リーグ屈指の左右の両輪へ。隅田知一郎と今井達也の“進化”にデータで迫る
埼玉西武を支える左右の先発が、ともに防御率ランキングの上位
今回は、今井投手と隅田投手が記録してきた年度別の指標をもとに、その特徴や強みを分析。両投手が遂げてきた成長の軌跡を振り返りつつ、今シーズンはどのような部分で進化を遂げているのかについて見ていきたい。
(※以下、成績は5月7日の試合終了時点)
奪三振率の向上に加えて、課題だった制球力にも顕著な改善が
2022年以降は4年連続で8点台以上の奪三振率を記録しており、2022年と2024年には投球回を上回る奪三振数を記録。2024年には自身初タイトルとなる最多奪三振にも輝くなど、近年に入ってから奪三振力が大きく向上していることが示されている。
また、通算の与四球率は4.66と悪く、2018年から6年連続で与四球率が4点台以上となるなど、制球面の不安定さが弱点となっていた。しかし、2024年は与四球率3.63とキャリア初の3点台を記録し、続く2025年は2.93と前年以上に数字が向上。最大の課題だった制球力の改善は、投球の安定感が飛躍的に高まっていることにも直結している。
その結果として、三振を四球で割って表す「K/BB」という指標も、近年に入ってからは向上を見せている。2018年から2022年までの5年間におけるK/BBは全て1点台だったが、2023年は2.13、2024年は2.67と徐々に数字が向上。そして、2025年には初めてK/BBが3点台へと到達しており、投手としての能力が着実に高まっていることがうかがえる。
今季の被BABIPは非常に低いが、昨季の数字とその他の成績を鑑みると……
ただし、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す「被BABIP」も今季は.168と非常に低く、キャリア平均の数字も.265と一般的な基準値の.300を下回っている。だが、2024年の被BABIPは.281とキャリア平均よりも悪かったものの、同年にキャリアベストと呼べるシーズンを送っていた点も注目すべきポイントだ。
被BABIPは運に左右されやすい指標であるとされているが、その理由としては奪三振や与四球といった投手自身で制御できる要素の影響を受けない点が挙げられる。すなわち、奪三振が多く、与四球を着実に減少させている今井投手の場合は、2024年のように、被BABIPの変動に大きく左右されずに好成績を残せる可能性も決して低くはないと考えられる。
抜群の制球力と一定以上の奪三振率。投手としての能力は折り紙付き
それに加えて、キャリア平均の奪三振率は8.12と、先発投手としては十分に高い水準にある点も特徴だ。それもあって、キャリア平均のK/BBは3.50と、一般的に優秀とされる水準に達している。さらに、与四球率の向上に伴ってK/BBも毎年向上を見せており、2024年は4.40、そして2025年は6.80と、投手として非常に優れた能力を持つことが示されている。
過去のシーズンでは運に恵まれなかったが、今季はその傾向にも変化が
それもあって、2025年の被打率は.203とキャリア平均の数字(.248)を大きく下回り、WHIPも0.85と初めて0点台に突入。奪三振率や与四球率といった投手がコントロールできる部分に関する能力の高さを鑑みれば、これまでの揺り戻しに近い形でBABIPが向上を見せつつある今季は、これまで以上の大ブレイクを果たす年となる可能性が大いにありそうだ。
奪三振力とコントロールを兼ね備えた両投手は、今後もさらなる進化を続けるか
快投を重ねる両投手がこのまま2桁勝利を達成できれば、今井投手にとっては3年連続、隅田投手にとっては自身初の快挙となる。投手として着実に進化を続ける両投手は5月以降も安定した投球を続け、左右の両輪としてチームを上位進出へ導くことができるか。投手タイトル獲得の可能性も十二分に示している、獅子を支える好投手2名に今後も要注目だ。
文・望月遼太
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