【週刊グランドスラム302】さらなる躍進を目指す東海理化の若きリードオフ・福本綺羅

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東海理化のリードオフを担う福本綺羅は、右ヒザのケガで昨シーズンを棒に振った経験も糧に、3年連続の都市対抗出場を狙う打線を引っ張っている。 【写真=古江美奈子】

 一番センターの福本綺羅が、今季の東海理化でキーマンになりそうだ。
 12年ぶり6回目の出場を果たした一昨年の都市対抗で初勝利を挙げた東海理化は、その勢いのままベスト8に進出して小野賞に選ばれた。明石商高から入社して2年目だった福本は、ルーキーの門叶直己とともに若獅子賞を獲得。野球人生初の個人賞をきっかけに、一気に上昇したいところだったが、昨年5月に行なわれたベーブルース杯大会で右ヒザの前十字靭帯と半月板を損傷してしまう。9月にようやく軽いジョギングができるようになり、本格的な練習を再開できたのは12月頃。ケガをした直後は酷く落ち込み、「グラウンドに行きたくない」と思うこともあったが、そんな時にかけられた冨川 平コーチの言葉が心に響いた。
「いい選手は、ケガから復帰した時に何かしらの成長をしている。プレーできない期間に、外から野球を見たほうがいい」
 落ち込んでいる暇はない。「自分のことを知る時間、賢くなれるチャンス」だと、前向きにとらえるようになった。試合中は、スタンドから動画撮影を担当。アナライザーの手伝いをすることで、チームメイトの変化にも気づけるようになっていった。
「それまでは、あまり他人に興味がなかったんですけど(笑)、知ることも勉強になる。普段の練習から試合までずっと見ていると、『調子がいい時はこうだったけど、今はこういう動きをしていますよ』と伝えられるようになりました」
 その一方で、「考える時間があり過ぎたせいか」今年の春先には、自分の打撃を見失ってしまった。長打を求めるあまりに打撃フォームが崩れ、いい時の感覚を取り戻せない。そこで、好調時の映像をヒントに、テイクバックの際の肩の入り方を見直した。すると、静岡大会では.231だった打率が、長野県知事旗大会では.467へと大幅にアップした。意識するのは常に単打。5月7日に開幕した九州大会でも、JR西日本とのリーグ戦第1戦の1打席目に鮮やかなセンター前ヒットを放つ。

大ケガも成長の糧にして打線を牽引する

「身体に力もつきましたし、長打を期待されるのもわかってはいますが、もともとホームランバッターではないので欲を出してはダメ。常にセンター前を狙って、結果的に長打になればいいと考えています。若獅子賞を獲った2年前と比べると、スイングの力は増している。145キロ以上の速球も苦にせず対応できているし、コンタクト率が上がってきた。粘れるようになって四球が増えたのも実感しています」
 JR西日本との対戦では、1安打に加えて2つの四球を選んで2得点。「出塁率アップ」をテーマに掲げる今季のチームで、重要な役割を果たしている。「しばらく実戦形式から離れていたので、復帰した当初は感覚のズレがあったのだと思います。ケガしている間も、できる範囲でトレーニングはしていたし、力はついたはず。それが心の成長と上手く融合すれば、もっと伸びるでしょうね」と、冨川コーチは期待を寄せる。
「感触は悪くないですが、絶好調と言うにはまだまだ。ケガから復帰したシーズンが重要です。今年は勝負の一年」と、福本は意気込む。
 さて、2025年シーズンは開幕から2か月が経過したが、今年も東海勢は好調だ。静岡大会でJR東海、岡山大会ではトヨタ自動車、そして、ベーブルース杯ではHonda鈴鹿が優勝し、日本選手権の出場権を得ている。
「全国に出場するようになったと言っても、ここ最近の話です。今年の都市対抗は、トヨタ自動車も東海二次予選から出てくる。2年連続出場したからと言って、そんな簡単に3年目も出られるわけではありません」と、冨川コーチは表情を引き締める。九州大会で成果を上げ、6月5日から始まる都市対抗東海二次予選へ弾みをつけたい。
【取材・文=古江美奈子】

【写真名鑑のカラー掲載は52チームです】

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著者プロフィール

1949年に設立した社会人野球を統轄する(公財)日本野球連盟の公式アカウントです。全国の企業、クラブチームが所属し、中学硬式や女子野球の団体も加盟しています。1993年から刊行している社会人野球オフィシャル・ガイド『グランドスラム』の編集部と連携し、都市対抗野球大会をはじめ、社会人野球の魅力や様々な情報を、毎週金曜日に更新する『週刊グランドスラム』などでお届けします。

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