【週刊グランドスラム308】JABA2大会連続で準決勝へ進出 ケガ人続出の危機を乗り越えて都市対抗予選に臨む七十七銀行
「去年まで頼っていた主力が多く戦列を離脱して、試合出場の機会が少なかった選手たちの自覚が芽生えた。それがチーム全体の底上げにつながったし、ケガ人が戻ってくれば、さらに戦力に厚みが出てくると思います」
杉森智幸監督は、5月の東北大会を戦い終えた直後にそう手応えを口にしていた。ケガ人は、最も多い時で9名。主将の長嶋亮磨や、投手陣の中心を担う西舘洸希らも含まれていた。
そんな中、長野県知事旗大会と東北大会では、いずれも今季のチーム目標である準決勝へ進出。リーグ戦も6試合で4勝2引き分けと負けなしで、強豪のJFE東日本や日本新薬にも土をつけている。
杉森監督は「自覚が芽生えた」選手の例として、投手では柴崎 倭、野手では熱田光俊を挙げる。これまで同期の西舘や渋谷祐太郎の陰に隠れていた3年目左腕の柴崎は、先発で試合を作れるまでに成長。昨年は途中出場が多かった4年目の内野手・熱田は、東北大会の全4試合にファーストでスタメン出場し、八番から六番まで打順を上げながら打率.308、1本塁打と躍動した。
また、早くも先発の柱になりつつあるルーキーの後藤佑輔や四番に定着した2年目の三上竜誠も、巡ってきたチャンスをものにして何度も勝利に貢献している。日本新薬や東海理化を相手に好投した後藤は、「実戦で多く投げさせてもらったことが、今の結果につながっている」と話していた。ケガ人はいないに越したことはないが、燻っていた選手や若手が台頭するきっかけになったのは確かだ。
「JABA大会で決勝トーナメントに進めるようでなければ、都市対抗では戦えない。今年は常勝チームを倒して勝ち上がれているので、東京ドームでも勝てる力はあると思います」
杉森監督は、都市対抗東北二次予選に向けて、そう自信を漲らせていた。
長嶋亮磨と渋谷祐太郎も「結果的にいい方向に転んでくれた」と実感
主将の長嶋は、長野県知事旗大会の約1週間前に右脚を肉離れ。ほかにも主力が次々と離脱する中でチームは勝ち続け、「ケガをしてよかったということはないですが……チームの状態は結果的にいい方向に転んでくれた。全体的に強くなっている」と安堵した。
プレーできずともベンチには入り、客観的にチームメイトの姿を見た。
「普段は試合に出ていなかった選手が、楽しそうにプレーしていた。誰が出ても同じような結果になるくらい、競争が熾烈になっています」
ベンチに悲壮感が漂う瞬間はなく、一人ひとりが闘志を燃やしながらグラウンドに立った。長嶋自身はリハビリやアフターケアに時間をかけたことで予定より早く完治し、都市対抗宮城県一次予選でスタメンに復帰。3試合で1本塁打を含む6安打と快音を響かせ、二次予選進出に貢献した。大学までに主将の経験はなく、本人曰く「喋りも上手いほうではない」という。それでも、頼れる仲間がいることで気負わずにプレーできているといい、「みんなが活躍できるので、打席で余裕を持てています」と笑みを浮かべる。
そんな中、課題を自己分析した上で、遅くなっていた並進スピードを高めるために、ワインドアップに取り組むなど試行錯誤を繰り返した。杉森監督が「一本立ちして、大事な試合で好投してもらいたい」と期待を寄せていたキーマンだけに、東北二次予選でも大車輪の活躍を見せてくれるはずだ。
その渋谷も「ケガ人が多い分、一人ひとりが『自分がやらなきゃ』という気持ちになれている。自然と盛り上がって、全体の調子のよさにつながっていると思う」と話す。やはり、投手、野手ともに「自覚が芽生えた」選手は少なくないようだ。
「去年、悔しさを味わって『最後の弱さ』は自覚しているので、そこを打破したい」とは長嶋。ケガ人も徐々に復帰し、「あと一歩」を立て続けに逃した経験を生かす時が来た。
「とにかく、第一代表を勝ち取るために、冷静に、熱くプレーします」
試練を乗り越え、強くなった七十七銀行の戦いぶりに注目だ。
取材・文=川浪康太郎
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