"テスト”の前の”テスト”

静岡ブルーレヴズ
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初めての桜のエンブレム

灼熱のスタジアムで、ラグビー王国ニュージーランドの勇者たちを迎えた。

6月28日土曜日、マオリ・オールブラックスを迎え撃つJAPAN XVに、3人のレヴズ戦士が立った。

フランカーに、リーグワン全試合に出場して8トライをあげたヴェティ・トゥポウ。スタンドオフには司令塔としてチームを率い、リーグ7位の134得点をあげたサム・グリーン。そして控えスクラムハーフに、リーグ2位タイの14トライをあげ新人賞を受賞した北村 瞬太郎。

3人はすべて、この日が桜のエンブレムをつけて臨む初めての戦いだった。

【Photo by Yuuri Tanimoto】

この日の試合は、相手が正式な国代表ではない「マオリ・オールブラックス」のため、テストマッチ(正式な国代表同士の試合)ではない。テストマッチに出場した証となる「キャップ」も授与されない。日本代表の世界ランキングにも影響しない。

だがスタジアムにはテストマッチと変わらぬ熱気が溢れていた。

試合前には両国の国歌が演奏され、マオリ・オールブラックスはラグビー王国の魂とも呼ぶべき戦いの舞い・ハカを披露した。スタジアムには炎暑の中、2万人近くのファンが詰めかけ、キックオフ3時間以上も前から長い列ができた。

マオリ・オールブラックスは正式な国代表ではないとはいえ、ラグビー王国の精鋭集団。世界ランクでいえばトップ6に相当するともいわれる。

#10 サム・グリーン(スタンドオフ)

そんな相手に対して、レヴズ戦士で最初に躍動したのはサム・グリーンだ。

開始9分、自陣での相手落球を拾ったNo8青木 恵斗(トヨタヴェルブリッツ)に瞬時に反応し、パスを受けて左に展開。WTB植田 和磨(コベルコ神戸スティーラーズ)の先制トライにつなげると、すぐにコンバージョンを蹴りこみ「代表初得点」。

この日のグリーンはコンバージョンとPG、3度のゴールキックをすべて決めるパーフェクトキックを披露。すべてイージーな位置とはいえ、見事なキックコントロールだった。

「前半はいいスタートを切れたと思う。展開が速く、ボールがたくさん動く。普段レヴズでやっている試合とは違うリズムだったけど楽しめた。桜のエンブレムをつけて試合をするのは特別な感覚。僕にとってスペシャルなモーメントだった」

10番としてパーフェクトキックを見せたサム・グリーン 【Photo by Yuuri Tanimoto】

#6 ヴェティ・トゥポウ(フランカー)

ヴェティ・トゥポウも身上の力強さをアピールした。

レヴズの試合で見せるようなビッグゲインこそなかったものの、相手ディフェンスが目の前に立ちはだかる中でタフに体をぶつけ、タックルを受けてもわずかな隙間に体をねじ込んで足をかき、ボールを活かした。

試合後、ヘッドコーチのエディー・ジョーンズは「フィジカル面で通用する選手が、名前は言えないけど一人いた」と思わせぶりに話したが、それはヴェティのことだったかもしれない。

「ジャパンで初めてのゲームだったけど、ナーバスになることはなかった。ワクワクしたね。プレーの出来はまだ終わったばかりで何とも言えないけど、次の試合でまた頑張りたい」

"黒い壁"に何度も挑んだヴェティ・トゥポウ 【Photo by Yuuri Tanimoto】

#21 北村 瞬太郎 (スクラムハーフ)

80分フル出場したグリーン、67分までピッチを走り続けたヴェティに対し、短い時間でのパフォーマンスとなったのが北村だった。

ピッチに入ったのは前半のリードからマオリが徐々にペースを掴み、JAPAN XVには逆に疲労が見え、20-36と差をつけられてからのラスト20分。

「正直、難しかったです」と唇をかんだ。

リーグワンではレギュラーシーズン2位の14トライ、ポストシーズンも含めればリーグ最多タイの15トライをあげて新人賞に輝いた北村は、この日も短い出場時間の中で素早くパスをさばき続けたが、ボールを動かしてもトライを狙えるスペースは空かなかった。77分にはゴール前のラックからトライラインを目指したが分厚いディフェンスに阻まれた。

「ブレイクダウンのクオリティが良くなくて、レヴズでやっていたようには動けなかった」

追加招集から20分のプレータイムを得た北村 瞬太郎 【Photo by Yuuri Tanimoto】

長いプレシーズンを共に過ごし、互いの個性を理解して本番に臨むリーグワンなら、選手同士もヘッドコーチも互いの個性を最大限に活かすプランを考えられる。

だが混成チームである代表チームでは短い準備期間でヘッドコーチの求めるイメージを理解し、国内試合では味わえないプレッシャーを受けながら、ゲームプランをピッチの上で実行しなければならない。

ゲームに向けたアプローチがまったく違うのだ。

それを経験できたこと、初めて代表合宿に参加し、ノンテストとはいえ世界トップクラスの実力者と体をぶつけあったことは、貴重な経験になったに違いない。

「与えられた時間でやるべきことは全部やったつもりです。この先のことはまだ全然わからないけれど、チャンスがもらえたら全力を尽くします」と北村は言った。

一夜明けて…

マオリ戦から一夜あけた29日、日本代表宮崎合宿への追加メンバーが発表された。

そこに北村の名前はあった。

7月5日に北九州で、12日に神戸で行われるウェールズ戦で、ピッチに立つチャンスを掴むために。そこで日本代表の勝利に貢献するために。

宮崎で再開した練習で、ヴェティ・トゥポウとサム・グリーンを含めた3人のレヴズ戦士は、またハードワークを続ける。

次はテストマッチ・デビューが待っている。
(大友信彦|静岡ブルーレヴズ公式ライター)

大友 信彦(おおとも のぶひこ)
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。
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著者プロフィール

JAPAN RUGBY LEAGUE ONEに参戦している静岡ブルーレヴズ(旧:ヤマハ発動機ジュビロ)の公式アカウントです。 「静岡ブルーレヴズ/SHIZUOKA BlueRevs 」というチーム名には、変わらない為に変わり続ける、伝統を受け継ぎ、なお「革新」を恐れない精神を象徴する “Blue” と、困難な目標にワクワクして挑み、高ぶる「情熱」を象徴する “Revs”が、一体として込められています。また、ホストエリアとなる「静岡」に貢献し、愛されるチームとなるべくその名を冠しています。 いままでヤマハ発動機ジュビロとして築き上げてきた伝統や技を活かしながらも、新たな挑戦とともに静岡から、心躍る最高の感動を世界へと届けていきます。 静岡ブルーレヴズの活躍にぜひご注目ください。

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