JRA競馬学校に二度不合格も、厩務員時代に山口勲騎手との併せ馬で腕を磨いた新人騎手。キャリア2カ月で九州優駿栄城賞へ有力馬と挑む/月刊・佐賀競馬だより

佐賀県競馬組合
チーム・協会

鯱の門特別を勝ったツモと長谷川蓮騎手 【撮影:佐賀県競馬組合】

受験生だった頃のこと、覚えていますか?
制服のない高校で自由を楽しみたい、広いキャンパスで憧れの大学生活を送りたい――入学すれば、将来の可能性が広がると夢見つつも、もしも落ちたら自分の人生はどうなるのかと不安にも駆られたものです。

ある少年は幼い頃からジョッキーになることを夢見て、中学3年生と高校1年生でJRA競馬学校を受験するも、不合格。
「この先、どうしよう……」と途方に暮れました。
しかし、馬が好きな気持ちに突き動かされ、紆余曲折を経て今年4月に地方競馬の佐賀競馬場で騎手デビューを果たすと、佐賀版ダービーとも言われる「九州優駿栄城賞」に有力馬で挑むチャンスを掴みました。

彼の名は、長谷川蓮騎手。
5連勝で前哨戦を快勝したツモという3歳牡馬とコンビを組みます。

厩務員時代にトップジョッキーと何度も併せ馬

長谷川騎手が自ら進んで一人で馬に乗り始めたのは小学1~2年生の頃。実家は祖父の代から生産・育成牧場を営んでいたため、小学校入学前からポニーなどに乗っていました。

牧場があるのは鹿児島県。
隣の宮崎県と合わせて古くから馬産の歴史があり、ポニー競馬や草競馬が盛んな土地でもあります。長谷川騎手もポニー競馬に参加したり、ジョッキーベイビーズの予選に出場。実家の牧場では休養馬や2歳馬の乗り付けを手伝うこともありました。

馬に囲まれて育ち、ジョッキーを目指すのは自然な流れでした。
しかし、前述の通りJRA競馬学校は二度受けて、いずれも不合格。
夢破れてしまいましたが、「馬に関わる仕事は絶対にしたい」という気持ちは揺るがず、通っていた高校を中退。家族は「自分がやりたいと思うのなら、全力で頑張れ」と背中を押してくれ、父と繋がりのあった佐賀競馬・東眞市調教師の厩舎で厩務員として働くことになりました。

この行動力は長谷川騎手にとって好循環を生んでいきます。
厩舎で働き始めると、競走馬や騎手と触れる機会も、レースを間近で見る機会も増えて、ジョッキーになりたい思いはより強まっていきました。

彼が小さい頃から実家の牧場の馬に乗る姿を見ていた東調教師も、「一般の子と比べると、全然上を行っている」と騎乗センスを感じていました。

同じ厩舎に所属するのは当時、佐賀リーディングの山口勲騎手。トップジョッキーとの併せ馬を東調教師は幾度となく組み、長谷川騎手が上達できる環境を整えました。

本人も「山口騎手は調教から一つ一つ丁寧にされていて、常に馬と会話している感じがします。馬との折り合いのつけ方を聞くと、アドバイスもくださいました」と、隣で吸収していきました。

毎日約15頭の調教に乗り、「少々の馬なら乗りこなせるようになった」(東調教師)という頃、地方競馬の騎手養成機関である地方競馬教養センターを受験し、合格。
栃木県で2年間の訓練を経て、今年4月に晴れて騎手デビューを果たしたのでした。

地方競馬教養センターで訓練に励む長谷川蓮騎手 【撮影:大恵陽子】

「長い距離でも折り合いがスムーズ」ツモと3歳頂点へ

騎手になって佐賀競馬場に戻ってくると、1頭の3歳馬との出会いがありました。
所属する東厩舎にいたツモという名の2勝目を挙げたばかりの牡馬。これまでは兄弟子の山口騎手や先輩の青海大樹騎手が乗っていましたが、長谷川騎手が4月から調教を担当。
4月19日のレースで初コンビを組むと、序盤こそツモがやや力んで行きたがる素振りを見せたものの、大差勝ちを収めました。

普段の調教でもとにかく元気で、「自分でテンションが上がっちゃってイレ込んだり、グーッとハミを取るところがある」(長谷川騎手)ため、ダメな場面ではしっかり怒りつつも、馬の気持ちを感じながら調教を重ねました。
時には山口騎手にアドバイスを求め、自分なりに解釈して実践。

すると、コンビ2戦は道中の折り合いもしっかりとついて圧勝。さらに、九州優駿栄城賞の前哨戦・鯱の門特別は距離延長で初の1800mながら、これまた9馬身差をつけて圧勝したのでした。

鯱の門特別を圧勝したツモと長谷川蓮騎手 【撮影:佐賀県競馬組合】

「ツモは頭が良くて、使うたびにレースを覚えてくれています。鯱の門特別は向正面からスタートして1周半するコースだったので、1周目の3~4コーナーで馬が勘違いして全力で走ろうとしないか心配しましたが、思ったよりも大丈夫でした。長い距離でも折り合いがスムーズにつきました」

前哨戦の鯱の門特別を勝ち、引き上げてきたツモと長谷川蓮騎手 【撮影:佐賀県競馬組合】

ツモの武器は後方から一気に捲る末脚。
3戦連続で上がり3ハロン38秒台の脚を連発していて、佐賀の3歳戦では相当に速いタイムです。

「いつも頑張ってくれるので、安心して乗れます」

兄弟子が調教で騎乗馬と会話しているように、長谷川騎手もツモと意思疎通できていますか?と聞くと、力強くこう答えました。

「できていると思います」

そう言えるのも、ツモと積み重ねてきた日々があるからこそ。
夜、厩舎に見回りに行くと、ツモは長谷川騎手の気配を察していつも顔を出してくるようになりました。

馬房でツモと触れ合う長谷川蓮騎手 【撮影:東眞市調教師】

そんな長谷川騎手について、師匠の東調教師はこう話します。

「順調すぎるくらいですね。2年半、厩務員としてここで働いていたので、みんな彼のことを知っていて、彼のお父さんのことを知る関係者も多いから、たくさんの人が可愛がってくれています。
肝が据わっていて、レースで慌てないのがいいところです」

すでに17勝を挙げ、4月以降の勝ち星では佐賀4位。

初勝利を挙げて笑顔を見せていた長谷川蓮騎手 【撮影:佐賀県競馬組合】

そして、キャリア2カ月で九州優駿栄城賞にツモと挑もうとしています。

「緊張はしていません。馬を信じて乗るだけで、出るからには勝ちに行きます」

受験に失敗し、紆余曲折を経ながらもジョッキーとしてのスタートラインに立った長谷川騎手。
6月1日18時05分、さらなる大舞台を目指して勝負に挑みます。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

佐賀競馬は九州唯一の地方競馬場として主に土日に競馬を開催しています。注目の重賞情報やイベント情報など、佐賀競馬のニュースを日々お届けいたします。

当サイトには一部アフィリエイトリンクが含まれています。

リンクから商品・サービスをご購入いただいた場合、スポーツナビに収益が発生することがあります。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント