【安田記念】“日本で一番強いマイル馬”を証明したジャンタルマンタル「第二章が始まった」

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ジャンタルマンタルが安田記念を快勝、春のマイル王の座に就いた 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 第75回GI安田記念が6月8日、東京競馬場1600m芝を舞台に行われ、川田将雅騎手騎乗の2番人気ジャンタルマンタル(牡4=栗東・高野友和厩舎、父Palace Malice)が優勝。好位3番手追走から抜け出す完勝で春のマイル王の座を手にした。良馬場の勝ちタイムは1分32秒7。

 ジャンタルマンタルは今回の勝利で通算8戦5勝(うち海外1戦0勝)。重賞は2023年GI朝日杯フューチュリティステークス、同GIIデイリー杯2歳ステークス、24年GI・NHKマイルカップに続く4勝目。川田騎手は安田記念がGIに昇格した1984年以降では歴代トップの4勝目、高野調教師は安田記念初勝利となった。

 なお、1馬身半差の2着には吉村誠之助騎手騎乗の9番人気ガイアフォース(牡6=栗東・杉山晴紀厩舎)、さらにクビ差の3着には浜中俊騎手騎乗の1番人気ソウルラッシュ(牡7=栗東・池江泰寿厩舎)が入った。

「馬自身が日本で一番強いマイル馬だと証明してくれた」

川田騎手がかつて語った通り、ジャンタルマンタルが「日本一のマイル馬」であることを証明した 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 日本で一番強いマイルの馬になれる――今からおよそ1年前の5月5日、NHKマイルカップを制した直後、川田騎手はジャンタルマンタルの可能性についてそう明言していた。その“約束”を見事に果たした安田記念となった。

「秋は結果を伴うことができなかったですけど、馬自身が本当に日本で一番強いマイル馬なんだと証明してくれたレースだったと思います」

 ジョッキーが触れた「秋」というのは、13着に終わった昨年12月のGI香港マイル。「4コーナー手前から苦しさで動けなくなっていましたから」と振り返ったように、レースに全く参加できないまま、失意の帰国となった。いや、もともと始動戦に予定していたGIII富士ステークスを熱発のために使えずに、初の海外遠征がぶっつけ本番となってしまうなど、順調さを欠いたことも大きな要因だっただろう。

 日本に戻った後も疲労が大きく、馬体もガレてしまっていたというジャンタルマンタル。だが、すぐに「復帰戦は安田記念」と目標を立てると、放牧先の山元トレーニングセンター、高野厩舎が一丸となって本来の姿へと立て直した。前走と同じ休み明けのぶっつけ本番でも、中身が違う、というわけだ。高野調教師が言う。

計画通りに調教を消化、全てがレベルアップにつながった

「走る方に向けてのレベルアップに全てつながった」と高野調教師(左から2人目)は中間の調整過程を振り返る 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

「山元トレセンのスタッフが本当に素晴らしい仕事をしてくれましたし、引き継いでからもウチのスタッフが時間をかけて走れる状態に仕上げてくれました。装鞍所での姿も完璧だったと思います。自分としては満足な状態でした」

 この半年の立て直し期間中、最も良かったポイントとしてトレーナーが挙げたのは、まずは馬自身の回復力。そして、それによって計画通り順調に稽古を重ねることができたことが、ジャンタルマンタルをさらなる高みへと引き上げた。

「香港の時とは違って、今回はこちらが課したメニューを全て注げるくらいに良い状態で、加減なく思った通りの調整ができたかなと思います。そういう状態になったというのは、馬に痛みもなく、かつ中身のベースがしっかりしている分、調教を疲労として感じるのではなく、走る方に向けてのレベルアップに全てつながったと思います」

 特に調教師の目を引いたのが「四肢の関節の伸ばし方」だったという。

「四肢の関節の伸ばし方がこれまでと違って、一段上にいるなと感覚がありました。特に川田ジョッキーが乗った1週前追い切りですごく感じたので、今までにないジャンタルマンタルの良い意味での動きだったかなと思います。この動きだったら、もっとやれるだろうなと思っていました」

川田騎手も舌を巻く「よくこんなに強い勝ち方ができたな」

好位3番手から直線で堂々抜け出し1着、後続を寄せ付けない強さだった 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 レースでは高野調教師のそんな予感を実現させるパフォーマンスをジャンタルマンタルが見せてくれた。まずは好スタートから絶好位の3番手を難なく確保……と思われたものの、すぐに外から岩田康誠騎手のロングランが馬体を寄せて先行争いに参戦。これでジャンタルマンタルは激しくエキサイトしてしまった。この時ばかりは川田騎手も「この後はどうなっていくのか」と懸念を抱いたという。

 しかし、ここからが成長とレベルアップの成果なのだろう。どうにか向こう正面で落ち着かせると、抜群の手応えのまま迎えた最後の直線は残り200mから悠々と抜け出し先頭へ。そこから後続を全く寄せ付けなかったその走りは、前半で引っ掛かってしまいそうになっていたことを忘れるくらい、余裕たっぷりの完勝だった。

 もともと道中の折り合いには課題がある馬で、今回も「完璧な競馬」ではなかったのかもしれない。だからこそ余計に際立つ強さだったとも言える。川田騎手も、ジャンタルマンタルのポテンシャルの高さを改めて感じたと口にした。

「あの競馬になって、よくこんなに強い勝ち方ができたなと思うぐらいでした。4コーナーの雰囲気はすごく動けるという感じではなく、どれくらい動けるのかなという雰囲気だったのですが、それでも動かしてみるとこれだけの動きができましたので、改めてやはり素晴らしい馬だなと実感しながらの直線でした」

「次走は海外という選択肢、距離も含めて協議したい」

次走はどこになるのか、高野調教師は「海外も選択肢」と語った 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 これで2歳の朝日杯FS、3歳のNHKマイルC、そして4歳の安田記念と、3年続けてマイルGIを制覇。各年代のマイルGI制覇は史上初めての快挙でもある。川田騎手の“予言”が現実のものとなり、名実ともに日本一のマイラーとなったジャンタルマンタルが目指すその“先”には何が見えてくるのだろうか。安田記念の優勝馬には秋の米GIブリーダーズカップ・マイルへの優先出走権も与えられる。今後の目標について、高野調教師はまだ決めていないと前置きしたうえで、次のような展望を語った。

「今回のレースは今後に向けても素晴らしい内容だったと思います。結果、内容も伴ったということで本当に色々な選択肢が広がっているという状況ですから、まずは馬の無事を確認して、牧場、オーナーら皆さんと次走について協議していきたいと思います。海外という選択肢、距離も含めて協議していきたいですね」

 高野調教師はまた、「ジャンタルマンタルの第二章が始まったという思い」とも胸の内を明かした。その第二章の続きはどこを舞台として幕が上がるのだろうか。これは筆者の個人的な思いとなるが、やはり海外で“日本一のマイラー”の強さをぜひ披露してほしい。(取材・文:森永淳洋)
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