<国内男子ゴルフ>初優勝と共に晴れた闇。金子駆大の涙のわけ
最古のオープン競技「第90回 関西オープンゴルフ選手権」
※リンク先は外部サイトの場合があります
90回を迎えた日本最古のオープン競技で、22歳の金子駆大(かねこ・こうた)が、プロ5季目の初優勝を飾った。
勝ち方も劇的だった。
43歳のリューと首位で並んで出て幾度も大混戦に埋もれたが、2打差で入った16番では8メートルものイーグルを奪った。
再び首位に並んだ17番では今度、7メートルのバーディトライも沈めた。
1差の単独トップで迎えた18番ではOBを覚悟したティショットが幸い右のバンカーに残っていたが、ボールはあご近く。
難しい状況で、一度握った8アイアンを9アイアンに持ち替えた。冷静に花道に運び、3打目勝負の約90ヤードがピン1メートルにくっついた。
「ゴルフをさせてもらえたのは母親のおかげ。たくさん迷惑もかけたので。嬉しさがあふれ出ました」と、息子の躊躇のない抱擁に、久美さんは驚いた。
「あんなにぐしゃぐしゃに泣いて。私にもハグして。いつもは私が抱きしめようとしても嫌がるのに」。
いまだかつてない感情の発露が喜びと感謝の大きさを物語った。
その初回に登場したのが金子で、金子をよく知る関係者の中にはその赤裸々な告白に、驚いた者もいる。
母親の久美さんは、事前に金子から雑誌の取材を受けると打ち明けられたとき、「隠すことではない。むしろ今も苦しむ子たちのためにそれはよくないことだと広めてほしい。コータのような思いをする子が少しでも減るように」と、賛成したそうだ。
お父さんからの制裁は、すでに小学校進学と同時に始まっていたという。
「あの頃はただ無理やりやらされて。あの子にとってゴルフはつらい記憶でしかなかったと思うんです」と、久美さん。
「そこに関しては本当に申し訳ない。私がもっと早く守ってあげられればよかったのに」と、思い出すと今も涙がこぼれてしまう。
だが、中学進学前に離婚を決意し、「つらい思いをしてきた分、これからはあなたの好きなことをすればいい」と、久美さんが思いを伝えたとき、金子から返ってきた言葉は「やっぱりゴルフを続けたい」だった。
「それならこれからは、ママがあなたを支える。全力でサポートする」と手塩にかけてきた息子が、高校3年のプロ転向を機に、次第に久美さんの手を離れ、交通や宿の手配もすべて自分でするようになり、昨年からは目澤コーチに師事。
めきめきと自立し、いよいよ悲願の初優勝を達成した。
表彰式で伝統の優勝杯を受ける息子の姿。
「ここまで立派に育ってくれて嬉しいです、本当に」。
お母さんの涙腺も完全崩壊した。
主催者やコース、ファンやボランティアの方々に丁寧に礼を述べる途中でつい、「家族のみなさま…」と言ってしまい「“みなさま”はおかしい!」と、マイクに向かって自分ツッコミする姿は、一緒にお笑い番組を見て笑っている普段の「コータ」に思えて、それもまたお母さんにはいとおしい。
「どちらかというと引っ込み思案」と案じていた息子が大勢の仲間から祝福を受けている。
「家では口数も少ないのに。いつのまにこんなにコミュニケーションが上手い子になったのか。ゴルフを通じてできた仲間は本当に宝物ですね」。
かつての親子の闇は完全に晴れた。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ