このジャージーが紡いできたもの
ボロボロの挑戦者が見せた決意とプライド
四肢はまるで自分のものではないかのように重く、思うように動いてくれない。
肺は酸素を求め、激しく収縮と膨張を繰り返す。
これが単なる痛みか、それとも明らかな負傷か、ここまで戦ってきた者なら自らわかる。だが、それが例え深手の傷でも、プレーに戻らない理由にはならない。
1分だ、いや30秒だっていい。少し待てば痛みは落ち着く、またタックルできる、まだ走れる。
この舞台でこのジャージーを着て、プレーをやめるという選択肢はない。
今季最少失点のディフェンスも、得意のフォワード戦も、エリアやポゼッションといったスタッツ面でも、ほとんどの時間帯で相手が制した。
武器を奪われ、策も封じられ、まるで手足を縛られたかのようにもがく挑戦者だが、その目にはどんなに小さくなろうとも消せない炎があった。
試合でボールや陣地を奪われようと、自分たちには決して奪わられないものがある。それは勝利を諦めない決意、そしてこのチームで戦うというプライドだ。
どんなにやられてもひたむきなプレーを繰り返す。トライラインを幾度超えられようと、すんでのところで耐えしのぐ。
そうして乗り越えた後半33分。ついに残り5点まで相手を追い詰めた。だが時間は足りなかった。ノーサイドの笛とともに選手たちを濡らした雨は、「もう戦いは終わったよ」と優しく肩を叩くようだった。
苦しい展開が続くも僅差を保って逆転を狙う
フォーリー選手が高いキックで相手キャプテンにボールをキャッチさせると、狙いすましたようなタイミングでマキシ選手がタックルを浴びせた。
「ファーストコリジョンでチームのスタンダードを示す、これをキャプテンとして試合前には言い続けました。フォーリーがいいところにキックしてくれました」
マキシ選手はその言葉通り、この試合最初の接点で相手選手を押し返す。その後にはさっそくゴール前まで迫るチャンスを作った。
しかしそれ以降はなかなか敵陣に入りこめない時間が続く。逆に相手は8分に先制トライを奪うとスピアーズは追う展開となり、17分と32分に2本のペナルティゴールで6点を追加するも、チャンスらしいチャンスを作れないまま6対8の2点差で前半を折り返した。
さらに10分にはハラトア選手が反則により一時退場となり防戦一方の状況が続く。
20分過ぎにスクラムで反則を誘ったことをきっかけにやっと敵陣に入ると、一度は退けられたゴール前の機会をあきらめることなく攻め続け、後半30分過ぎにフォワードの連続攻撃からバックスに展開し、立川選手がトライを奪った。
このタイミングで、残りのリザーブ全員を投入し逆転を狙うスピアーズだったが、最後まで得点のチャンスを作ることができず13対18で敗戦となった。
試合後に見せた選手たちの力強い眼差し
だからこそ、この決勝でも勝ちたかった。試合直後は打ちひしがれ、肩を落とした。
それでもいつものチームらしさは変わらない。仲間を労い、勝者を称え、審判に敬意を表し、観客席に感謝を示す。
そしてなにより、選手たちの目には力があった。
決勝戦後の選手たちが見せた、力強い眼差し。きっと47年前にこの白と黒のジャージーを着て戦ったOBたちも、同じような目で敗戦を噛み締めていたはずだ。
勝利を掴む者は、最後まで戦うことをやめなかった者だ。大切なことは、打ち負かされたかどうかではなく、立ち上がったかどうかだ。
このチームには47年前からこれまでずっと、敗戦してもなお目には炎が宿る。
この試合後に見せた力強い眼差しの果てには、真の勝利が写っている。
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写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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