今シーズン最後の練習試合 浦安D-Rocks戦はチームのこれまでの歩みを示す一戦に

チーム・協会

後半36分のオリー選手のトライ。試合は浦安Dパークにて行われた 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

「まあまあです」
今シーズン最後の練習試合、ノーサイド後に松波昭哉選手はこの試合の自身のスクラムをそう振り返った。
今シーズンを最後に、スパイクを脱ぐ。今季が終われば、もうスクラムを組むことはない。自身がこのチームに入団して10年間、そのキャリアのなかでもっとも成長したと振り返るスクラムだが、故にそのプレーの評価は厳しかった。それでもこのチームのスクラムの成長に手応えを感じる。
「入団した当初は他のチームにボコボコに押されることもありました。けど今では年を重ねるごとに強くなっています。フロントロー同士で高め合い、フォワード8人でスクラムと向き合ってみんなで強くなってきました」

松波昭哉(まつなみ しょうや)/1992年4月11日生まれ(33歳)/福岡県出身/身長186cm体重110kg/東福岡高校⇒明治大学⇒クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2015年入団)/ポジションはプロップ 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

「このチームに入って最も成長できた部分は、ラインアウトのスキルです。大学時代はジャンパーではありませんでした。このチームでロックとしてプレーするにあたり、ラインアウトの知識やスキルについてゼロからスタートさせました。そのなかで、先輩たちがサポートしてくれて、ここまでプレーすることができました。本当に感謝しかありません」
同じく今シーズン限りで退団を発表した松井丈典選手は、ここまでの歩みをそう振り返る。最後の練習試合では、前半40分、そして後半途中からさらに20分をプレーした。ノーサイドまであと数分となったころに訪れたゴール前のチャンスの場面では、思わぬサプライズがあった。
このラインアウトでチームには2つの選択肢がある。モールでいくか、それともスペシャルサインでいくか。
サインを決めるサインマスターで同じピッチ上にいたロックの先輩、青木選手から松井選手に声がかかる。
「ちゅい(松井選手のこと)が、サイン決めていいよ」
先輩からの粋な計らいだった。松井選手は、この選択でスペシャルサインを選択し、見事にオリー選手のトライに繋がった。

松井丈典(まつい たけのり)/1996年8月6日生まれ(28歳)/愛知県出身/身長195cm体重115kg/愛知県立旭野高校⇒早稲田大学⇒クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2019年入団)/ポジションはロック 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

「9歳からラグビーを始めたんで18年ですか、長いことやりましたよね」
40分のプレーを終えて、そう振り返るのは土谷深浩選手だ。この日はNo.8のポジションで先発した土谷選手は
「これが最後だと思って、どうなってもいいという気持ちでプレーしました」
と試合後コメントしたように、直向きに体を張り続け劣勢の場面でチームを助けた。
「なかなかきつい場面もありましたけど、その中でも自分のやるべきことをやり切れました」
とプレーを振り返るその言葉は、まるで在籍中の5年間を回顧するようだった。2020年に入団し、そのシーズン途中に新型コロナウィルスを理由にシーズン中止。ラグビーやチームとの関わり方を考えさせられるルーキーイヤーを過ごし、2021年のホンダヒート戦でデビュー。リーグワン元年となる2022シーズンに2試合出場するも、その後なかなか出場機会に恵まれなかった。「今季こそは」と準備し好調だったと手応えを感じた今シーズンだったが、怪我も続いて歯がゆい時間を過ごした。ただそれでも歯を食いしばって自分のやるべきことをやる、土谷選手とはそんな選手だ。そんな姿勢はこの試合でも表れていた。

土谷深浩(つちや しんこう)/1998年3月19日生まれ(27歳)/福岡県出身/身長187cm体重102.kg/福岡県立福岡高校⇒筑波大学⇒クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2020年入団)/ポジションはフランカー 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

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今季好調の連携の良さは練習試合でも、前半苦しい時間を耐え後半巻き返して勝利を掴む

クボタスピアーズ船橋・東京ベイの今季最後の練習試合は、5月11日に浦安D-Rocksと対戦した。互いに事前に退団選手を告知後の試合とあって、両チームの多くのファンが会場に訪れた。

さわやかな日差しの中キックオフした試合は、序盤はD-Rocksペースで展開する。6分と17分に相手の得点を許し、スピアーズはチャンスこそあるものの活かせず時間が過ぎた。
それでも30分過ぎには、この日フルバックで出場した二村選手が相手のキックをキャッチするとカウンターアタックを仕掛けグラウンド中央を突破、ブリン・ホール選手に繋いで5点を返した。
2トライを追うスピアーズは、37分にターンオーバーアタックから岡田選手と青木選手のベテラン勢が素早い反応でツヨシ選手のトライに繋げると、前半終了間際にはラインアウトから松井選手がキャッチし2フェイズを経て新入団の近藤選手がトライを獲得、19対21で折り返した。

前半の途中から引き寄せたスピアーズの流れは、後半も継続される。後半3分に山﨑選手が逆転トライを決めると、7分にもバックスのラインブレイクから岡田選手がトライし、後半開始10分たたずしてリードを12点とした。
この結果を生んだのは、全員の懸命で手を抜かないプレーに、チームの強さの象徴とも言える全員の連携があったからだ。攻守やキッキングゲームにおいて、だれかに頼るのでなく全員がフォローしながら、相手を追い詰める。そして、それをやり続ける。そんなスピアーズらしい展開で、その後も得点を取り続けた。
リードを保ったスピアーズは、後半36分のラインアウトで松井選手がボールをキャッチすると、相手の意表を付いてショートサイドを攻め、オリー選手が50点目を獲得した。

その後は勝敗に関係なく互いに果敢に攻め、固く守り、最後の1秒まで自分たちのラグビーをプレーし続けた。最終スコアは50対38でスピアーズの勝利だった。

後半の逆転トライを決めた山﨑選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

試合後は両チームの退団選手の挨拶の場が設けられた。ホスト側となる浦安D-Rocksは、相手チームとなるスピアーズにもこの機会を用意してくれた。フィールドに温もりのある歓声が溢れる。それに応える選手たち。そこには敵や味方、勝者や敗者もなく、ただただチームや選手への愛情、そして退団選手たちへの謝意が表されていた。

チームは急には強くならない。ボコボコにスクラムを押される日や勝てない試合が続く時もある。
選手は急には育たない。一から先輩に教えられる日々や、怪我からさらに前を向いた努力が成長を生む。
そうしてみんなで高め合ってきたこのチームだ。スタジアムで発揮するパフォーマンスには、まるで影のようにこれまで辿った道筋が見える。
これからプレーオフに向けて戦う今だからこそ、これまでの歩みをさらに信じ抜く。
この練習試合で踏みしめた一歩と共に、いざプレーオフへ。

【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】


文:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ広報担当 岩爪航
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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著者プロフィール

クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、日本ラグビーの最高峰「ジャパンラグビーリーグワン」に所属するラグビーチームです。。1978年創部し1990年にクボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市の(株)クボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備しました。「Proud Billboard」のビジョンの元、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っています。またSDGsの推進や普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進しています。

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