蹊スポーツ大学プロスポーツコアチーム(あらゆるプロスポーツクラブで活躍するために必要な基礎知識や現場経験を得て、即戦力の人材育成を目指すチーム)の学生6名が、講義を通じて得た学びや気づきを学生ならではの視点で綴る。
「戦略」とは何か——経営理論から学ぶ、スポーツビジネスへの応用
講義では、経営戦略を「全社戦略」「事業戦略」「機能戦略」の3層に分類し、それぞれの役割とつながりが紹介された。企業が市場で成果を上げるには、SWOT分析やアンゾフの成長マトリクスといった理論を活用し、外部環境(競合や市場の動き)と内部環境(資源や組織構造)の両面を踏まえた戦略構築が求められるという。そのような学びの中で注目されたのが、SVリーグの「SAGA久光スプリングス」の取り組みである。
現在の同チームの収益構造は、スポンサー収入が約半分を占めており、その他の項目では、ユース・スクール関連の収入割合が他のプロ競技リーグと比べて高い。これは、自社で運営する「サロンパスアリーナ」を活用し、地域の子どもや女性向けのトレーニング、育成事業を積極的に展開していることが背景にあると考えられる。
トップチームの興行にとどまらず、地域密着型の育成や普及活動を通じて収益の多角化を図る姿勢は、まさに事業戦略と機能戦略が連携した、戦略的なビジネスモデルの好例である。
また、どのような戦略であっても、単なる立案で終わらせず、実行と改善を繰り返す「PDCAサイクル」の重要性も説かれた。これは経営に限らず、自身の目標達成や行動改善にも応用できるという点で、学生にとっても大きな学びとなった。
「理論を知るだけでなく、それをどう実践するかが問われる」。講義で学びを得た学生は、今後スポーツの現場で求められる“戦略的に動ける人材”を目指し、学びを行動へとつなげていく。
SAGA久光スプリングスの“勝利とファン創造”戦略に学生が迫る
特別講師は「ファンを増やす」ために「勝利」を届け、それがチーム強化につながり好循環を生んでいると語る。この好循環は、単なる成績向上にとどまらず、ファンの共感や愛着を高め、地域とのつながりを深める力にもなっているという。まさに“ファン創造”がチーム価値を高める原動力となっているのだ。
今回の講義で、単なる競技力の追求にとどまらず、いかに高度な「経営戦略」と「組織マネジメント」が現場で実践されているのかが紹介された。
チームの勝利には「顧客創造」の視点がいかに重要であるかを実感させられる内容であった。
同チームから得た学びは、スポーツ界を支える人材を目指す学生にとって、将来への視野が大きく広がり、かけがえのない財産となった。
「情熱×冷静」で地域を動かすSAGA久光スプリングスが描く“スポーツの未来”
同チームの特別講師がそう語った言葉に、学生たちは引き込まれた。
講義の中で印象的だったのは、「ホームアリーナを起点に地域全体を巻き込むハブとしてのクラブ経営」という考え方だ。練習アリーナの一般開放や、学校訪問やバレーボール教室の実施を通じて、地域との接点を日常的に作っている。
特に、サロンパスアリーナでは地元の運動会や大会も開催され、地域の“場”として機能している。こうした活動が、地域アイデンティティを育み、「地元に愛されるクラブ」へと繋がっているのだ。
また、試合の興行を「会社の一丁目一番地」と位置付け、エンターテイメント性の追求とハードアセット(会場や演出)の最大活用によって、ファン基盤を拡大している点も興味深い。2023-24シーズン開幕戦では、Vリーグ女子最多来場者数を記録。その成功の裏には、地域行政やメディア、パートナー企業との横断的な連携があったという。まさに、スポーツビジネスの最前線を感じる瞬間だった。
そしてもう一つ、学生たちの心に深く残ったのが、「情熱×冷静」というクラブに求められる資質だ。ただ熱くなるだけではなく、戦略的かつ冷静に地域や社会に向き合う姿勢に、学生たちは強く惹かれた。セカンドキャリア支援や環境への取り組みなど、短期的な成果だけでなく、持続可能なスポーツの在り方を見据えていることも、同チームの大きな特徴である。
講義を終えた今、プロスポーツコアチームの学生は、単なる“プロスポーツに関わりたい気持ち”から、“スポーツで社会を変える担い手になりたい想い”へと意識が変わりつつある。
地域に根ざし、人を育て、未来を形づくる、そんなクラブの在り方に、自分たちの将来像を重ねる学生たちであった。
【著者】
びわこ成蹊スポーツ大学 プロスポーツコアチーム3期生
奥村 彩乃
澤 美月
高谷 琉那
本林 奏美
山本 優夢
和田 碧
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