【浦和レッズ】いざ開幕!FIFAクラブワールドカップ2025 グループステージ対戦チーム情報と勝利のカギは?~インテル・ミラノ編~

浦和レッドダイヤモンズ
チーム・協会

【©URAWA REDS】

 世界中のトップクラブが一堂に会し、世界一の座を競う、クラブサッカーの最高峰『FIFAクラブワールドカップ』が6月15日にいよいよ開幕する。

 今大会よりナショナルチームのワールドカップと同様、4年に1度開催される新フォーマットへと移行。さらに、参加クラブ数は従来の7クラブから32クラブへと拡大した。賞金総額も大幅に増額され、アメリカの地で過去最大規模の世界一決定戦が繰り広げられる。

 大会方式はグループステージ上位2クラブがラウンド16に進出。

 グループリーグにて、CAリーベル・プレート(アルゼンチン)、インテル・ミラノ(イタリア)、CFモンテレイ(メキシコ)の3クラブと決勝トーナメント進出をかけて戦う浦和レッズは6月6日(現地時間6月5日)には現地に入り、6月18日(午前4時キックオフ)のグループステージ初戦に向けて、入念に準備を進めている。

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 FIFAクラブワールドカップ2025 グループステージ対戦チーム情報と勝利のカギは?というテーマでお届けしているコラムの第2弾は、浦和レッズがグループステージ第2戦で対戦するインテル・ミラノ(イタリア)について、イタリア在住25年目のスポーツライター弓削高志さんに取材を行った。

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 「倒すなら、今。浦和レッズが勝利する大チャンスだと思います」

 イタリアを拠点に長年、『カルチョ(サッカー)』の取材を続けているスポーツライター弓削高志氏の言葉は、FIFAクラブワールドカップ2025に臨む浦和レッズの背中を大きく押してくれる。

 倒すべき相手とは、6月21日にグループステージMD2で対戦するインテル・ミラノ(インテル)を指している。

 弓削氏が「チャンス」と言い表したのは、インテルの選手たちのコンディションやメンタルに起因している。

 「2024/25シーズンのインテルは、シモーネ インザーギ監督が4年をかけて、ベテランと若手をミックスさせながら、攻守に手堅い戦い方ができるチームを作り上げ、イタリア国内でもその完成度は、おそらく最も高かったと思います。それを証明するように、シーズン終盤に差しかかるまで、インテルはUEFAチャンピオンズリーグ(CL)、コッパ・イタリア、スクデット(セリエA優勝)の三冠を獲得する可能性が残っていました」

 しかし、インテルはコッパ・イタリア準決勝でACミランに敗れて1つ目のタイトルを失うと、セリエAでも最終的に勝ち点1差でSSCナポリに優勝を譲り、2つ目のタイトルを逃した。

 「短期間で2つのタイトルを失ったショックは大きく、自分たちにはCLしかないという状況に追い込まれていたなかで、最後に決勝でパリ・サンジェルマンに0-5で大敗して、とどめを刺される形になってしまいました。インテルのファンはもちろん、選手たちもCL優勝に懸けていただけに、未だにそのショックから立ち直れていない状況です。
 
 まさにフィジカル的にも、メンタル的にも疲労困憊。一方で、浦和レッズはJリーグが開幕してしばらく経ち、その流れを持ったまま大会に臨めますよね。コンディションやモチベーションの差は、かなり大きな開きがあるように思います」

 さらに追い打ちをかけるように、6月3日には4年間、チームを率いて6つのタイトルを獲得したインザーギ監督の辞任が発表された(ちなみにFIFAクラブワールドカップ2025に出場するアル・ヒラルの監督に就任)。後任にはインテルのOBであり、育成組織を指導した経験のあるクリスティアン・キヴ監督が就任することになった。

 キヴ監督は今年2月から鈴木彩艶が所属するパルマ・カルチョ1913を指揮してセリエA残留を果たしているが、トップチームの監督を務めたのはその3カ月間のみ。就任から短期間で大会に臨んでくるだけに、前任者が築き上げたサッカーを踏襲する可能性は大いに高いだろう。

 それだけに弓削氏に、インザーギ前監督が築いたサッカーを紐解いてもらった。

 「3-5-2システムをベースにした守備がベースにあり、GKヤン ゾマーからのロングボールと、司令塔であるハカン チャノハノールを軸にして、中盤から一気に前線へと攻め込むプレースタイルです。チャノハノールが攻撃の組み立ての中心なので、彼のパスから右ウイングバックのデンゼル ダンフリース、左ウイングバックのフェデリコ ディマルコの突破力を活かして、前線のラウタロ マルティネス、マルクス テュラムにクロスを合わせてきます」

 注目選手はやはり、背番号10を背負うFWラウタロ マルティネスだ。

 「キャプテンを務めているように、アルゼンチン代表としてFIFAワールドカップカタール2022で優勝を経験してからは、選手としても人としても成長して、チームの精神的支柱になっています。プレーにも幅が出てきていて、今はポストプレーもできるし、自らボールも運べるし、まさにペナルティーエリア内の仕事人といった感じです。インテルに加入したばかりのころはフィニッシャーという印象が強かったのですが、今季はコンビを組むテュラムに点を取らせるプレーも増えています」

 必然的にマークする場面が増えるマリウス ホイブラーテンとダニーロ ボザの両センターバックは、最大限の警戒が必要になるが、彼にだけ意識を持っていかれると、今季リーグ戦14得点のテュラムにラストパスを出されて、シュートを狙われることになる。

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 また、弓削氏が「司令塔」と表現したように、攻撃の組み立てを担っているのが、トルコ代表のチャノハノールだ。インテルは彼を経由して攻撃を仕掛けてくるが、裏を返せば彼を抑えることが活路となる。弓削氏が0-5で大敗したパリ・サンジェルマンとのCL決勝を例に挙げる。

 「決勝ではチャノハノールが封じられ、ボールも持てなければ、パスも受けられませんでした。イタリアでは、ベンチの指示をリアルタイムでレポーターが教えてくれるのですが、チャノハノールが抑えられたことで、インザーギ監督が焦っている様子も伝えられていました」

 攻撃の要であり、相手の生命線を抑えるのは、サミュエル グスタフソンや安居海渡の役割である。特にJリーグでも屈指の読みと強さで相手の攻撃を潰してきた安居にかかる期待は大きい。

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 守備では、イタリア代表のアレッサンドロ バストーニ、フランチェスコ・アチェルビの堅実さを挙げるが、そのなかでもGKゾマーの存在は大きいという。

 「2023/24シーズンに加入したときは、フリーでの加入したこともあって、決して期待値は高くはなかったのですが、昨季、スクデットを獲得するなかで、重要なセーブをたびたび見せたことで信頼も高まり、さらにスイス代表を引退してクラブでの活動に専念すると宣言してからは、ファンからも支持を集めています。決して上背があるGKではないですが、セービングの反応はピカイチで、正確なロングフィードも武器の一つです」

 今季のCLでもゾマーの存在感は光っていたが、そこは浦和レッズの守護神も負けていない。セービングの技術は西川周作の最大の特長であり、ロングフィードはインテルの隙を突く武器になる。

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 そしてもう一人、名前を挙げたのが25歳のダヴィデ フラッテージだ。

 「ゴールセンスのあるMFなので、浦和レッズにとっても厄介な選手になると思います。CL準決勝のFCバルセロナ戦で決勝点をマークしたように、点を取ることのできる2列目なので」

 インザーギ監督から冷遇されていたというイタリア代表MFは、新監督が就任したことでチャンスをつかむ可能性もある。

 また、インテルの主力選手たちは長いシーズンを戦い終えたばかりとあって、新戦力が起用される可能性も高いと、弓削氏は言う。

 「すでにクロアチア代表のMFペダル スチッチとブラジル人のMFルイス エンリケの獲得が決まっています。特に後者は今季、9ゴール10アシストとブレイクし、オリンピック・マルセイユのリーグ・アン2位に貢献した選手なので、起用される可能性は高いと見ています」

 指揮官交代に揺れるインテルだが、各国代表に名を連ねる選手たちが揃うだけに、決して油断はできない。だが、新監督が前任者のサッカーを活かして戦ってくるのであれば、パリ・サンジェルマンが5-0で勝利したCL決勝は大いに参考になるだろう。

 「CL決勝は、パリ・サンジェルマンがインテルの攻略法を示したとも言える内容でした。パリ・サンジェルマンの選手たちは、スピードのある選手が多いので、守備では一対一の状況を作られないようにしなければならないと言われていたのですが、インテルはその状況を許してしまいました。また、前線からの圧倒的なハイプレスにも苦しんでペースを握れないまま、相手に得点を許してしまっていましたよね。マチェイ スコルジャ監督もあの試合は絶対に見て分析していますよね。浦和レッズにとってもインテルをどう崩せばいいかというヒントがたくさん詰まっているように思います」

 ハイプレスはマチェイ監督率いる浦和レッズの真骨頂でもある。松尾佑介、渡邊凌磨を起点にした前線からの守備で相手を追い込み、パリ・サンジェルマンさながらの速い攻撃で仕留める。CL決勝の得点シーンを浦和レッズの選手たちに替えて想像すれば、期待は高まっていく。

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 コンディションやメンタル以外にも、浦和レッズにとって優位に働くデータもある。浦和レッズは6月18日にCAリーベル・プレートと戦う第1戦と同じシアトルのルーメン・フィールドで第2戦も戦うが、第1戦をロサンゼルスのローズ・ボウル・スタジアムで戦うインテルは約1500kmを移動しなければならない。そうした状況や環境も浦和レッズにとっては追い風になりそうだ。

 選手個々の力やネームバリュー、経験、クラブとしての知名度や人気はインテルのほうが優れているかもしれない。しかし、サッカーは気力や闘志が相手を上回ることで強者を倒せるスポーツでもある。相手の状況や状態に奢ることなく、だからといって気負うことなく浦和レッズが持てる最大値を発揮すれば——第2戦の勝利は、間違いなくその先へつながっていく。


(取材・文/原田大輔)


【弓削高志】
1973年生まれ宮崎県出身。地元の出版社を経て、2001年に単身イタリアへ渡る。以降、セリエAやチャンピオンズリーグ、イタリア代表を中心に取材している。イタリア在住スポーツライター。現地暮らしは25年目、『Sports Graphic Number』『SOCCER KING』等でサッカーから社会全般まで幅広く寄稿。

【©Takashi Yuge】

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著者プロフィール

1950年に中日本重工サッカー部として創部。1964年に三菱重工業サッカー部、1990年に三菱自動車工業サッカー部と名称を変え、1991年にJリーグ正会員に。浦和レッドダイヤモンズの名前で、1993年に開幕したJリーグに参戦した。チーム名はダイヤモンドが持つ最高の輝き、固い結束力をイメージし、クラブカラーのレッドと組み合わせたもの。2001年5月にホームタウンが「さいたま市」となったが、それまでの「浦和市」の名称をそのまま使用している。エンブレムには県花のサクラソウ、県サッカー発祥の象徴である鳳翔閣、菱形があしらわれている。

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