ある意味"前半戦"。雌雄を決する"後半戦"へ
ラストゲームであり前哨戦
この試合の興味はそこに集約されていた。
スティーラーズは前節終了の時点で5位が確定していた。ブルーレヴズの4位もほぼ確実。僅かに残っていた3位浮上の可能性は、2時間半早く始まった他会場の試合でスピアーズが勝ったことで、この試合が始まる前に消滅していた。
ブルーレヴズとスティーラーズは1週間後、17日の準々決勝でもう一度対戦することが決まっている。
スティーラーズは共同キャプテンのブロディ・レタリックと李 承信、最年長の日和佐 篤をベンチメンバーからも外し、次週に備えた。
だがブルーレヴズはこの一戦に、ほぼベストのメンバーを組んだ。
主将のクワッガ・スミス、ミスターレヴズのベテラン日野 剛志と大戸 裕矢、ここまで全試合出場で働きづめの北村 瞬太郎とヴィリアミ・タヒトゥア、ヴァレンス・テファレの名前も、惜しげもなくメンバーズリストに書き込まれた。
「やっぱり遠く静岡から応援に来てもらってますし、やっぱり1試合でも負けたくないっていう気持ちです。それと、今日のメンバーでやることで、また来週修正して少しでも成長できると思うので。休ませようという考えも少しはあったんですけども、うちはあんまりそういう器用なことをできるチームじゃないんで。全試合全力で戦いたいなと」
クワッガ・スミス主将も、指揮官の選択に全面的に同意していた。
「ここまでのシーズンを通して、コーチ陣が休みを与えてくれながら戦ってこれたので、最終戦で休む必要がなかった。それに準々決勝に向かう前にこのメンバーで試合ができたことも意味があると思う。継続性を持って戦うことができるし、全員が揃って戦うことがしばらくなかったので、皆がフィールドに揃って試合ができたことも大きいと思う」
青と赤のシーソーゲーム
互いにスペシャルプレーは封印。ラインアウトの動きも見せたくない。個々の反応、判断、フィジカルな能力などナチュラルな力のぶつかりあいになる。
逆説的だが、これはスティーラーズの土俵だ。新鋭のNo8フナキ、リーグワンデビューを飾ったばかりの20歳イオアサらがポテンシャルを思い切りぶつけてくる。終盤、イエローカードが重なり13人になった時間帯もレヴズをゴール前に釘付けにしたほどだ。
象徴的なのは前半のラストプレーだ。
自陣22m線に攻め込まれ、40分経過のホーンが鳴ったところでPKを獲得。地域と時間を考えればタッチに蹴り出して前半を終わらせる選択がセオリーだったかもしれない。だがレヴズの闘将クワッガは迷わずクイックタップからアタック。
すぐに追いかけたマロ・ツイタマが左へ、さらにサム・グリーンとマルジーン・イラウアのループをはさんで大戸 裕矢がゲインを重ね、ハーフウェイまで前進すると右展開。奥村翔-チャールズ・ピウタウ-山口楓斗-再び奥村翔とパスがリズミカルに渡り、インゴール右中間へと約80mを切り返すトライは完成した。
それも、グラウンドの左右の幅70mをいっぱいに使うスリリングなトライ。
自陣ゴール前ディフェンスで得たPKという事前に準備のしようのない、これこそアンストラクチャーな場面から、あうんの呼吸でボールを止めることなく動かし続けた質の高い一撃だった。
当コラムでも何度も触れてきたように、好調な戦いを続けてきた今季のレヴズは素晴らしいトライ、いつまでも語り継がれそうなトライをいくつもあげてきた。だがそれらの大半は、ヴァレンス・テファレやヴェティ・トゥポウ、北村瞬太郎の個人技、個人パワー、個人の走力であげたものとも言える。
だがこのスティーラーズ戦でみせたトライは、選手個々の判断力と決断力、連携力と、多くの選手が走り続けるチーム全体の走力の高さが揃って初めて生まれた。付け加えれば、前半の40分間を走り、当たり、倒れて起きてを繰り返し、疲労が溜まった前半ラストミニッツに走り勝った一撃だった。
このためにやってきた、その舞台へ
だがこの日の勝利は1週間後の勝利を保証しない。
13人になってもスティーラーズは強かった。主力が何人も休養十分で戻ってくる。この日以上の強敵として立ちはだかるだろう。
だがクワッガが言ったように、フルメンバーで臨み、これだけのプレーができたこと自体が次戦への自信になる。
そして、ここまで勝ち続けることができた事実。
今季のリーグ戦成績は14勝4敗。
勝点では4位だったが、勝ち数はワイルドナイツ、スピアーズと並び2位タイ。ホストゲーム9戦に8勝をあげて地元のファンを喜ばせただけでなく、ビジターゲームでも4勝。藤井監督が言ったように、遠路かけつけて声を枯らしてくれたレヴニスタたちに感謝の勝利を見せることができた。
ブルーレヴズにとって、間違いなく最高のシーズンだった。
胸を張って、プレーオフの戦場に乗り込もう。
まだ見たことのない景色を見に行こう。
1962年宮城県気仙沼市生まれ。早大第二文学部卒。1985年からフリーランスのスポーツライターとして活動。『東京中日スポーツ』『Number』『ラグビーマガジン』などで取材・執筆。WEBマガジン『RUGBYJapan365』スーパーバイザー。ラグビーは1985年から、ワールドカップは1991年大会から2019年大会まで8大会連続全期間を取材。ヤマハ発動機については創部間もない1990年から全国社会人大会、トップリーグ、リーグワンの静岡ブルーレヴズを通じて取材。ヤマハ発動機ジュビロのレジェンドを紹介した『奇跡のラグビーマン村田亙』『五郎丸歩・不動の魂』の著作がある。主な著書は他に『釜石の夢~被災地でワールドカップを~』『オールブラックスが強い理由』(講談社文庫)、『読むラグビー』(実業之日本社)、『エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記』(東邦出版)など。
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